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1534年10月4週目。帳面合わせ。利益1400万文に周囲は驚くも八郎は焼き芋屋をやることの方が興味あるwww話会も調整

十月四週目。

本拠の広間では、いつもの帳面合わせが開かれていた。

八郎、父、母、帳面役、商家衆。

そして佐土原から戻ってきた三郎、四郎、五郎、六郎、七郎も並んでいる。

四郎の横には、少し離れて綾姫が座っていた。

三郎がそれを見てにやにやする。

「もう堂々と横におるな」

四郎は咳払いをした。

「帳面合わせです」

「今はその話ではありません」

八郎は帳面を開いた。

「細かい数字は、後で見ます」

「まず大枠だけお願いします」

帳面役が頷き、声を張った。

「十月四週目」

「飯屋、市、湯浴み、高級湯浴み、寺社市、仕入れ差益、日向立ち上げ分の初動」

「諸々足し合わせまして」

「今週の利益、一千四百二十八万文の黒でございます」

広間が少し静かになった。

父が額を押さえる。

「また、どえらい数字やな」

母も呆れた顔をした。

「こないだ戦費で六千八百万文言うてたのに、もう一週でそんな戻るんか」

八郎は頷いた。

「とりあえず、それは置いておきましょう」

三郎がすぐに突っ込む。

「置く数字ちゃうやろ」

五郎も苦笑する。

「一千四百万文を、横に置くな」

八郎は構わず続けた。

「焼き芋屋を始めたいと思っています」

母がすぐに反応した。

「芋か」

三郎も身を乗り出す。

「焼き芋はええな」

「焼くだけやし、匂いで人が来る」

八郎は頷いた。

「今週から試します」

「味は、焼くだけなので、大きく手は入れません」

「去年の芋の甘さを考えると、今年も十分いけると思います」

「まずは一日利益二百文くらい」

「利益が出ればよいです」

三郎は腕を組んだ。

「甘けりゃ勝ちや」

「食うたら分かる」

母も頷く。

「焼き芋は、難しい理屈いらん」

「甘い、温かい、腹にたまる」

「それだけで人は来る」

父が言った。

「ただ、売りすぎるなよ」

「冬は長い」

「次に芋が取れるのは一年後や」

八郎は頷いた。

「はい」

「販売制限は必要です」

「利益二百文より上を無理に取りに行く必要はありません」

「保存を効かせながら、順繰り売ります」

「来年は、日向と大隅にも作付けを増やしたいです」

「ある程度は食用」

「ある程度は芋焼酎」

「さらに余れば芋団子、芋粥、芋餅」

三郎が笑った。

「もう料理名が出てきてるやん」

「新しい料理は考えています」

八郎は真面目に言う。

「ただ、それは順繰りです」

「まず焼き芋です」

五郎が帳面を見ながら言った。

「焼き芋は寺社市にも置けるな」

「湯浴み帰りにも売れる」

「話会の客にも売れる」

八郎は、その言葉に頷いた。

「話会も、順繰りです」

「一回やってみました」

「まあまあ面白かったです」

六郎が笑った。

「あの琉球帰りの船乗りの話は、受けてましたね」

七郎も頷く。

「大隅の山で化け物を見た話は、結局大きい猪でしたけど」

母が笑う。

「それはそれで面白いな」

八郎は帳面に目を落とした。

「ただ、改善の余地があります」

「人の整理」

「一日何回やるか」

「話し手の順番」

「飛び入りをどこまで許すか」

「竹串の売り方」

「話が長すぎる者の止め方」

「この辺はまだ詰めます」

父が言った。

「赤は出たんか」

帳面役が答える。

「赤は出ておりません」

「大きな黒でもありませんが、場所代、灯り、人足、呼び込み代は賄えました」

「喋り手にも銭が渡っております」

八郎は頷いた。

「それで十分です」

「赤が出ずに回れば、娯楽になります」

「喋る人に銭が入ります」

「客は笑います」

「市に人が残ります」

「飯が売れます」

「湯浴みにも流れます」

三郎が感心したように言った。

「大きい催し物やと、銭が垂れ流しになるからな」

「芸人呼んで、舞台作って、酒出して、警備して」

「一回は盛り上がるけど、続かん」

五郎も続けた。

「小さい笑いを、いろんな市に散らす方がええかもしれんな」

「毎日ちょっと楽しい」

「湯浴み帰りにちょっと聞く」

「飯食いながら笑う」

「そっちの方が満足度は高いかもしれん」

八郎は嬉しそうに頷いた。

「はい」

「大きな祭りも必要ですが、毎日の小さい娯楽の方が強いです」

「寺社市でもできるようにします」

「ただし、値段は変えます」

父が興味深そうに聞く。

「どう変える」

「大きな市では二十五文」

「話し手も選びます」

「本当に笑いが取れる者」

「旅の珍しい話ができる者」

「商人として説明がうまい者」

「そういう者を出します」

「寺社市では、もう少し安くします」

「十文か十五文」

「腕に自信がない者、練習したい者、村の失敗話をしたい者は、そちらで始めればよいです」

三郎が笑った。

「言い方悪いけど、腕がないやつは寺社市からやな」

五郎も頷く。

「そこで鍛えて、大きい市に上がる」

「話し手の出世道みたいになるな」

四郎が静かに言った。

「寺社市で話せるようになると、村の者も言葉が強くなります」

「借金の説明、米払いの説明、商いの説明」

「全部に効きますね」

綾姫が微笑んだ。

「市で働く者が、話すのを怖がらなくなるのは大きいです」

「民が自分の言葉で話せるようになる」

「それも、豊かになることの一つかもしれません」

八郎は満足そうに頷いた。

「そうです」

「飯を食べる」

「湯に入る」

「借金を減らす」

「布団で寝る」

「酒を飲む」

「笑う」

「話す」

「順番です」

母が呆れながらも笑った。

「ほんま、よう考える子やな」

三郎が焼き芋の試し焼きを手に取った。

割ると、中から湯気が立った。

甘い匂いが広間に広がる。

三郎は一口食べて、目を細めた。

「これは売れる」

母も一口食べて頷いた。

「売れるわ」

五郎がすぐに帳面へ書き込む。

「焼き芋、一日利益二百文制限」

「話会、寺社市版を試験」

「大市は選抜制」

八郎は満足そうに芋をかじった。

「では、順繰り始めましょう」

父が笑った。

「また市が賑やかになるな」

八郎は頷く。

「はい」

「冬は、温かい芋と笑いで人を集めます」

広間には、焼き芋の甘い匂いと、皆の笑い声が残った。

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