第82話 迷信は信じない
『今日通話しない?』
僕のスマホが震えた。もちろん栞凛だろうけど。
「え、なんで?」
『今日さ、大晦日だし』
そうか。もう、今年が終わるのか。自覚ないなぁ。
僕はベッドに寝転がりながら栞凛に返信していた。
「通話、でいいの?」
僕はそう送信した。いつもならすごい早さで返信が来るのに、なかなか来なかった。
「珍しく、遅いな⋯⋯」
僕は体を起こして、ベッドの上であぐらをかいた。
何度見ても、返信は来ていない。しっかりと、既読には、なっているのに。何も、返ってこない。そこには、なぜか栞凛の返信を待つ僕がいた。
「来ないな⋯⋯」
僕は諦めて、画面を下にしてスマホを置いた、そのときだった。
『ピンポーン』
家のインターホンが鳴り響いた。
誰だ? こんなときに。
「はーい」
下から母親の声が聞こえた。ま、僕は出なくてもいいか。
「大輝! ちょっと来て!」
「はいはい」
下からする母親の声に、僕は従うことにした。
「ん?」
「大輝くんっ! 来ちゃった☆」
「⋯⋯は?」
いや、え? 『来ちゃった』?
「だって、大輝くんが会いたそうだったしぃ」
「⋯⋯そんな、か?」
僕は少し振り返ってみた、けど、やっぱり何もない。いつ僕が会いたそうにしていたのだろう。
「こんなところで立ち話もあれだし、さ、上がって頂戴」
と、栞凛を無理やり中へ引き込もうとする母親。この人も、なんかよくわかんないや。
「じゃあ、行こっ!」
栞凛は僕の手を引っ張って、階段を上っていった。僕の部屋を目指して。
「ふぅ〜! なんか実家のような安心感がだねぇ」
僕のベッドに腰掛けると同時に、栞凛はそんな言葉を漏らしていた。
「そう?」
「大輝くんが詰まってるからかもねっ!」
「⋯⋯?」
どういうことや。意味わからんて。
「よしっ! とりあえず、仕方ないけど勉強しよっ!」
「⋯⋯珍し」
栞凛から勉強の提案をしてくるとは。超、レアなことだろう。
******
「もうすぐ、12時になるよ?」
あと、30分もないぐらい。時間は、12時を指そうとしていた。
「年越しなんだし、おまじない、しよ?」
年越しの、おまじない? なんじゃそりゃ。
「⋯⋯なにそれ」
「え!? 知らないのっ!?」
「いや、知らないから⋯⋯」
ほんとに知らない。年越しと言ったら、そば、ぐらいしか思いつかないなぁ。
「年越しにすると縁起がいいってやつ!」
「⋯⋯そば? あれ、年越し前に食べきらないと逆に縁起悪くなる、って聞いたことある」
「それもそうだけどっ!」
そば。以外には、知らない。初詣、初日の出。何があったかなぁ。
「うーん」
僕はしばらく考えてみた。⋯⋯何も思いつかないのには、変わりないんだけどね。
「なんでわかんないのっ!?」
「だって、知らない、し」
「もう! 答え言っちゃうよ!?」
僕はその質問に、頷いて答えた。多分一生出てこないし。
「手をつなげたまま年を超すと、その人とは縁が切れないらしいよ」
栞凛は自慢げに言って、自分の小指を差し出してきた。
「迷信でしょ、どうせ。僕信じてないんだ」
僕がきっぱりそう言うと、栞凛はわざとらしく笑ってみせた。
「ふ〜ん。じゃあ、信じさせてあげるよ」
「⋯⋯何があっても、多分信用はできない」
「ううん、身を持って、わからせてあげる」
栞凛は何かを決意したようなポーズをとり、表情を浮かべた。
迷信なんて、どうせ嘘なんだろ——。
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。




