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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
文化祭編

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第91話 わからずやっ!

「あーもうっ! 大輝くんの、わからずやっ!」


 私はベッドの上で、ぬいぐるみに顔を埋めていた。

 起き上がると、そのぬいぐるみは、なぜか少し濡れている。


「私が丹精込めて、大好きな大輝くんのために作ったのに、どうしてっ!」


 ずっと、さっきの大輝くんの顔が脳裏に浮かび上がってきてしまう。私はそれを必死に追い出そうとしてるけど、大輝くんはずーっと、出ていってくれない。


「せっかく、頑張ったのに⋯⋯」



 ******



 これは、受験のちょっと前。


「ふんふふ〜ん! 大輝くん、喜んでくれるかな〜?」


 私はるんるんで、大輝くんへ向けたチョコを作っていた。今、ようやくチョコを溶かし終えたところだ。

 時計はもうとっくに、深夜1時を超えていた。だけど、不思議と眠たくない。


「えーっと、こっからどうやろうかなぁ?」


 私はスマホを開いて、検索をかけた。


『お手軽! 15分でできるチョコレート!』

『簡単で美味しいチョコレートの作り方』

『手作り簡単でかわいいチョコレート!』


 とか、どれも『簡単』なものばっかり。⋯⋯大輝くんにあげるんだし、手の込んだのを作りたいなぁ。


「あっ! そう言えばっ!」


 私は今日百均で買ってきた、チョコレートの型を取り出した。


「ちゃんと、ハート型を選んできたからねっ! 大丈夫っ!」


 私はその型をキッチンに取り出した。


「よしっ! そしたら、ここに、流し込めばいいのかな?」


 私は検索ページの画面とにらめっこした。


「う〜ん、多分大丈夫っ!」


 私は思い切って、ハート型の型にチョコレートを流し込んだ。


「⋯⋯あとは、冷やして、待てば完成かなっ!」


 私はとりあえず冷蔵庫に入れた。


「あとは、あっ! お手紙でも、書こうかなっ!」


 

 ******


 

「ようやく書き終わった〜!」


 書いて消して、また書いてまた消して、また書いてまた消して。それがずーっとループしていた。

 そんなループも、1時間が経ち、ようやく終わった。


「あ、ちょうど1時間!? 取り出さなくちゃっ!」


 私は急いで冷蔵庫に駆けつけて、扉を開けた。


「う〜ん、美味しそう⋯⋯」


 少しぐらいなら⋯⋯いや、だめっ! 大輝くんのだもんっ!

 私はブンブン首を横に振って、我慢した。——やっぱり、食べたいなぁ。⋯⋯ジュルリ。


「我慢我慢! 大輝くんのは取っちゃだめなんだからっ!」


 私は欲望をなんとか押さえつけられた。⋯⋯ふぅ、危なかったなぁ。


「えっと、これは、バレンタインまで取っておかなくちゃっ!」


 私はそのチョコを、一旦お皿に移して、冷蔵庫に押し込んだ。

 

「あとは、箱を準備して、と。あ、袋も用意しなきゃねっ!」


 私は一度キッチンを離れて、探すことにした。


「確か、この辺に⋯⋯」


 一度私の部屋に戻って、あったはずの袋と箱を探した。

 ——でも、どこにもない。


「あれぇ? う〜ん、明日にでも、ママに聞こうかな」


 私はその日、諦めて寝ることにした。



 ******



 次の日の朝、私は早速ママに聞いてみた。


「あ! ねぇママ! 袋と箱知らない? チョコ入れるやつ!」

「あぁ、栞凛はなくすと思ったから、保管しといたわよ」

「本当!? ありがとっ!」


 ママはすぐに取ってきてくれた。


「はい、これ。栞凛、もう作ったの?」

「うんっ! 受験だからねっ!」


 私は冷蔵庫から昨日作ったチョコを箱に詰めて、用意した。


「大輝くん、喜んでくれるかな〜?」

「そうね〜、きっと喜んでくれるんじゃないのかしら?」


 うん! きっと喜んでくれる! ママが、そう言ってるんだもん!

 ——まさか、それが、ああなっちゃうなんてね。大輝くんらしいっちゃ、らしいけど。

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