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第2話 夢の中の少女

アーシャが現れるようになってから、

しきの日常は少しだけ変わった。


放課後の帰り道。

コンビニの前で、アーシャが待っている。


「しき、今日も帰るの遅かったね」


「部活の手伝いしてたから。アーシャは……いつからいたの?」


「ずっと」


「ずっと!?」


「うん。見てるだけだから、邪魔じゃないよ」


アーシャは無表情で言うけれど、

声はどこか優しい。


しきは笑ってしまう。


「アーシャって、ほんと不思議な子だよね」


「しきのほうが不思議だよ」


「え、わたし?」


「うん。見てると……安心する」


アーシャはそう言って、

ほんの少しだけ笑う。


その笑顔が、

しきは好きだった。


しかしその夜、

しきは夢を見る。


白い城。

氷のような光。

そして、玉座に座る少女。


シオナ・ネコリア・クリスタリア。


しきと同じ顔。

でも、瞳だけが違う。

深い氷のように冷たく、

どこか壊れそうに揺れている。


シオナはゆっくり立ち上がり、

しきに歩み寄る。


「……来てくれたのね。

原典しき


「わたし……来たつもりないよ。

ここ、夢……だよね?」


シオナは微笑む。

その笑顔は美しいのに、どこか悲しい。


「夢は境界。

あなたが“関わる”と決めたから……

私はあなたに触れられるようになったの」


しきは胸がざわつく。


「……わたしのせいで、何か起きてるの?」


シオナは首を振る。


「違う。

あなたは何も悪くない。

悪いのは……この世界のほう」


その言葉は、

アーシャと同じだった。


シオナはしきの頬に手を伸ばす。

触れられる直前で、

その手が震えた。


「……触れたいのに、触れられない。

あなたは“原典”。

私は“写し”。

本来、交わってはいけない存在」


しきはそっと言う。


「じゃあ……なんでわたしに話しかけるの?」


シオナの瞳が揺れる。


「助けてほしいから」


しきは息を呑む。


「……助ける?」


シオナは静かに頷く。


「あなたが揺らぐと、

私の世界は壊れる。

あなたが泣くと、

私の魔力は暴走する。

あなたが怖がると、

影が溢れ出す」


しきは震える。


「そんな……わたし、そんなつもり……」


「わかってる。

だからこそ……お願い」


シオナはしきの手を掴もうとして、

触れられずに空を掴む。


「私を……見捨てないで」


しきの胸が締めつけられる。


「見捨てないよ……

わたし、ちゃんと向き合うって決めたから」


シオナの瞳が大きく揺れた。


「……本当に?」


「うん。

怖いけど……逃げない」


シオナは、

初めて“人間らしい涙”を流した。


「ありがとう……原典。

あなたがそう言ってくれるだけで……

世界が、少しだけ静かになる」


その瞬間、

城が大きく揺れた。


シオナが振り返る。


「……来る。

あなたを探している“王”が」


しきは息を呑む。


「王……?」


シオナはしきの手を掴もうとして、

また触れられずに空を掴む。


「目を覚まして。

現実で……あなたを呼んでる」


世界が白く弾けた。

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