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第5話 朝の光と、異世界の理

目を覚ましたとき、

しきの視界には白銀の髪があった。


アーシャが隣で眠っている。


昨夜、怖い夢を見ないようにと、

アーシャがそばにいてくれた。

その安心感がまだ胸に残っている。


しきはそっと起き上がり、

アーシャの寝顔を覗き込む。


「……寝てると、普通の女の子みたい」


アーシャは普段、

どこか人間離れした雰囲気がある。

でも今は、

しきの布団にくるまって、

小さく丸くなって眠っている。


その姿が、

なんだか可愛くて、

しきは思わず微笑んだ。


「……しき?」


アーシャが目を開ける。

琥珀色の瞳がしきを映す。


「おはよう、アーシャ」


「おはよう。

しき、よく眠れた?」


「うん。アーシャがいてくれたから」


アーシャは嬉しそうに微笑む。


「よかった」


二人は一緒に朝ごはんを作った。

といっても、

アーシャは料理ができないので、

しきが全部やった。


アーシャは横でじっと見ている。


「しき、すごい。

卵が……ちゃんと丸い」


「丸いのは普通だよ……」


「普通じゃないよ。

しきが作ると、全部かわいい」


「かわいいって……卵焼きに言う?」


アーシャは真剣に頷く。


「うん。かわいい」


しきは笑ってしまった。


朝ごはんを食べ終えると、

アーシャは急に表情を引き締めた。


「しき。

今日は……ちゃんと話したいことがある」


「……異世界のこと?」


「うん。

しきが“関わる”って決めてくれたから、

ちゃんと説明しなきゃいけない」


アーシャはしきの手を取り、

ソファに座らせた。


そして、

静かに語り始めた。


---


✦ 「向こうの世界」の仕組み


「しき。

向こうの世界は……“観測”で形を保ってる」


「観測……?」


「うん。

誰かが“こうだ”って思うことで、

世界がその形になる」


しきは首をかしげる。


「それって……どういうこと?」


アーシャは少し考えてから、

しきの手をそっと握った。


「たとえば、しきが

“空は青い”って思うとする」


「うん」


「その瞬間、向こうの世界の空は“青くなる”。

しきが“怖い”って思うと、

影が生まれる」


しきは息を呑む。


「……じゃあ、影が来たのって……」


「しきが怖かったからだよ」


アーシャは優しく言う。


「でも、それは悪いことじゃない。

しきはただ“感じた”だけ。

それだけで世界が動く……

それが“原典”なんだ」


---


魔力まりょくとは何か


アーシャは続ける。


「向こうの世界には“魔力”がある。

魔力は……感情のエネルギーみたいなもの」


「感情……?」


「うん。

喜び、悲しみ、怒り、恐怖……

全部が魔力になる」


しきは思わず胸に手を当てた。


「じゃあ……わたしの感情も?」


「しきの感情は、特別。

普通の人の何百倍も強い。

だから、世界が揺れる」


アーシャはしきの手を包み込む。


「しきが泣くと、

向こうの世界では“氷の雨”が降る」


「……氷?」


「うん。

しきの涙は、世界を凍らせる」


しきは震えた。


「そんな……わたし、そんなつもり……」


「わかってる。

だから、わたしがそばにいる」


アーシャはしきを抱き寄せる。


「しきの感情が暴走しないように、

わたしが境界で受け止める」


---


✦ 魔法とは何か


アーシャはしきの肩に手を置き、

ゆっくり説明する。


「魔法は……魔力を“形”にする技術。

向こうの世界の人たちは、

魔力を使って火を出したり、

風を操ったりできる」


「アーシャも……?」


「うん。

わたしは“境界歩き”だから、

魔力を使って世界の裂け目を閉じたり、

影を追い払ったりできる」


しきは思い出す。


「この前の影……アーシャが光で弾いたよね」


「うん。

あれは“境界の光”。

影はしきの恐怖から生まれるから、

わたしが消す」


アーシャはしきの手を握りしめる。


「しきが怖がるほど、影は強くなる。

でも……しきが笑うと、影は弱くなる」


「……わたしの感情で、そんなに変わるの?」


「うん。

しきは“原典”だから」


---


✦ そして、今起きていること


アーシャは真剣な目でしきを見つめる。


「しきが“関わる”と決めたことで、

向こうの世界が動き始めた」


「動く……?」


「うん。

王太子ヴェイルが来たのも、

宮廷魔術師シェルヴが来るのも、

全部……しきの決意に反応したから」


しきは息を呑む。


「わたしの……決意で?」


「うん。

しきが“向き合う”って決めたから、

世界がしきに近づいてきてる」


アーシャはしきの手をぎゅっと握る。


「でも、怖がらなくていい。

わたしがいるから」


しきはアーシャの瞳を見つめる。


「アーシャ……

わたし、ちゃんと知りたい。

向こうの世界のことも、

わたしのことも」


アーシャは微笑む。


「うん。

しきが知りたいなら、全部話す」


しきは深く息を吸った。


「じゃあ……教えて。

わたしは、これからどうすればいいの?」


アーシャはしきの手を包み込み、

静かに答えた。


「しきは……

“選ぶ”だけでいい」


「選ぶ……?」


「うん。

誰を信じるか。

誰と歩くか。

誰に心を預けるか」


アーシャはしきの頬に触れた。


「しきの選択が、世界を形作る」


しきはその言葉を胸に刻む。


そして、

アーシャはそっと微笑んだ。


「まずは……朝ごはんのお皿、洗お?」


「……うん」


しきは笑った。


世界の理も、魔力も、影も、

全部まだ怖い。


でも——

アーシャがそばにいるなら、

きっと大丈夫。


そう思えた。

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