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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
最初の関わりと日常編

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第9話 寝てたじゃなくて?

 5時間目の授業が始まる直前だ。この日最後の授業だ。

 

 隣には、なぜか嬉しそうな顔をしているやつがいる。リズムに乗るように首を左右に動かしている。

 

「教科書、使うから見せてもらって、だって!」

「はぁ」

 

 思わずため息が漏れてしまった。そのため息は、なぜか興奮していそうな顔をしている栞凛には感じ取れなかった。

 

「じゃあ、よろしくね!」

「⋯⋯はい。(仕方ない。先生のお願いだって割り切ろう)」

 

 僕はこのことを義務だとして、仕方なく見せてあげることにした。


 ******


 そして少し経つと、授業が始まった。その前に、しっかりと机は磁石のようにくっつけられていた。

 僕が少し離そうとしても、なぜか空間ができない。

 

「ん? どうしたの?」

「あぁ、なんでも」

 

 僕は邪魔だとしか思っていない。すごく教科書が読みづらい。

 僕が左側のページを見ようと、首を伸ばした。

 

「痛っ!」

 

 顔がぶつかった。僕は確認しながら近づいた。そしたら勢いよく倒れてきた。

 

「痛いじゃないよ。痛いのはこっちのセリフ」

 

 強い勢いで横から頭が降ってくるのは誰が想像するだろうか。

 

「あ、完全に寝そうだった。ごめ〜ん」

 

 寝てたじゃなくて? と心の中で突っ込んだ。口にはしていない。決してしていない。

 幸いここは端の席。先生には見られていない。

 僕は危なかったと心底安心する。そもそも授業中に寝るとか、ありえないと思う。


 ******


 ようやく、乗り切った。

 やっと、地獄の時間が終わった。

 

「ありがと!」

 

 栞凛に礼を言われた。ただ、感情がこもっているかと言われれば、そうではなかった。

 

「うん」

 

 正直、僕にとってはそんなのどうでもよかった。

 この時間を乗り切れた僕に盛大な拍手を送りたいぐらいだ。

 なぜかはわからない。わからないが、栞凛がすごく嬉しそうなのだ。僕には理由がわからない。

 気にしたら負けだと思い、気にしないことと決めた。


 ******


 下校の時間になった。僕は部活がない。というか、みんな部活がない。もう中3は部活を引退し、受験勉強に励む期間だとされる。

 そんな僕の大切な時間を、隣を歩いてるやつに奪われる筋合いは僕にはない。

 

「今日も来てね!」

 

 僕がどうこう言わずとも、勝手に予定がないことにされている。

 なぜこんなに僕に対する扱いが適当なのかわからない。

 

「⋯⋯はい」

 

 確かに予定がないことは事実。――違うか? 勉強も立派な予定か。

 そう思ったが、もう遅かった。

 ついてしまったのだ。あの場所に。

 

「全然容赦なしに上がっていいよー!」

 

 栞凛は軽々と言ってみせる。僕にはどれだけ難しいことか、わかっていないのだろう。

 僕は扉の前で止まる。前回来たときもこんなような感じだった気がする。

 そして、前回同様背中を押されて中に入ることとなった。

 


 僕が家に上がると、栞凛が口を開く。

 

「ちょっとだけ、ちょっとだけ進めたんだよ!」

 

 栞凛はなぜか誇らしげに言う。そんなの当たり前ではないのだろうか。

 

「あ、はい」

 

 一応、てきとうに返事だけはしておく。うん、そうしよう。

 前回の続き、となるとどの辺だったか。

 僕はそう思いながら階段を上った。


 ******


「え、進めた?」

 

 部屋を見てそうそう、疑いの目で見てしまう。

 なぜか、ゴミが増えている。なぜだろうか。僕にはわからない。

 

「うん!」

 

 栞凛は元気よく頷いてみせた。

 僕にはこれで片付けたという人間の頭がわからない。

 

「だって、ゴミ、増えてる」

 

 僕はローテーブルの上に乗っかっているお菓子の袋を指さした。

 

「あ、それはね、やる気を出すために食べたお菓子だから、実質プラマイゼロじゃん!」

 

 見苦しい言い訳だ。聞いているこっちが嫌になる。

 

「はぁ。仕方ねえ。やるか」

 

 また、僕はスイッチが入った。ここを、勉強のできる空間へと変えるために。

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