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CORE  作者: 北小松 耕作
7/12

第7話 前夜


二日でカルロスはやり遂げた。

掘削カプセルが工場の中央に立っていた。全長八メートル、行くよ。

CORE

第六話「氷の大地」

アイスランドは灰色だった。

レイキャビク郊外の小さな空港に降り立った時、空は低く垂れ込め、風が容赦なく吹き付けていた。遠くに火山の稜線が見えた。大地そのものが生きている場所だった。

「寒い」キムが言った。「なんでこんな場所なんだ」

「地殻が薄いからだ」イワノフが言った。「文句を言うな」

レンタルした四台の車に分かれて、目的地へ向かった。イワノフが事前に手配していた廃工場だった。かつて漁業用の機材を保管していた場所で、今は使われていない。港から離れた荒れ地の中に建っていた。

工場の中は広かった。イワノフの設計図通りに製造された掘削カプセルの部品が、すでに届いていた。キムが手配したルートで、国家にも気づかれずに運ばれていた。

カルロスが部品を一つずつ確認した。無口な男が珍しく口を開いた。

「よくできてる」

「当然だ」イワノフは胸を張った。「ワシが設計した」

「組み立てに三日かかる」

「二日でやれ」

カルロスはイワノフを見た。老人は目を逸らさなかった。カルロスは短くため息をついた。「わかった」

マックは工場の外に出た。風が顔を叩いた。遠くの丘の向こうに、光が見えた。車のヘッドライトだった。複数台、動いていない。

ジャックが隣に来た。

「ロシア側だ」ジャックは静かに言った。「十二キロ先で掘削準備を進めてる。キムの情報だと、あと十日で開始する」

「十日か」

「こっちは二日で組み立て、テストに一日、残り七日で到達しなければならない」

「イワノフの計算では?」

「理論上は可能だと」

「理論上か」マックはジャックの言葉を繰り返した。

二人は少し笑った。砂漠で死にかけた夜も、こんな風に笑った気がした。笑うしかない状況で笑う、それがこの仕事だった。

夜、全員が工場の片隅に集まって食事をした。キムが調達してきた缶詰と硬いパンだった。

「最悪だ」キムが缶詰を見て言った。

「贅沢を言うな」レイラが言った。「生きてるだけましだ」

「そういうセリフ、もう少し状況がやばくなってから言ってほしい」

「今でも十分やばい」

イワノフが缶詰を器用に開けながら、マックに言った。「サラさんはどんな人だ?」

マックは少し間を置いた。

「強い女だ」

「強い?」

「俺と十五年一緒にいた。それだけで強さがわかる」

イワノフは笑った。カルロスも口の端を上げた。レイラが静かに頷いた。キムだけが「それ褒めてんの?」と言った。

誰も答えなかった。でも場が少しだけ柔らかくなった。

マックは工場の天井を見上げた。鉄骨の向こうに、アイスランドの夜空があった。星が出ていた。

サラ。

もう少しだけ待っていてくれ。

7話、行く?

しくはない。でも見ているだけで、これは本物だとわかった。

「テストする」イワノフが言った。

カプセルの外壁に熱と圧力をかけた。数値が上がるたびにキムが声に出して読み上げた。カルロスは無言でモニターを見続けた。

一時間後。

「合格だ」イワノフが言った。「理論値通りだ」

カルロスが初めて深く息を吐いた。マックは手を触れた。冷たい金属の感触だった。この中に六人で入って、地球の核心へ向かう。

「明日の夜明けに出発する」イワノフは言った。「ロシア側より三日早い」

その夜、工場は静かだった。

キムはパソコンの前で国家とロシア側の通信を傍受し続けていた。カルロスはカプセルの最終確認を一人で黙々と続けていた。レイラは壁際で目を閉じていた。眠っているのか考えているのか、わからなかった。

ジャックがマックの隣に座った。

「怖いか」ジャックが言った。

「ある」マックは正直に言った。「サラに会えないまま終わる怖さが」

ジャックは頷いた。「俺も怖い。でもお前が砂漠で俺を引きずった夜、お前は怖くなかったか」

「怖かった」

「それでも引きずった」

マックは答えなかった。引きずったのは当然のことだった。仲間を置いていける人間じゃなかった、それだけだ。

「レイラ」マックは少し離れた場所にいる女に声をかけた。「仲間を全員失った作戦の話、聞いてもいいか」

レイラはゆっくりと目を開けた。

「いつか話す」レイラは言った。「帰ってからな」

それが答えだった。帰ることを前提にしている。マックは頷いた。

イワノフが革のカバンから古い写真を取り出してテーブルに置いた。若い頃のイワノフと、白衣を着た集団が写っていた。

「ソ連時代の同僚たちだ」イワノフは言った。「みんな死んだ。この研究のせいで、消された者もいる」マックは写真を見た。「ワシが最後まで続けたのは、奴らへの義理だ。コアへ行く。それが約束だった」

工場がまた静かになった。

約束。義理。意地。それぞれが、それぞれの理由でここにいた。命令じゃない。誰かに強いられたわけでもない。

出発まであと数時間だった。

マックはカプセルの前に立った。冷たい金属に手を当てた。地球の核心まで、この鉄の塊が連れて行ってくれる。その先にサラがいる。正確には、サラを取り戻すための切り札がある。

「行くぞ」マックは誰にともなく言った。

誰も返事をしなかった。でも全員がそれを聞いていた。

夜明けまで、あと少しだった。


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