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第4話 境界のふたりの小さなお泊まり会

ヴェイルが去り、

部屋に静寂が戻ったあと。


しきはベッドに腰を下ろし、

深く息を吐いた。


「……なんか、今日は疲れた」


アーシャはしきの隣に立ち、

心配そうに覗き込む。


「しき、大丈夫?」


「うん……ちょっと、頭が追いついてないだけ」


アーシャはしきの手をそっと握る。

その手は冷たくも温かくもなく、

ただ“安心”の温度だった。


「今日は……わたし、帰らない」


「え?」


「しきがひとりで眠るの、怖いでしょ?」


図星だった。

しきは思わず目をそらす。


「……ちょっとだけ、ね」


アーシャは微笑む。


「じゃあ、今日は一緒に寝よ」


「えっ……い、一緒に!?」


「うん。

しきが眠るまで、そばにいる」


アーシャは当然のように言うけれど、

しきの心臓は跳ね上がった。


「そ、そばって……どこまで……?」


「ここ」


アーシャはしきの隣に腰を下ろし、

布団を軽く引っ張った。


「入っていい?」


「……うん」


しきは布団をめくり、

アーシャが隣に入ってくる。


距離が近い。

近すぎる。


アーシャの髪が肩に触れ、

しきの心臓がどくどくと鳴る。


「しき、顔赤い」


「う、うるさい……!」


アーシャはくすっと笑った。


「しきって、かわいいね」


「やめて……!」


布団の中で、

しきは顔を隠した。


アーシャはしきの頭をそっと撫でる。


「今日は、怖いこといっぱいあったから……

しきが安心できるように、そばにいる」


「……アーシャは、怖くないの?」


「怖いよ」


アーシャは少しだけ目を伏せた。


「でも……しきがいるから、大丈夫」


その言葉に、

しきの胸がじんわり温かくなる。


「……アーシャって、ほんと優しいね」


「優しくないよ。

しきが好きだから、守りたいだけ」


「す、好き……!?」


アーシャは首をかしげる。


「うん。

しきのこと、好きだよ?」


その言い方は、

恋とか友情とか、

そういう分類を超えた“純粋な好意”だった。


しきは布団の中で小さく丸くなる。


「……なんか、恥ずかしい」


「恥ずかしくないよ。

しきは、しきのままでいい」


アーシャはしきの手を握り、

そのまま目を閉じた。


「眠っていいよ。

わたしが見てるから」


しきはアーシャの肩にもたれ、

小さく呟く。


「……アーシャがそばにいると、安心する」


「よかった」


アーシャはしきの髪を撫でながら、

静かに微笑む。


「しきが眠るまで、ずっとそばにいる」


しきはその言葉に安心して、

ゆっくりと目を閉じた。


アーシャはしきの寝息が落ち着くまで、

ずっと優しく撫で続けた。


「……しき。

あなたが笑っていられますように」


その祈りは、

誰よりも深く、

誰よりも切実だった。


そしてその夜、

しきは久しぶりに——

怖い夢を見なかった。

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