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CORE  作者: 北小松 耕作
10/12

第10話 到達


「深度六千キロ、コア外縁層まで残り百メートル」

キムの声が掠れていた。

カプセルの外は完全な赤だった。窓越しに見える世界は、まるで地球の血液の中を泳いでいるようだった。温度計は振り切れる寸前で止まっていた。空調が悲鳴を上げていた。

「持つか」マックがイワノフに言った。

「持つ」イワノフは言った。今度は根拠を言わなかった。でも誰も聞かなかった。

「残り五十メートル」

全員が黙っていた。息をするのも忘れるような沈黙だった。

「残り二十メートル」

カプセルが止まった。

着いた。

誰も動かなかった。誰も言葉を発しなかった。地球の核心、六千キロの地下。人類が一度も到達したことのない場所に、六人の使い捨ての男と女がいた。

イワノフが計器を確認した。老人の目に、何かが光った。

「金だ」イワノフは静かに言った。「コアの外縁に、金の層がある。計算通りだ。四十年前から、わかっていた」

キムが採取装置を起動した。自動的にサンプルが収集された。純度の数値が画面に出た。キムが口笛を吹いた。

「本物だ。とんでもない純度だ」

その時、通信装置が鳴った。

見知らぬ周波数だった。キムが眉をひそめた。「ロシア側からだ」

全員の視線が集まった。マックは頷いた。キムが繋いだ。

ロシア語と英語が混じった声が聞こえた。

「我々も到達した。あなた方より三分遅れで」

マックは通信装置を手に取った。「それで?」

「我々は政府の命令で動いている。あなた方は?」

「俺たちは俺たちの理由で動いている」

短い沈黙があった。

「金は両国のものになるべきだ」ロシア側の声が言った。「争う必要はない」

マックはジャックを見た。ジャックが小さく頷いた。レイラが腕を組んだ。カルロスは無表情のまま。キムが肩をすくめた。イワノフが静かに言った。「マック、決めるのはお前だ」

マックは通信装置を置いた。

そして別の通信を繋いだ。国家安全保障局への直通回線だった。昨日キムが割り出していた番号だ。

数秒後、あの感情のない声が出た。

「ハント氏、到達したのですか」

「ああ」マックは言った。「条件がある」

「お聞きします」

「サラを今すぐ解放しろ。俺たち六人全員の命の保障。生涯の生活保障。書面で。それが先だ。確認が取れてから、金の座標を渡す」

沈黙が続いた。

「それを飲まなければ?」

「ロシア側と山分けする」

また沈黙があった。今度は長かった。

マックは待った。焦らなかった。カードはこちらにある。それだけで十分だった。

「承知しました」

声が言った。


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