05 はじめまして? 神様
日曜日の朝、私がホットケーキを焼いていると、麻美さんが起きてきた。
乱れた髪、アニメキャラクター柄のステテコ、タンクトップ。
それでも彼女は美人だった。ずるい人種もいるものだ。
彼女は顔も歯も洗わないまま椅子に座る。
焼きたてのホットケーキと紅茶をテーブルに運んだ。麻美さんはメープルシロップをたっぷりかけ、さらにハチミツもかけ食べた。紅茶を一気に飲み干すと、例の紙をポッケから取り出しテーブルに置いた。
「優子、手をかざして」
私はホットケーキを飲み込むと、言われた通りに手を紙に伸ばした。
***
『ーーードーーーン!!!』
太鼓の音が大きく鳴り響いた。どこかの広い畳の部屋にいた。
「優子殿のおなーりーーー」
目の前の膳の上には自分が焼いたホットケーキが置かれている。
周りにはたくさんの人がいた。ドレスを着た人、仮面をかぶった人、ふわりと浮いている人?
コスプレ大会?と私は思った。
全員、同じようにホットケーキの膳を前にして畳に座っている。
そして、私の正面には、七人の『ガチコスプレイヤー』がいた。
「さて優子や。はじめましてだな」
衣をふわりと宙に舞い上がらせながら雅な女性が私を見た。
「皆のもの、言いたいことはあろうが、まずは食せよ。この供え。冷ましてはならぬ」
「いただきます!!!」
一同が一斉に食べ始めた。
私も場につられて食べる。
「これはホット」
「素朴の極み」
そのようなささやきと笑い声が、どこからともなく聞こえた。
「我らは万物の創世者。神とも呼ばれていた存在」
紅茶のカップのふちを眺め、オートで揺れる純白のドレスを着たガチコスプレイヤーの一人が言った。
「はじめまして……神様? 優子です」
「まあ、楽にするとよい。 そちら一族は我らを留め、備えさす者。その末端がお主、優子となる」
末端という言葉が頭に響く。
「ごちそうさま!!!」
一同が一斉に手を合わせた。
長い布をまとったキラッとした男が私に近づいてきた。何か話しかけられたが、歯が眩しい。
私は部屋の隅に積み上がっている膳を眺め続けていた。何百人分あるのだろうか。誰が洗うんだろう。やっぱり私か?
***
「優子! 大丈夫?」
麻美さんの声で、私は我に返った。
「神に手をかざしたら、いきなり食べ始めて、私のことガン無視してたよ!」
麻美さんは少し笑いながら、紅茶を一口飲んだ。
「で、どんな感じ?」
私は皿を洗わなかったことを思い出しながら答えた。
「......たくさんの人がいた。リアルなコスプレ会場みたい。一緒にホットケーキを食べた」
一族に伝わる話を麻美は思い出した。
自分たちの『初代』は見ず知らずの子どもたちに料理を作り食べさせたという。
それがすべての始まりだった。
「……まさかね」
麻美はそうつぶやくと優子の顔を見つめた。
優子は空になったホットケーキの皿をじっと見つめていた。




