第14話:座ったまま、世界を揺るがす
「消去」
執行神ゼロスが、帝都ごと全てを消滅させるほどの『神聖滅尽光』を右手に集め、僕たちに向けて放とうとした。
エレノア様たちが覚悟を決めて目を瞑る。
(チッ……! スキルが使えないなら、これしかないか。みんな、熱いところ申し訳ないけど、僕が『動けない』ままで終わらせてもらうよ!)
僕はベッドの上に寝そべったまま、右腕の筋肉だけに全意識を集中させた。
ステータスカンストの筋力。
立ち上がる必要はない。ただ――ベッドの上から、目の前の空気を全力で「デコピン」した。
ピシィィィィンッ!!!!
ただのデコピン。しかし、それは大気を音速の何百倍もの速度で圧縮し、目に見えない「高密度空気弾(物理)」と化して放たれた。
――ドッゴォォォォォォォンッ!!!!!
「なっ――がはっ!?!?!?」
ゼロスが放とうとした神聖魔力ごと、彼の黄金の甲冑が、僕の放った「デコピンの風圧」だけで粉々に砕け散った。
執行神の身体は、まるで隕石に衝突されたかのように、帝宮の壁を突き破り、そのまま遥か成層圏の彼方へと消し飛んでいった。
【第15話】デコピンの言い訳(※難易度SSS)
帝宮の壁に空いた、天まで続く巨大な直線状の穴。
静まり返る室内。
「……え?」
エレノア様が、呆然と空いた穴を見つめる。
「今、の……は……?」
神界の最強の執行神が、一瞬で消え去った。
しかも、ルカはベッドの上から1ミリも動いていない。
(やべぇ、どう言い訳するこれ!? スキル使えないから完全に物理現象になっちゃったよ!)
僕は、慌ててベッドの上で激しくガタガタと震えだし、右のナックル(指先)から血を(魔力着色液で)ダラリと流した。
「あ、あうぅぅ……! こ、怖かったですぅぅ……! 神様の攻撃の風圧で、僕のデコピン(※痙攣したフリ)が、たまたま空気の歪みを引き起こして……反動で、神様が勝手に自爆していかれましたぁぁ……!!」
「ル、ルカ様……!?」
エレノア様が僕に駆け寄る。
「……そうです、間違ありません! ルカ様は動けない身体でありながら、迫り来る神の攻撃に対し、ご自身の右指の骨を粉砕させる覚悟で(※ピンピンしてます)極限のカウンターを放ったのです! なんという神速の反応……!」
セリアが涙を流して深く納得した。
(よし、チョロい!! 脳内補完の天才かよ聖騎士団長!)
こうして、僕の「デコピン自爆説」は見事に採用された。




