↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

第2話 先生の……むっつりすけべっ♡ かぷっ♡

「わぁー!! たっくさんお店があるわよ先生っ!!」


「……人間さんもいっぱい」


 ここは近所の大型ショッピングモール。

 日曜日ということもあって賑わっていた。


「二人ともっ、あんまり離れないようにねっ!」


 私の両脇から「はーい!」と元気な声。

 右手でカベラちゃんと、左手でフィランちゃんと手を繋いで、ゆっくりと歩いていた。


 二人がこの世界でお出かけしたそうにしていたから、今日は私から誘ってみたのだ。


 ずっとお留守番ばかりさせてるのも、つまらないだろうしね。


「二人は、吸血鬼の世界でもこうやってお出かけしてたの?」


「そうねっ! 色んな所に遊びに行くのは大好きよっ! ……でも」


「……お父様とお母様が、急にお外に出してくれなくなっちゃって」


 急に二人の元気が萎んだようだった。


「なにか……あったの?」


「あたしたちもわからない……でもねっ、急に『今はこの城から出てはいけない。事が静まるまでは……』なんて訳わかんないこと言っちゃってさ!」


「……だからフィランたち、お城の扉から飛び出したの……そしたらせんせいのお部屋に出たの」


「そう、だったんだね」


 すると二人は、ぎゅうっと手に力をいれる。


「もうお父様もお母様もしらないんだからっ!! あたしたちの話も聞いてくれないし!」


「……フィランもつまらないのは、いや」


 お父様とお母様、つまり王様とお妃様ってことね。


「そっかそっか……」


 私は足を止め、二人の方へ向き直った。


「どうしたのよ先生っ?」


「……? お腹すいたの?」


「あのねっ、二人はお父さんとお母さんのこと好き?」


 すると二人は顔を見合わせ、不満げながらも頷いた。


「うん、ありがとう。でもね、それはお父さんもお母さんも同じだと思うんだ」


「お父様も……」


「……お母様も?」


 二人は目を丸くする。


「なにがあったかは私にはわからないけど……二人が大切だから、理由があるんじゃないかな?」


「そう……なのかな」


「……フィランたち、いけないことしちゃった……?」


「お外に出たかったって思うことは、なんにも悪いことじゃないよ。でも、なにも言わずに家出しちゃったら、ご両親も心配してると思うの。だからね……」


 私は二人の手を優しく握り直す。


「お家に帰れたら、勝手に飛び出しちゃったことはちゃんと『ごめんなさい』しようね?」


 二人は見つめあって、大きく頷いた。


「うんっ! ちゃんと伝えるわ!」


「……ちゃんとごめんなさいって言う。お父様とお母様、大好きだから……」


「よしっ、約束ね! じゃあ今日は遊びたおすよーっ!!!」


「いえーい!!♡」 


「……いぇーい」


 また二人と手を繋いで楽しく歩き始める。

 雑貨屋やお菓子屋、ゲームセンターなど、目に入るものすべてが珍しいのか、二人の好奇心はつきなかった。


 そんな二人に引っ張られるようにあちこちを見て回っていると――


「あっ……」


「……わぁ」


 ふいに、二人がとあるお店の前で足を止めた。


「ここのモールにもあったんだ、ガールズファッション専門のお店」


 そういやテレビのCMで見たことあったなぁ。

 たくさんのジャンルのガールズファッションが集まってるお店だったっけ。


「せっ、先生!! ここ入りたいわっ!」


「……フィランもっ。わくわくっ」


 二人は目を輝かせながら私を見つめる。


「いいわよ。行きましょ!」


 そして三人でお店へ入ると、カベラちゃんたちはそれぞれお洋服を見つけに走り出した。


 それにしてもお店の中は本当にたくさんの服が揃っていて、とても迷ってしまいそうだ。


 ……まっ、アラサーの私には若すぎる服ばっかりだけどね。ははっ。


「……せんせいっ。あれ取りたいっ」


 するとフィランちゃんがやってきて、お店の高いところにあるフリフリのお洋服を指差した。


「結構高いとこにあるのね、ちょっと待ってて」


 私は、店内に置かれた踏み台を持ってきた。

 すると自分で取ると言わんばかりに、踏み台に上がる。


「……んーっ、あとちょっと……」


「フィランちゃん? 届かないなら私が取って――っ!?」


 その時、気づいてしまった。

 フィランちゃんのスカートの中が、ま、丸見えになっていることに!?


 普段着の漆黒のドレスの中は真っ赤なおパンツなのって、ち、ち、ちょっとセクシーすぎない!?


「……もうちょっと……」


 さらにフィランちゃんが、ぐいっと背伸びをした時だった。


 ぐらっ。


「……あっ」


「えっ」


 フィランちゃんの体勢が崩れて――


 ふにゅんっ。


「……っ――!!!♡」


 真っ赤なおパンツに包まれた柔らかいお尻が、視界を覆った。


 ふ、ふふ、ふわっふわの柔らかいおし、お尻の感触が……なんか良い匂いも、し て、……あ、やばいわカスミ、意識が――


「……あっ、あっちも可愛いっ。よいしょっと」


 するとフィランちゃんは違うお目当てを見つけたのか、すたすたと走り去っていった。


「……ふわふわ……でへっ……」


「みぃーちゃったっ、先生♡」


 背後からの声に、肩がビクンッと跳ねた。


「ふぇ!? カベラちゃん!? イッタイ、ナンノコトカナー??」


「ランちゃんのお尻、そんなに気持ちよかったんだぁ?♡ お耳まで真っ赤にしてぇー♡」


「ちっ、違うわ!! そんなえっちなこと考えてなんか!!」


 するとカベラちゃんは耳元に顔を近づけてきて……。


「先生の……むっつりすけべっ♡ かぷっ♡」


「おっほぉぁ!?♡」


 耳元で囁かれながら、耳たぶを甘噛みされて――


「あばぶっ!??」


 暴発しそうになった鼻血を、なんとか両手で押さえた。


「あはっ♡ よく耐えたねっ、せーんせいっ♡」


 カベラちゃんは目を細めてわるーい笑顔をしていた。

 ……この子はほんとにっ……!!


 そんなこんなで、試着室に集合した私たち。


「行くわよーっ! まずは私からっ!!」


 カベラちゃんの声と共に試着室のカーテンがばっと開かれる。


「ぎゃーー!♡ だぼだぼなスウェットとブーツでストリートガーリーねっ!♡」


「ふふーん! どう先生? 可愛いでしょ♡」


 カベラちゃんは得意げに舌をちろっと出してウィンクをする。

 スウェットは膝上まで隠れるくらいだぼだぼなので、そこから見える生足にそそられちゃう……!


「可愛いわっ!! とっても!!!♡♡♡」


 するとまたカーテンは閉じられ――


「……次はフィラン。 じゃーん」


 今度はゆっくりとカーテンが開かれる。


「わ゛ーー!!♡♡ フィランちゃんは、真っ赤でフリフリなゴスロリなのねーっ!!♡」


「……せんせぇ、フィランもかわいい?」


「可愛い可愛いっ!♡♡♡ 最高ぉお!!♡」


 はぁはぁ……まずいわっ。こんな可愛いを浴び続けてたら、公衆の面前なのにあばばってしまうわ……!!


 ――そんな私をよそに。


「まだまだ行くわよーっ!♡」


「……わよーっ」


 二人のファッションショーは、まだまだ続く。


 ゆめかわ、チャイナ、原宿系――次から次へと可愛いが押し寄せてくりゅうううう!!!!


「ふっ……二人とも、世界一可愛いわっ……。気に入ったお洋服あったら全部買ってあげちゃうわ……ふふふっ♡」


 我ながら怪しい笑みを浮かべながらクレカを取り出す。


「なんか怖いわよ、先生……」


「……危ない人?」


 フィランちゃん、多分間違いないわ。


 そしたら二人は、「うーん」としばらく頭を悩ませる。


「どれも可愛かったけど……先生は、なにが似合うと思う?」


「……フィランも気になるっ」


「えぇ? 二人とも全部似合ってたけど……」


 ふと、お店の中を見渡す。


「……あらっ」


 その中でピンとくる物を見つけて、カベラちゃんたちに渡す。


 そして――


「どう、かしらっ。先生っ?」


 カベラちゃんがスカートの裾をつまんでみせる。


「……わぁ。ベラお姉様もフィランも、すっごい綺麗っ」


 開かれた試着室のカーテン。

 着替え終わった二人はまるで……。


「……天使が舞い降りたのかしら」


 二人の深紅の髪を引き立てるような、真っ白なロングワンピース。

 私の目に狂いはなかった。


「先生ったらこういうお清楚なのも好きなのねっ。むっつりのくせに♡」


「……むっつり? でもこれ、とってもすてきっ」


 すると――


「先生っ! これにするわっ!♡」


「……せんせいっ。これがいいっ」


 二人は仲良く、笑顔を私に向けた。


◇


 楽しい買い物も終わり、せっかくだからと外のレストランでお夕飯を済ませた私たち。


 家に帰ってきてお風呂を済ませると、あとはもうおやすみをするだけだった。


「じゃあ、二人とも電気消すねー」


 パジャマに着替えたカベラちゃんとフィランちゃんの「は〜い」という声が重なる。

 さすがに疲れちゃったみたいで、昼間ほどの元気はなかった。


「よいしょっと、ってわぁ!」


 横並びに敷いた三人分の布団の真ん中に寝ると、両脇を陣取るように二人が距離を詰めてきた。


「ふふっ。先生、今日はとっても楽しかったわっ」


「……フィランも、たのしかった……むにゃ……」


「よしよし。私も今日はとっても楽しかったわ。ありがとうねカベラちゃん。フィランちゃん」


 二人のさらさらの頭を優しく撫でる。

 ……でも私は一つ気になっていた。


「……ねぇ二人とも、本当によかったの? 一着だけで?」


「もちろんよぉ……なんたって先生が『あたしたちに似合う』って選んでくれた一着だもん……とぉっても気に入ったわっ♡」


「……まっしろのワンピース、ベラお姉様とお揃いで……フィラン嬉しい……大切にする……」


 私は全部買ってあげる気でいたけど、二人はあの真っ白のワンピースが気に入ったみたいでそれ以外は欲しがらなかったのだ。


「えへへっ。ランちゃん、次はあのワンピースでお出かけしようねっ♡ とっても……楽しみだわ……すぅ」


「フィランも……ベラお姉様と……いっしょ……くぅ……」


 二人は寝息を立てて、すやすやと寝てしまった。


「おやすみ二人とも、よいしょっと」


 風邪をひかないようにと、二人に掛け布団をかける。

 さて、私も明日からの労働に備えて寝ないとなぁ……。


「……様ぁ……」


 あら、寝言かしら?

 でも、ちょっとうなされているみたい……。


「……お父様……お母様……」


「……さみしい……うぅ……」


 すると二人は、小さくうずくまっていた。

 ……そうだよね。急に知らない世界で二人ぼっちになっちゃってるんだから。不安で、心細くて当たり前だ。


「……大丈夫。ここにいる間は、私が絶対守るからね」


 私は二人を起こさないように優しく抱き寄せる。

 すると心なしか、二人の表情が和らいだ。


「……ふぁぁ」


 二人の体温が心地よくて、私も眠気の限界が来たようだ。

 そして誘われるままに目を閉じる。


 うつらうつらし始めたら、今日の二人の可愛いファッションショーが夢の中に出てきた。


 やっぱり二人はお姫様なだけあって、なに着ても似合ってたなぁ。


 ……ショッピングモールだと我慢したけど、夢の中なら……いいよね?


 うふふっ……あばっ……あばばっ♡♡♡――


◇


「……なさい! ……わよっ!」


 誰かの呼びかける声と、カーテンから差し込む朝日で目が覚める。


 あれ……でも体が全く動かない? なんで?


「先生!! もう起きないと遅刻するわよっ!! っていうか、とんでもないことになってるわよ!」


 意識がはっきりしてくると、カベラちゃんが私の体を揺さぶっていた。


「……お目覚めの血……おいしい。ぺろっ」


 するとフィランちゃんは私の口元をぺろぺろと舐めている。


 なんとか目線を自分の胸元まで向けると、着ていたパジャマが真っ赤に染まっていて、生温かった。


 ……ああ、そっか。


「私、寝てる最中にあばばったのね……がくっ」


「ちょっと待ちなさいよ先生!! ランちゃんも血を貰ってる場合じゃないわよ!!」


「……血、あったかい……すやぁ……」


「二度寝しないで! ランちゃん!! もーっ!!」


 二人のやり取りが、だんだん遠くなる。


 そして私は人生で初めて、仕事に遅刻したのであった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


画面下の☆☆☆☆☆や【ブックマーク】【リアクション】で応援していただけると、とても励みになります!


次回もよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。