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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
文化祭編

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第90話 私立の受験と――

 僕は栞凛と一緒に、受験会場へ来ていた。


「じゃあ、頑張ろっか!」

「⋯⋯うん」


 僕らはそのまま、受験会場へ入った。



 ******



 その会場は、長い机がいくつも並べられ、左右の生徒が距離を取り合っている。


「始め」


 見張りの先生は、冷酷な声をこの教室に響かせていた。あたりには、いろんな生徒の腕時計からか、カチ、カチと、規則正しく音が鳴っている。

 僕と栞凛は別々の教室になったが、大丈夫なのか。まぁ、きっと、栞凛なら。


 僕はすらすらと筆を進めていた。

 色々栞凛と対策したところが結構出てるな⋯⋯。栞凛、覚えていればいいけど⋯⋯。

 

 


「やめ」


 と、先生がそうやって言った途端、コンと、ペンを置く音が何重にも重なって聞こえる。

 とりあえず、1つ目の教科は終わった。


 さて、次だ。



 時間は、刻一刻と過ぎていた。

 そして、気がついたときには、もうすべての教科が終わっていた。


「ふぅ」


 僕は一息ついて、椅子に体重を預けた。


「よし、行くか」


 それも束の間、僕はとある約束を思い出して、急いで荷物をまとめた。

 ——栞凛は、待っているのだろうか。



 ******



 あの花火大会のときの場所に、僕は来た。

 そこにある1つのベンチには、僕のことを待っている影があった。


「ごめん、遅くなった」

「大丈夫っ! 私も今来たばっかだからっ」


 なんとなく、そういうセリフは、決まり文句のような気がするが、まぁいいや。


「で、大輝くんは、どうだった?」

  

 受験のことか。


「まぁ、ぼちぼち?」

「ふ〜ん」


 どこか自信ありげな栞凛がいる。僕とやったところを、覚えてくれればいいけど。


「私は、結構できたよっ! 大輝くんが教えてくれたところが、たーっくさん、出たからね!」

「そうだね。よかった、勉強した甲斐があって」


 栞凛は、合格できるのだろうか。できれば、してほしいと思っている僕がいた。


「次は、公立受験だね」

「あと2週間後ぐらいだっけ?」

「多分」


 栞凛にしては珍しく、中身のない会話だと思う。まぁ、珍しくは、ないか。


「えっと、帰ろっか」

「あ、帰る?」


 今日は、なんかあると思ってたけど、ないのか。

 そこには、ちょっと期待していた僕がいた。



 ******



「えっと、一瞬だけ! 一瞬だけ待ってて!」


 栞凛の家に着いた。もう、着いてしまった。

 栞凛は玄関の扉を開けて、急ぐように中へ入っていった。


「待つか」


 僕は少しだけ、待ってみることにした。


 

 そしてすぐに、栞凛は戻ってきた。


「あ、来た」


 なぜか手を後ろに回しながら、少し顔を赤くしていた。

 

「えっと、実は、ね? 私、ちょっと、受け取ってほしくて⋯⋯」


 栞凛にしては珍しく、少しかしこまって接してくる。

 栞凛は後ろに回していた手を前に出した。


「え? これ?」

「えっと、えっとね、これを、もらってほしいの!」

 

 少し高そうな袋に包まれて、少し高級そうな箱が、少し豪華そうな赤いリボンで結ばれていた。


「大輝くんには絶対、今日、渡したかったから」

「⋯⋯い、いの? こ、こんな、僕なんかに——」

「いいに決まってるじゃんっ!」


 僕の言葉を遮って、栞凛は大声で言った。


「なんでだめになるのっ!? 私は、大輝くんに食べてほしくて! 頑張って作ったんだよ! なのに、なのにっ⋯⋯!」


 少し、間が訪れる。空白の時間が。


「どうして、断ろうとなんかするのっ! 私は、私は、大輝くんに受け取ってほしかった、大好きな——っ!」

「⋯⋯ご、ごめ——」

「大輝くんなんか、もう知らないっ! 置いておくから、勝手に食べればっ!」


 手に持っていた袋を置くと、栞凛は泣きながら、走って家に戻ってしまった。


「⋯⋯」


 何もかもが吹き抜けていくような、感じたことのない感触が、僕を襲っていた。

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