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2-17 決戦③

 期待を向けられたセツトは、それどころではなかった。


 ロケットブースターによる加速を行うロクシアスは速い。遠距離攻撃の武装こそ持たないものの、その速度とレガリア特有の慣性制御による急転回は、シンプルなランスチャージをきわめて厄介な攻撃手段と変えていた。

 ランスチャージで通り過ぎた次の瞬間に折り返してもう一度チャージをかけられるのである。反則だと叫びたくなるような攻撃であった。


 そのため、セツトは常に複数の剣を手近な場所に置いておき、1本で突撃槍の穂先を逸らし、2本目で折り返しチャージを防ぐために牽制の攻撃を加え、場合によっては3本4本と牽制を続けねばならない有様であった。


 そんな時に、シェリーは隙が欲しいと言うのである。


(……シールドを使えば)


 隙を作ることは可能だろう。だがそれで仕留めきるには、そこまでの組み立てがいるだろう。

 セツトは頭の中で作戦を組み立て、それをシェリーに伝えた。返事はOKだ。

 それを聞いてセツトはエリュテリオスを全力で加速させた。大きく弧を描きながら速度を上げていき、手にした剣を刺突のために構えた。


 残り3本の剣が集い、4本の剣の切っ先がそろう。剣のエネルギーが集中し、切っ先が輝きを放ち始めた。


『む?』


 大侯爵がその様子に警戒を示した。


「我が必殺剣、受けてみよ!」


 セツトは叫んだ。こう言えば大侯爵は勝負を受けると思った。何しろ彼は正々堂々たる帝国貴族だ。


『よかろうっ!』


 大侯爵が応じ、ロクシアスが大きく距離を取りながら加速した。


「5」『4』


 セツトが適当に始めたカウントダウンに、大侯爵が合わせた。


「3」『2』「1」


 ゼロのタイミングで、両者は相手に向けて一直線の軌道を取った。


(流星螺旋剣!!)


 海賊たちなら叫ぶところだが、セツトにはできそうにない。せめて、と心の中で叫んだ。


 槍と剣が激突した。

 剣の切っ先を槍に合わせ、穂先を逸らしながら手首を返して剣を突撃槍の下に潜り込ませた。そのまま突撃槍の表面を滑らせながらロクシアスの本体腰部を狙った。


 ロクシアスはその刃をかわそうと突撃槍を軸にして機体を回転させた。

 剣が空を切る。


『まだぁ!』


 ロクシアスがいち早く機体の向きを逆転させた。それと同時にロクシアスの移動方向(ベクトル)が逆転し折り返した。再突撃(チャージ)だ。


 エリュテリオスは剣を振りぬいた分、方向転換が遅れている。

 大侯爵は勝利を確信しただろう。


「エルザ!」


 その瞬間、セツトは、遠く<黒銀の栄光>艦内でパルテノスに乗るエルザに合図をした。

 エリュテリオスの背につけられた円盤(シールド)ユニットが力を発揮し、その盾がロクシアスの槍を真正面から受け止めた。


 盾に槍を止められ、ロクシアスの動きが止まる。

 その瞬間を待っていたシェリーたちが引き金を引いた。


 5つの超長距離狙撃がロクシアスを襲った。

 そのうち3本のビームがロクシアスの盾を貫き、ロケットブースターを貫き、右肩を貫いた。残りの2本はロクシアスに当たらなかったが、その背後に配置されたエリュテリオスの刀身に当たった。


 特別にエネルギー量を調整された刀身がビームを弾き、跳ね返ったビームがロクシアスの足とロケット

ブースターを貫いた。

 2発のビームを受けたロケットブースターが爆発した。膨れ上がる火球がロクシアスを包み込んだ。

 エリュテリオスはロクシアスから距離を取り、その火球の中に何度かビームを打ち込んだ。

 ほどなく火球が消える。

 ロクシアスは右足と左腕を失っていたものの、重要部分はその装甲に守られたようだった。右手には突撃槍も保持している。


『見事だな、セツトとやら』


 ロクシアスは動くそぶりを見せない。

 騎士鎧や量産機兵であれば致命的な損傷である。だがレガリアにとってはどうだろうか。


『私の負けだ。見事な連携であった』


 大侯爵が負けを認めた。


『父上――――!!!』


 そこに、ディートリヒの声がした。

 ディートリヒの騎士鎧はエリュテリオスめがけて一直線に突っ込んでいく。


 セツトはそれを迎え撃つべく、エリュテリオスの剣をディートリヒ機に向けた。

 だが。

 その間に、ロクシアスが身を挺して割り込んだ。

 ディートリヒ機の槍がロクシアスの胸部を貫いた。


『バカ者が、私が敗れれば反乱の罪は問わぬと約束したのを忘れたか!』


 大侯爵がディートリヒを一喝した。


『帝国貴族が約束を違えることなどあってはならぬ。全軍戦闘中止! わが軍は直ちに攻撃を中止し撤退せよ!』


 大侯爵の命令が戦場に流れた。

 ロクシアスがディートリヒ機を押しやった。その胴には槍が刺さったままだ。それは、騎士鎧であれば動力炉があるはずの場所を貫いている。


『カーマイン伯爵、この後のことは卿と我が子ディートリヒで取り決めていただきたい』

『承った』


 カーマイン伯爵は短く応じた。彼はなぜ大侯爵自身ではないのかなどと言う愚問を挟まなかった。


『ディートリヒ。貴族の誇りを忘れるな』


 ロクシアスが爆発した。


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― 新着の感想 ―
?なんで立派な騎士風なん?部下が不正して気づいてなかったとか、戦士としての誇りがあっても為政者としてくっそ無能だったとか?平民?虫と同じやろ?
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