第3話 再会
行くよ。
CORE
第三話「再会」
マックはすぐに答えなかった。
ジャックを最後に見たのは、七年前だった。中東の砂漠、作戦が崩壊した夜。敵に囲まれて動けなくなったジャックを、マックは一人で引きずり出した。膝に銃弾を受けながら。夜明けまで砂の中を這って、二人でなんとか生き延びた。
その後ジャックは国家の内通者になった。マックはそれを後で聞いた。何も言わなかった。人間、生き延びるためにできることをするしかない。
「生きてたか」
マックは言った。
「お前のおかげでな」ジャックはバーボンを一口飲んだ。「座ってた場所が、お前の隣だったのは偶然じゃない」
「知ってた」
「そうだろうな」
二人はしばらく黙って飲んだ。バーの奥でジャズが低く流れていた。客は他に二人だけ、それぞれ自分の世界に沈んでいた。
「サラのことは知ってる」
ジャックが静かに言った。マックはグラスを置いた。
「どこだ」
「今はまだ言えない。でも生きてる。俺が確認した」
「お前は向こう側の人間か」
「だった」ジャックは首を振った。「今は違う。マック、俺はずっと監視してた。お前じゃない、奴らをだ。この計画、最初から知ってた」
マックはジャックの目を見た。嘘をつく目じゃなかった。砂漠で死にかけていたあの夜も、この男は嘘をつかなかった。
「話せ」
ジャックは低い声で話し始めた。コアの金のこと。金本位制の計画のこと。ロシアとの競争のこと。そしてサラが監視対象になった理由。イワノフのこと。全部。
マックは一言も遮らなかった。
話が終わった。バーボンがいつの間にか空になっていた。
「俺一人じゃ無理だ」マックは言った。
「わかってる」ジャックは頷いた。「だから俺が集める。昔の仲間を。みんな同じだ。国家に使い捨てにされた連中ばかりだ」
「なぜそこまでする」
ジャックは少し笑った。自嘲するような笑いだった。
「七年前、お前は膝に弾を受けながら俺を引きずった。砂漠を一晩中。俺はずっとその借りを返せないまま生きてきた」ジャックはグラスを置いた。「今度は俺が、お前を救う番だ」
マックは何も言わなかった。
言葉より重いものが、その沈黙の中にあった。
「イワノフはどこにいる」マックはようやく口を開いた。
「俺が知ってる」
「仲間が揃ったら動く」
「ああ」ジャックが立ち上がった。「一週間くれ」
マックも立ち上がった。二人は握手した。七年分の重さがある手だった。
バーを出ると、夜の空気が冷たかった。マックは空を見上げた。雲の切れ間に、星が一つだけ見えた。
サラ。
必ず帰る。それだけだ。




