↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/112

95.初めての成功

 大人二人から仮死薬作戦の協力を取り付けた私は、これまで以上に魔力を上げる訓練に取り組んでいた。


 何をおいても、とりあえず鏡をオレンジにしないことには始まらない。

 満月補正で黄色になることを願うにしても、今の私じゃまず無理だ。


 絹糸にマシュマロを押し込む、というわけのわからない感覚を次第に身に着け始めて数日。

 目に見えて鏡の色に変化が表れてきた。


「こ、これはオレンジ?かも??」


 赤みがかかったオレンジではあったけれど、初めて見る色に私は嬉しくなる。


「ちょっと調剤、試しちゃおうかなぁ」


 古い調剤道具をそっと取り出すと、私は早速カプセルを準備した。

 この三日間、あえて触っていなかったので、ちょっとドキドキするなぁ。


 私は深呼吸をすると、慎重に魔力を流し始めた。


 すると、初めてカプセルに魔力が上手く流れ始めた。

 集中集中!

 喜びでコントロールを失わないよう、「マシュマロ、圧縮、マシュマロ、圧縮……」と念じながらカプセルを見つめる。


 あっという間にカプセルは美しい青に染まっていった。

 どうしよう、もっと先まで進めちゃう?

 いや、ちょっとやめよう。

 欲張って割れちゃったら悲しすぎる。


 私はそっと手を離すと、古い調剤道具にはまっているカプセルを取り出してみた。


「……できた……!」


 透き通った美しい青のカプセルがきらりと光って見える。


 これを精製水に入れればポーションになるはずだ。

 ドキドキしながらカプセルを、精製水にポトンと落とし込む。


 しゅわっと美しい青がきらめき、みるみるうちにとけて透明になった。


「色はつかないのね」


 私は瓶をあちこちから眺めると、出来上がったポーションをほんの少し飲んでみる。



「!!あまい!!」


 びっくりするほど甘かった。

 いつも私が作るものよりも格段に甘い。


 こんなにも違うの?


 私は早速出来立てのポーションをもって薬局長に報告へ行くのだった。




「……これはすごい。今で言うハイポーションくらいの効果はありそうですね!たぶんあなたの魔力が、凝縮されて入ってるんでしょう」


 ワクワクした表情で薬局長は言った。


「これ、ルカ君に飲んでもらいます?」


「え!?でも……耐性がついちゃうから……」


「一口くらいなら良いですよ。あなたのポーションの効果を一番知っているのはルカくんですしね」


 そう言って薬局長が笑う。


「それじゃあ夕方の測定、今日は特別にクレアさんお願いします」


「えぇっ!?」


「仮死薬の件、ちゃんと反省の姿を見せておいてくださいね?

『万能薬だけおとなしく作ってます』ってしおらしくしていてください。間違っても、僕らが絡んでることは言わないように」


 そうか!

 もうここから作戦は始まっているというわけですね?

 私が『仮死薬をあきらめた』という演技をしっかり見せつけないと!


「……わ、わかりました!がんばります!」


 急にドキドキしてきた私は、薬局長が「まぁ、それは建前なんですけどね~」と笑ったことに全然気づいていなかった。





 そして、夕方、久しぶりにルカへの特別調剤に来た私。

 緊張しすぎて吐きそう。


「あぁ、そうだった。この待ち時間が地味にきつかったのよ!」


 一人医務室でうろうろする私。

 すると、その時トントンとドアがノックされた。


「失礼します」


 そう言って黒髪のルカが入ってきた。


 彼は私を見た瞬間驚いて目を丸くし、固まった。


「クレア?」


「あ、どうも」


 思わずそんなことを言って、頭をぺこりと下げる。


「え、どうして?薬局長は?」


「今日は特別に、私がやることになったの」


「……でも、俺達、接近禁止だろ?」


「うん、そうなんだけどね、今回だけちょっと特別で」


 私はそう言って、ルカを椅子に座るよう促した。

 彼は戸惑いつつも、言われるがまま椅子に座る。


「あのね、お祭りの日に古い調剤道具を見つけたでしょう?

 あれを使って初めてポーションが作れたの!それで、ルカに一口だけなんだけど飲んでもらいたくて……」


 私がそう言ってポーションを取り出すと、ルカはじっとそれを見つめた。


「……これ?あの古い機械で作ったの?」

「うん。すっごく難しくてね、今まで失敗ばっかりだったの。やっと今日カプセルに魔力が入ったんだよ」


「すごい……。あのおばあさん、すごく難しいって、できるわけないって言ってたのに……クレアすごいね!」


 ルカは心からそう思ってくれているようで、目を輝かせている。


「万能薬にはまだ少し時間がかかりそうだけど、絶対作って見せるから、もう少し待っててね!」


 私はそう言いながら、「まずは測定だよね」と彼の腕に測定器を巻き付ける。


 久しぶりにルカの腕を見た瞬間、思いきりドキッとしてしまった。


 あぁ、もうやだ。

 こんなところで、お祭りで抱きしめられたことを思い出してしまう私は、本当にどうかしている。


「?どうしたの?」


 頭をぶんぶん振った私を、ルカが首をかしげながら見ている。

 今私が考えてしまったことなど、一生気づかないでください!と思いつつ、「ごめん、なんでもない」と普通を装った。



 測定値が出たので、紙に記録してから測定器を外す。

 腕はさっさとしまってもらうに限る。


 私の思いを知ってか知らずか、彼は袖を降ろしながら言った。


「クレア。万能薬だけ作ってるよね?他に変なもの作ってない?」

「変なもの?」

「……仮死薬とか、そういうの」


 来た。

 ルカからそれを言ってきたわね!


「うん、ごめんね。あの時は、ちょっと思いついちゃっただけなの。もう今は万能薬一筋だよ。ポーションも成功したし、絶対に万能薬で解呪できるって思ってるから……だから安心してね!?」


 そう言い切った私。

 ルカはじっとそんな私を見ている。


 ……まずい、変に力が入りすぎたかしら?

 バレる?嘘だってわかっちゃうかな??


 ドキドキしながらルカを見ていると、彼が言った。


「うん、わかった。信じる」


 その言葉にホッとすると、さらに彼は続けた。


「クレアが危ない目に遭うのは、絶対に嫌だから。……万が一、変なことが起こったら、俺たぶん、ぜんぶ灰に変えると思う。俺の命が削られてなくなるまで全部、ね」


「え……」


「だから、もう変なこと考えないでね?」


「あ、はい……」


 冷や汗が止まらないんですけど……!

 ルカ、こんな怖いこと言う人だったの!?


 黒髪だけれど、ものすごく綺麗に笑ってそういうルカは、やっぱりあの金髪ルカと同じ人なんだと改めて気づかされた。


 子犬系だと思ってた黒髪のルカに、私は引きつり笑いを浮かべるしかない。


 これ以上はちょっと無理だ。

 なんか全てがバレる気がする。


 何か言うと私がぼろを出すに決まってるので、さっさと薬を飲んでもらおう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。