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97.魔力の正体

 それから二日間で、私はポーションとエーテルまでを調剤することに成功した。

 とはいえ、残りのカプセルは約半分。

 スタートからすでに、百五十ものカプセルを割り続けてしまったということだ。

 満月まではあと一週間。……足りるかなぁ?


「今日こそは赤行けるかも……!」


 そう思いつつ、落ち着いて調剤に向き合う私。

 だいぶコツは掴んできたようで、エーテルまではなんとか作れるようになっている。


 カプセルが青、紫、と変わり赤く染まっていくのを見ながら、魔力を流す。


 ……なんか今日は調子がいいかも。


 そう思った私は、赤を通り越し、オレンジに挑戦することにした。


 赤いカプセルが徐々に黄みがかってきた。


「マシュマロ、圧縮、マシュマロ、圧縮……」


 もはや合言葉となりつつあるこのセリフを頭の中で何度も繰り返しながら、私は魔力を流していった。


「……!!」


 カプセルが綺麗なオレンジ色に染まり、私は手を止めた。


「できた……!!」


 そっと取り出したそれは、まるで小さな夕日のように輝いている。


 ……これ、確かオレンジってその人の魔力の質によってどんな薬になるか決まるんだよね?


 私の魔力の質は、一体どんな薬になるんだろう?


 ドキドキしながら、そっと精製水にカプセルを入れる。


 しゅわっとはじけたカプセルは、オレンジ色に輝き、そしてすぐに透明に変わった。


「……これ、なにかな?」


 見てもわからない。

 口に含むのはちょっと怖い。


 薬局長にきいてみようかな。


 そう思い、早速薬をもって調剤室を出ると、なんとそこにはシャロン様がいた。

 いつも通りオーウェン様もいる。


「シャロン様!?」


「あら、ごきげんようクレアさん。どうしたのかしら?そんなに慌てて」


「今また新しい薬ができたから薬局長に見てもらおうと思いまして……シャロン様こそどうしたんですか?」


「お仕事ですわ。フランツ様からのご指名をいただいたので!」


 幸せそうな顔を隠しもしないシャロン様に、思わず顔が緩んでしまった。

 にこにこ笑いあってしまう私達を黙って見ていたオーウェン様が、呆れたように言った。 


「それで?クレアちゃん、今度はなに作ったんだ?」


「あ、そうそう!それがわからないんです。オレンジのカプセルなんですけど、作った魔薬師の魔力の質でどんな薬か決まるみたいで……」


「すご。何が出るかお楽しみってやつだな」


「オーウェン様わかります?」


「あんたの魔力の色は見えるけど、何の薬かはわかんねぇな」


 差し出した瓶を見て、オーウェン様が首を振った。

 するとシャロン様がちらりと中を覗き込んで、丸い目をきらりと光らせた。


「これ、聖水じゃないかしら?」


「へ?」


「聖水?って薬か?」


 彼女の言葉に、私もオーウェン様も首をかしげる。


「ではないですわね。飲み物じゃないですし。でも波長が確かにそうですわね。限りなく聖水って感じですわ」


 彼女はそう言って、私の作った薬をスポイトで取ると、自分の指輪に一滴たらす。


 キラリと青く輝く指輪に、彼女は頷いた。


「正真正銘、聖水ですわね」


「へぇ~ってことはなに?やっぱりクレアちゃんて聖なる魔力の持ち主ってこと?」


「オーウェン様、すごいですね。前に言い当ててましたよね」


 感心する私に、シャロン様が言った。


「なるほど。だから、クレアさんの薬がルカ様に効くのですわね。内側から効かせるというのは、確かに服用できる薬じゃないと無理ですから」


 そう話していた時に、薬局長が事務所から現れた。

 話を聞いていたらしく、彼はすぐにこう言った。


「……それで、クレアさん、残りのカプセルはいくつですか?」


「あと半分くらい残ってるんです」


「それはお見事ですね。残りは全て、万能薬に回せるということになります」


「でも、私まだ鏡を黄色く光らせることが出来なくて……」


「残り、一週間。万能薬ができなかったら、今回の作戦はなしだからな」


 頬杖をついたオーウェン様が、私の作った聖水を手の中で転がしながら言った。


「あら、そうでしたの?私、せっかく少し強めの結界を学んできましたのに」


「え?」


 シャロン様を見る。


「クレアさんがルカ様の解呪に命を賭けるから、力を貸してくれと頼まれましたの。私がフランツ様の頼みを断るわけがないですし……それに、推しに命を賭けようとするクレアさんに胸をうたれましたからね」


 にこりと微笑むシャロン様。

 つまり彼女がここに来たのは、満月の解呪作戦のためだ。

 私は「ありがとうございます!」と頭を下げた。


「それに、ルカ様の解呪ができないのは、巫女として心苦しいですもの。私は今回あなたのサポートをさせていただきますから、安心して死んだふりをしなさいな」


「ありがとうございます!安心して死んだふりします!」


 美しく微笑むシャロン様に、私はぐっとこぶしを握り締めて頷いた。


「……こういう時って女性の方がたくましいんですよね。わかります」


 頷く薬局長に、オーウェン様が肩をすくめていた。

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