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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 宮茉紀 古治
最初の関わりと日常編

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第8話 平和な時間

「ちゃんと、先生には、伝えろよ?」

 

 僕は念を押して言った。

 

「うん! もちろんでしょ!」

 

 怪しい。実に怪しい。こいつなら、やりかねないと思う。

 僕は栞凛に疑いの目でかかる。

 

「なんでそんな目で見るの?」

 

 栞凛が首を傾げた。

 

「別に」

 

 僕は聞かなかったことにして、本を取り出した。もちろん、あのギリシア神話だ。

 それと同時に、栞凛は仲良しグループのところへ向かっていった。


 ******


 しばらくして、教室に先生が入ってきた。

 僕は栞凛の方を見たが、そこにはいなかった。

 まさか、と思った。そのまさかだった。

 なんと、栞凛がちゃんと覚えていたのだ。


 栞凛は戻って来るやいなや、僕に話しかけてくる。

 

「ね? ちゃんと覚えてたでしょ?」

「で、なんだって?」

 

 僕がそう聞くと、栞凛は顔をそむけた。

 

「教科書、使わないのか?」

 

 僕がそう言った途端、栞凛の体は一瞬の間、宙に浮いた。

 

「そういうことか。よかった」

「よかった!?」

 

 栞凛の大声が聞こえた。

 栞凛は口を抑えた。相当恥ずかしかったのだろう。

 多分僕に向けて言われた言葉だ。一応理由を言っておこう。

 

「え、無駄に、気を使わなくて、済むから」

「ごめん、なんでもない」

 

 急に謝られた。なぜ謝る必要があるのかわからない。

 

「え、あ、はい」

 

 念の為返事はしておこう。無駄だとは思うが。


 ******


 次の時間も、しっかり忘れていなかった栞凛だった。

 

「使わないって」


 なぜか残念そうに振る舞う栞凛だ。

 

「なにがそんなに不服?」

 

 僕は聞いてみることにした。このままでは夜しか眠れなくなってしまう。

 

「別になんでもいいじゃん」

 

 栞凛は顔を伏せた。

 僕は諦めることにした。本人が嫌がるなら、やめた方がいいだろう。

 僕が本に目を向けると、横から声がする。

 

「え、追求しないの?」

 

 自分が嫌がったのに、なにを言っているんだか。

 

「え、嫌がってたから」

「なんか、そういうとこなんだよなー」

 

 何が、かはよくわからない。なぜこんな反応するかもわからない。

 

「ま、なんでもない」

 

 栞凛は諦めて机に突っ伏した。

 今は仲良しグループのとこへ行かないのか。

 僕は余分なことを考えずに、本を読むことにした。


 ******


「で、どうだった?」

 

 次の時間、また不服そうな顔をしている。

 

「はぁ。先生の貸してくれるって」

 

 ため息混じりの声だった。

 なぜそんな態度になるのかわからない。普通なら安堵するところではないのか。

 

「せっかくのチャンスなのに⋯⋯」

 

 栞凛が小さく重たい声で呟いていた。僕にはなぜかはっきりと聞こえた。

 

「チャンス?」

 

 僕は聞き返した。なにがチャンスなのか、よくわからなかった。

 

「え、あ、なんでもない。聞かなかったことにして」


 なぜか焦っている。僕にはよくわからない。なぜそんな態度になるのか。

 

「まぁ、はい」

 

 僕はあの言葉を記憶から消し去った。


 ******

 

「ふんふーん♪」

 

 次の時間、なぜか嬉しそうに帰ってきた栞凛がいる。

 

「『隣の人に写させてもらって』だって! よろしくね!」

 

 数学の時間、おそらく教科書の問題を解くからそれを写させろということだろう。

 

「まぁ、わかりました」


 ******


 しばらくして、授業が始まった。

 

「机をくっつけなきゃね!」

 

 栞凛は机を横にずらそうとする。

 

「あ、栞凛さんやっぱいいよ! 黒板に書くから、それ写して。徳村くんもありがとね」


 先生はそんな栞凛の様子を見て言った。

 

「ちぇっ」

 

 栞凛の舌打ちが聞こえたのは気のせいだろうか。いや、確かに聞こえた。何が不服なのか僕にはわからない。


 ******


 そして給食のあと、5時間目の授業が始まる数分前になった。


「あ、先生だ。伝えてくるね!」

 

 栞凛は意気揚々と飛び出していった。

 

「(最後も平和であってほしいけど⋯⋯)」

 

 僕の願いが届くか、まったくわからない。先生が、察してくれれば、ワンチャンあるとは思うが、ほぼないに等しいだろう。

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