【 外伝 】第13話 盗賊団の迷軍師の憂鬱
ギャンリック死後数刻のサロス東方の盗賊の仮アジト。
「 いけません!ゾックさん! 」
「 オデは、行くどぉォォー!バシンッッ!ズッゴーーン! 」
おそらく、部下が壁にめり込み失神し、またかと側近たちが抑えに入っているはず......
( アジトが壊れる!しかも救護係が忙しくて可哀想w )
「 ゾック様、またですかい?おい!抑えて鎮めるぞ! 」
これは、いつもの彼らのパターン。
何人もの立派な体躯の男たちが巨人の親分を抑えつけ落ち着くのを待つのだ。
「 オデは、オデは、リックの兄貴の所に戻るどおぉォォー!放せえェェー!
オデは良い弟なんだあァァー! 」
( あんな伝令、通さなければ。。。 )
今日はもう三回目。本城への緊急召集の伝令が血まみれで来てからだ。
大盗賊ギャンリック様は、気まぐれで無駄な指令をすぐに下し、部隊を混乱させる天才と言われているwww
女盗賊【 ジール 】は、涙を流し深いため息を吐く。
私は孤児で、幼い頃ギャンリックに拾われてから、身の回りのお世話をする事で自分を守ってきた。
彼らは、根っからの悪党では無い。
いつも優しく、私を気遣い育ててくれ、妹だと言ってくれた。
華奢で鶏ガラみたいだと、言われ続けた点以外は許せる www
オスマトル兵役から帰って来てから、彼らは変わってしまった......
自分たちだけの国を作るといい、悪事に手を染めていく事になる。
元々が、おバカで気の優しい彼らに何があったのかは、聞いても答えてくれない。
諌めても「 妹は兄ちゃんたちに付いてくりゃいいんだぜーwww 」と言うだけの日々。
あれやこれやで、地頭の良い私はギャンリック盗賊団の軍師に抜擢され、
今は、1番おバカなゾック兄さんの専属軍師になっている。
( さてと...... これで誤魔化して、我々の安全を確保しなきゃね )
私は両目から溢れる涙を拭い、新たな決意を胸に立ち上がる!
早く行かないと、ゾック組の巨漢の猛者たちが、一様に深いため息を吐いて嘆いている頃合いだ。
( 私の言う事なんて聞かない奴ばかりのくせに www )
女盗賊は、華奢な腕で口元を覆うと聞こえ無いように「 クスクス 」と笑う。
私も信用できる友達がもっとほしい。
男は諦めている。みんな兄さんたちのマネをして【 鶏ガラ軍師 】と言ってきやがるからだwww
女と言っても、あの【 ジュマリナー 】と言う女盗賊は全然、信用できない。
私や兄さんたちを見る目がそう言っている。
私を見る度にズケズケと物を言い放ち、そしてイジメられていた......
人を上か下でしか見れない人なんだろう。
嫌味や陰口ばかりでつまらない、愛情や友情とは無縁の人間だと思っている。
そもそも、この盗賊界でそんなの夢だと諦めていた時期もあった。
しかし、リック兄さんが常々言っていた【 愛戦士ナナス 】がアハルにいると情報をキャッチした私の心は跳ね上がる。
愛のために生き、恋に破れ、失意のドン底にいる『 愛の戦乙女 』だとリック兄さんは言っていた。
アハルで流行りになっている『 女子トーク 』に憧れている。
「 成せば成る、成さねば成らぬ、何事も!www 」
これはアハルに偵察に行った時、おバカそうな赤髪の幼い女の子が、
これを言いながら、友達たちにバカにされていた言葉だ。
絶対にナナスさんを見つけてみせる。
そう決意していたけど、すぐに諦めたwww
私は恐ろしいぐらい体力が無い自分を恨む。
それにしても、変な娘だった。
鼻下や、おでこに海藻を付けて美容だと言っていて笑える w
しかも、その娘に話し掛けるとこんな事も言い放つ。
「 ちみちみ、そこのお姉さん。物事を具現化するには、イメージが大切ですぞよwww 」と。。。
そんなの無理だと返すも、確率を上げるためには、前向きな思考が大切だと小難しい事を言っていた。
( この娘は信用できる! )
私はこの娘を信じて友達になる。
約束もした。大きくなったら『 恋バナトーク 』をしようと♡
それから私は信じている。ナナスさんとも友達になることを♡
話を戻すと、みんなピエー騎馬隊の執拗な攻撃に疲弊している上に、
ゾック兄さんはリック兄たちの事になると言う事を聞かなくなる。
明らかにピエー騎馬隊は、我らの分断を図っていたが、快進撃に気分を高揚させた幹部たちを説得出来なかった。
( 私のせいだ。。。私にもっと力があれば。。。と言うか、おバカさんな幹部たちが悪いwww )
華奢なジールは、厳しい面持ちで、一枚の羊皮紙を丸め持つと、
ゾックのいる大部屋に入っていく。
ようやく来たかと、巨漢の幹部たちは一様に安堵の顔を見せる。
( もう!こんな時だけ。はじめから私の言うことを、ちょっとは聞いてよね! )
「 ゾック兄さん、リック兄さんより【 タルビア 】で落ち合う旨の書簡が届きました! 」
巨躯の男たちに抑えつけられている、巨人は私を見て顔を綻ばせる。
もちろん、彼に文字が理解できる訳がない。
我々の物見役の目撃でギャンリック様の秘密兵器が天に上がったと、ピエー騎馬隊の猛追を振り切り、伝えてくれた。
( それは騎馬隊の動きを見ていれば理解できる。嘘では無いだろう。。。)
天に打ち上げる時。。。それは本城陥落の合図で、大盗賊リック兄さんの死を意味する。
次の標的はザック兄さんと、ゾック兄さんになるのは明白だった。
( 一刻も早く、ピエー騎馬隊の忌々しい包囲網を突破して、オスマトルの勢力圏から離脱させなければ...... )
幹部たちが抑えるのを ( やれやれ )といった面持ちで解くと巨人は満面の笑みを浮かべ立ち上がる。
「 リックの兄貴が?オデ、タルビアに行く!お前の言うこと聞けって兄貴に言われてる!言う事聞く。オデ良い弟。 」
( さてと...... 500名の部下たちを何人逃がせられるか。。。その前にひ弱な私が逃げられるか?www )―――
―――私たちは、初動が早くオスマトル軍が我々盗賊団の殲滅作戦を組む前にタルビアに逃げ込む。
入国税で、貯めていた資金が大分減ってしまった。
私はタルビアで荷運び組合に加盟して商会を立ち上げる。
今、思えばリック兄さんは「 お前にサロスで商会をやらせてやる。 」と言ってくれていた。
私は、ジュマリナーが絶対にイジめてくるから、嫌だといつも断わっていたのを思いだし、ジワりと涙が溢れ出す。
しかし、あの女は商会を手放し何処かに潜伏中との事。
私の枷は無くなった。今は、おバカで大食漢の猛者たちが悪さをしでかす前に先手を打つ。
おそらく収穫祭の日にアハルの砦で盛大に勝利宣言と共に、お祝いされる事になるだろう。
それはどうでも良い。我々は負けたのだから。いや負けてくれて良かったと思う。
その日までに、手を尽くして4000人まで膨れ上がっていた盗賊団の逃げる手引きをしていたが、結局、目標2000人到達は無理だった。
それどころか、ザック兄さんたち元剣戟部隊の冷酷なイジワルチームは、
普通の仕事なんて無理だと、
フリージアの帆船を奪い取り、海賊になってしまう。
それを皮切りに次々と帆船を奪って海に出る、元配下の有名な盗賊団の親方連中の面々。
本当に迷惑な連中だ!
そして、積み上げてきた私の商会の名声は地まで落ちる事になるwww
しかし、ゾック兄さんと元からの500名のおバカで気の良い巨漢の男たちは、違う。
今日もリック兄さんを、まだかと待ちながら一生懸命に汗を流して元気に荷運びをしてくれている。
私の守るべき、大切な家族だ!
500名の力自慢の荷運びたちを、タルビアで有名にしてみせる!
そんな私の事を『 鶏ガラ商会長 』と言いやがる点だけは許せないが...... www
私も年頃の娘だ!赤髪の少女が大きくなり、ナナスさんと友達になったら、
恋バナなんかもしてみたい。
と、今日も膨大な伝票に囲まれて妄想に浸る、華奢で利発だけど、根暗なジール商会長が帳簿をつけていましたとさ。




