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2-15 決戦①

 帝国軍本隊が到着した。


 これで帝国軍の総数は先遣隊と併せてフリゲート艦19隻もの数が揃ったことになる。

 帝国軍は、超空間において包囲を継続し反乱軍を逃がさないための抑えとして6隻を残し、13隻が通常空間へと飛び込んでいった。




 通常空間へと突入した13隻は、ただちに解放戦線の探知網に感知された。


「帝国軍、通常空間に突入してきました。数は……12、いえ13隻です」


 採掘基地内に設けられた指揮所で、カーマイン伯爵はその知らせを聞き、笑った。


「つまり機兵250機か。はは、我らの4倍だな。位置は?」


 モニターに表示された周辺の状況図に帝国軍が表示された。

 いま彼らがいる採掘基地は、岩石惑星のL4領域に固定された小惑星にある。そこから離れた宇宙空間に、帝国軍を示すシンボルが3つ並んで表示された。


 最も船が多いのが中央、フリゲート艦5隻からなる部隊だ。数的に主力だろうと思われた。

 その両翼にかなり離れて4隻ずつの2部隊がある。両翼の部隊が離れているのは、解放戦線が逃走を図ったときに捕捉しようというためだろう。


 解放戦線の機兵で現在戦える物は、キティ達も数に入れて約60機。帝国軍のどの部隊もこれよりも多いという陣容である。


「わかりやすくて良いな。大侯爵は中央部隊にいるだろう」


 誰にも異論はありそうになかった。


「よろしい。全軍、帝国軍中央部隊に向けて進撃する」


 大侯爵を討つ。

 それにはその選択肢しかなかった。それは当然、両翼の部隊が集まってきて包囲されることにつながる死地であった。




 反乱軍が進撃した。

 ディートリヒは、帝国軍中央部隊の旗艦<ドラクマ>の艦橋でその状況を見た。


「父上、進撃してきましたね」


 大侯爵は重々しく頷いた。


「そうだな。どうやら決戦を挑んでくるつもりのようだ」

「無謀でしょう」


 戦力差は明らかだ。


「だからといって、常に逃げることが出来るとは限らないものだ。無謀は承知の上だろうさ、こういう敵は死を覚悟している。油断すると痛い目に遭うぞ」

「はい、父上」


 ディートリヒは素直に頷いた。


「ディート、お前ならどうする?」

「はい。本隊は速度を落として反乱軍を待ち構え、両翼からの包囲を完成させるべきではないかと思います」

「安全に勝ちたいか」


 大侯爵はディートリヒの回答に不満があるようであった。


「はい。相手が死に物狂いだからこそしっかりと構えるべきではないかと」

「考え方としては悪くはないが、死に物狂いの相手に受け身の戦いは危険すぎるな。

 私ならこうする。中央、両翼ともに前進を維持する。

 そのうえで私がここにいることを知らせ、反乱軍の目を私に引きつけさせる。あとは包囲を完成させてすりつぶせば良い。

 あるいは、数に劣る反乱軍は我が中央部隊を中央突破し背後に控える艦船を沈めようとするかもしれん。その場合には突破を終えたところを両翼の部隊で橫撃する」


「わざわざ父上がいることを知らせるのですか」

「そうだ。何も恐れることはない。私を狙う者は我が槍の鋭さを思い知ることだろう。それが大侯爵たる者の戦い方だ」


 大侯爵の言葉には、自身のレガリアへの絶対的な自信がみなぎっていた。


「敵にもレガリアがいるようですが」

「あぁ、見た。私の知らないレガリアだが、私が勝つ」


 ディートリヒはそう断言する大侯爵の姿に身震いを覚えた。


「中央部隊に通達、全機発進せよ! 私はロクシアスで出撃()るぞ」


 大侯爵が艦橋の全員に伝わるよう声を張り上げた。

 その大侯爵の背後に控えていた赤毛の青年が無表情のまま恭しく頭を下げた。


「イエス、マイマスター。予言者(ロクシアス)、起動手順(シークエンス)を開始致します」




 帝国軍中央部隊が機兵の準備を始めたころ、<黒銀の栄光>でも機兵の発進準備が進められていた。


「動力炉まわせー!」


 海賊達が機兵のアタッチメントや装備を整え、起動していく。


 その中でセツトのエリュテリオスも準備を進めていた。

 機体の各部にこれまで着けられていなかったアタッチメントが追加されている。手にはビームライフルまで持っていた。


「くやしいのうくやしいのう」


 コックピットのミツキがブツブツと文句を言っている。


「装備を追加することはミツキも納得したでしょう」

「理論上は納得しましたが、悔しい気持ちが無くなるわけではないのです」

「君感情あったっけ?」

「もちろんありません」

「はいはい」


 セツトは適当にあしらうことにした。ミツキはエリュテリオスに装備を追加することに抵抗をしていたのだ。本機は装備など追加せずとも既に完全です、と。

 だが攻撃方法や攪乱方法など、様々な手段を持っていれば確実に戦い方の幅が広がる。セツトはそう語って説得し、最後にはマスター権限までちらつかせて折れさせたのである。


 装備しているのは、海賊達が装備していた閃光弾やビームライフル、ビームカトラスなどである。

 そうした物の中に一つだけ異質なものがあった。

 背中にくくりつけられた円盤形のユニット、パルテノスの(シールド)ユニットである。

 取り付けたところでエリュテリオス、セツトに操作できるものではない。だが今回パルテノスは出撃することができないが、遠隔で盾を発生させることはできる。

 そこで大侯爵のレガリアと戦うにあたっての切り札の一つとして据え付けることにしたのである。


 この戦いでのセツトのやるべきことはただ一つ、大侯爵のレガリアの撃破であった。


『準備できた奴から外に出な!』


 キティの声が通信で響いた。


「セツト、エリュテリオス行きます!」


 セツトは出撃を宣言した。


『おー、がんばれよ!』

『セツト君、大侯爵(えらいやつ)落としたら今度こそご褒美ねぇー』

『後ろから撃つから気をつけろよー!』


 海賊達がいつも通りの軽いノリでセツトを送り出した。

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