表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

4話 食事の席でのお話

 夕食の時間になり、私は食堂へと足を運ぶことにした。

 このまま一人で部屋に籠もっていても、ただ思考が堂々巡りをするだけだと思ったからだ。


 案内された食堂は圧倒されるほど広く、長い木製テーブルにサイラスが一人で座っていた。

 私が部屋に入ると、彼は無言でこちらを見ると、自身の真向かいにある席へと視線を落とした。

 「そこに座れ」ということなのだろう。


「し、失礼します……」


 食事が始まっても、会話らしい会話は一切なかった。

 静まり返った室内に、カトラリーが皿に当たる硬質な音だけが規則正しく響く。

 その空気に息が詰まりそうになりながらも、私は必死にタイミングを計っていた。


(今しかない……。二人きりの今だからこそ、聞かなきゃ)


 メインの皿が下げられ、デザートが運ばれてきたところで、私は意を決して口を開いた。


「……あの、サイラス様」


「なんだ」


 サイラスは視線を上げず、短く応じた。


「どうして……私のような者に、求婚してくださったのですか?」


 一瞬、彼の手がぴたりと止まった。


「身分が釣り合わないことは、重々承知しております。それに、私の顔はこの通りですから……今までの縁談も、すべて破談になってしまいました。アシュフォード伯爵家にとって、私と婚約することのメリットなど、何一つないはずです。それなのに、なぜ……」


「君は」


 サイラスが、低く静かな声で私の言葉を遮った。

 彼はゆっくりとナイフを置き、まっすぐに私を見つめてきた。

 その凍てつくような青い瞳の奥に、ひどく複雑で切ない色が揺れるのを私は見逃さなかった。


「……そうか。君は、知らないのだな」


「え……?」


 問い返そうとした私を置いて、サイラスは音もなく席を立ってしまった。


「ま、待ってください! 私、何か大切なことを忘れているのですか!? いったい何のことだか……!」


 思わず立ち上がり、彼の背中に向かって声を張り上げる。

 けれど、サイラスは振り返ることなく、ドアへと歩みを進めた。


「今日はもう、ゆっくり休め」


「サイラス様……!」


「……いつか、話す」


 それだけを言い残し、彼は食堂を去っていった。

 パタンと閉まった扉を見つめながら、私は呆然と立ち尽くす。


(何なの……? 私は、彼の何を知らないというの……!?)


 サイラスの後ろ姿が脳裏に焼き付いて離れない。

 解けることのない新たな疑問に、私の頭はさらに激しくぐるぐると掻き乱されるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ