第88話 成績表発表
「おはようございます」
校門の前には、先生が数人立って、挨拶をしている。
「おはようございますっ!」
栞凛は元気よく挨拶を返して、いつも褒められる。
「いい挨拶!」
僕は会釈だけする。それに対し、先生は何も言ってこない。
「あーあ、終わっちゃったぁ。せっかくの冬休みが」
「勉強した?」
「え、してないよ?」
栞凛は当たり前のことかのように言ってくる。——と言っても、僕もそんなにやってないんだよねぇ。
******
「そろそろ受験だから、勉強さすがに始めろよー。と言ってももう遅いけどなー」
先生はすごく適当だった。まぁ、毎年言ってるし、めんどくさいんだろうなぁ。
「えー」
「えー、やだ」
「めんどくさいなぁ」
クラスのいたるところから、声が聞こえた。
「先生もやりたくなかったけど、やった。お前らも頑張れよー」
すごく棒読みに聞こえるのは、気のせいなのか。
先生はそれだけ言うと、教室を出ていった。
「ねぇ大輝くん、大輝くんって、どこ受けるの?」
「ん? 高校? 星稜だけど」
星稜第一高等学校。周辺では、1番偏差値が高い高校だ。
「えー、そこじゃ私いけないじゃんっ!」
「⋯⋯来なくていい」
******
「さてっ、仕方ないので、勉強をしようっ!」
「⋯⋯なんで僕まで巻き込むのさ」
僕は栞凛の家まで連れて行かれていた。
「このままだと、行けないので、私頑張るよっ!」
「栞凛は、どこ行きたいの?」
「ん? 大輝くんがいるところなら、どこでも」
「⋯⋯星稜来るの?」
「そういうことになるねっ!」
栞凛はなぜ、そんな無謀なことをしたがるのか。僕にはよくわからない。どうせ無理なのだから、諦めたらいいのに。別に、僕と会えなくなるわけでもないんだし。
「ということで、教えてくださいっ!」
栞凛が珍しく頭を下げてまでお願いしてきた。
「⋯⋯やだって言ったら?」
「え? ⋯⋯本物の大輝くんなら、そんなこと言わないし、言わせないし」
決めつけられてるのかな? いいや、気のせいさ。
「ま、いいよ。仕方ない」
「やった! ありがとっ!」
無邪気に喜んでくれる栞凛。いいなぁ、こんな純粋に喜べるなんて。
「でさ、2学期の成績、どうだったの?」
僕がそう聞くと、栞凛の動きが固まった。
「えぇ。教えたくない⋯⋯」
「じゃあ、僕帰るけど⋯⋯」
「あ、教えるに決まってるじゃんっ!」
急に態度を変える栞凛。なんて情緒不安定なのだろう。
「はいっ! 成績表!」
栞凛が差し出してきたその成績表は、とても悲惨なものだった。
「⋯⋯あ」
僕は、文字通り絶句してしまった。もう、何も言うことないや。
『国語 3』
『数学 2』
『社会 2』
『理科 2』
『保健体育 4』
『音楽 3』
『技術・家庭 3』
『美術 3』
『英語 2』
『2』がたくさんあるなぁ。
「え、へへ〜! ま、まぁ! 1がないから、まだセーフ!」
「⋯⋯はぁ。はいはい」
最低限オール3ぐらいは目指すものではないのか? これじゃ、だめだよ。
「で、ほらっ! 私見せたんだから、大輝くんもっ!」
「⋯⋯見たいの?」
「うんっ!」
間髪入れず、返事が返ってきた。仕方ない、見せてやるか。
『国語 5』
『数学 5』
『社会 5』
『理科 5』
『保健体育 2』
『音楽 3』
『技術・家庭 4』
『美術 3』
『英語 5』
「え⋯⋯。すごっ。私、5なんて取ったことないのに」
栞凛は、尊敬の眼差しで僕を見てくる。オール5じゃないんだし、そんな驚くことじゃないと⋯⋯。まぁ、いいや。
「今のままじゃ100%無理だから、とりあえず、始めるよ」
「え〜——」
「なら帰る」
「やりますっ! やらせてくださいっ!」




