第4話 集結
一週間後、ジャックが指定した場所は港の倉庫だった。
錆びた扉を開けると、すでに人影があった。マックは入り口で立ち止まって、一人ずつ確認した。
カルロスが壁にもたれて腕を組んでいた。マックより二つ年上、南米出身の爆発物処理の専門家。かつて同じ現場で何度も汗を流した男だ。五年前、国家に無実の罪を着せられて現場を追われた。それ以来会っていなかった。目が合うと、カルロスは顎をしゃくった。それだけだった。昔から口より体で話す男だった。
「久しぶりだな」マックは言った。
「ああ」カルロスは答えた。「サラの話は聞いた」
それ以上は何も言わなかった。それで十分だった。
奥の木箱に腰かけていたのはレイラだった。短く切った黒髪、鋭い目。元特殊部隊、ジャックの古い仲間だ。三年前の極秘作戦で部隊を全員失った。生き残ったのは彼女だけだった。その後、国家は作戦そのものをなかったことにした。
「ハント」レイラは言った。「あなたの話はジャックから聞いた。一つだけ確認させて」
「何だ」
「これは感情で動く作戦じゃない。妻を取り戻したいのはわかる。でも感情が判断を狂わせた瞬間、全員死ぬ。それを理解してる?」
マックはレイラの目を見た。冷たい目じゃなかった。仲間を全員失った人間の目だった。
「理解してる」
レイラは頷いた。それで終わりだった。
隅っこでノートパソコンを開いていた若者が顔を上げた。キム。二十代半ば、アジア系、皮肉屋の顔をしている。国家のシステムに侵入して陰謀を掴んだハッカーだ。その後追われる身になって、イワノフに匿われていた。
「で、これが例の掘削屋?」キムはマックを見て言った。「思ったより地味だな」
「お前が派手すぎるんだ」ジャックが言った。
「で、イワノフのじいさんはまだ来てないの?」
「来る」
その言葉が終わらないうちに、扉が開いた。
白髪の老人が入ってきた。背は低いが、目だけが異様に鋭かった。分厚いコートを着て、古い革のカバンを肩から提げている。ジョセフ・イワノフ。元ソ連の科学者。コアの研究を生涯続けてきた男。
老人はゆっくりと室内を見回して、マックを見つけた。
「やあ」イワノフは言った。ロシア訛りの英語だった。「久しぶりだな、マック」
「ああ」
「あの時の冗談、覚えてるか?」
「もっと掘れば金が出るぞ、だろ」
イワノフは白い歯を見せて笑った。
「冗談だと思っとったか?ワシはずっと本気だった」
老人はカバンをテーブルに置いた。中から分厚いファイルを取り出した。図面、数式、データが詰まっていた。ソ連時代から続けてきた研究の全てだった。
「行ける」イワノフは言った。「コアへ。ワシならわかる、道が」
五人がイワノフを囲んだ。
全員が国家に捨てられた人間だった。全員が傷を持っていた。それでも今夜、この錆びた倉庫に集まっていた。命令じゃない。義理と意地で。
マックは全員の顔を見渡した。
「一つだけ言う」マックは言った。「俺はサラを連れて帰る。それだけが目的だ。お前たちにはそれぞれの理由がある。それでいい。誰かの命令で動く必要はない」
沈黙があった。
カルロスが最初に頷いた。レイラが続いた。キムが肩をすくめた。「まあ、乗りかかった船だし」
イワノフが革のカバンを持ち直した。「では、始めようか」




