第81話 イルミネーション
「ごめん、わかんない」
僕には、理解しがたいことだった。
灯台の上で2人きり、これが——何を差すのか。
「そう言うと、思ってた」
「⋯⋯そ」
僕の口からは、その1文字しか出てこなかった。
「わかんないなら、今じゃなくていっか」
栞凛が静かに呟いた。小さい声、それがなぜか、僕の耳には大きく聞こえた。
「⋯⋯」
何も答えなかった。いずれわかることなのだろうと、直感が物語っていた。
「帰ろっか」
「⋯⋯そうだね」
******
駅では、色鮮やかなイルミネーションで彩られていた。どこを見ても、イルミネーションの光がある。
「綺麗だね」
その雰囲気を作るかのように、雪が降っていた。白い粉が、雲から降り注いでいる。
「うん」
いつもの駅と、今の駅。同じようで、まるで違う。
なぜだか、男女で手を繋いで楽しそうな表情を浮かべながら歩く人たちが、いつもより、多い気がする。
「私も、ああなりたいな」
ああなる? イルミネーションみたいに、輝きたい?
「⋯⋯え?」
僕にはよくわからなかった。どうなりたいのか。栞凛が、何を目指しているのか。
「ふふっ。なんでもない」
栞凛は、意地悪そうに笑みを浮かべて、首を少し傾けた。
その瞬間、僕の心には何かに射抜かれた。僕の心臓は、ドクン、ドクン、と大きくなるばかり。一体、何が起きているんだろう。
「ねぇ大輝くん?」
「ん?」
ニコッと、微笑む栞凛。その微笑みは、僕の心臓に追い打ちを掛けた。大きな鼓動が、さらに速さを増してしまっていた。
「今日は、ありがと。付き合ってくれて」
「⋯⋯まぁ、せっかくの、クリスマスだし」
僕は、すべてをそれで片付けた。『クリスマスだから』
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「こんなに早く出ちゃった。でも、今日がクリスマスだし、しょうがないよねっ!」
私はすごく早く家を出ちゃった。
「あれっ、もういるじゃん」
5時のチャイムが鳴った頃、私は駅に到着した。
そこには、なぜか大輝くんが立っていた。大輝なら、時間ぴったりに来ると思ってたのに。待たせちゃったかな?
「大輝くーん!」
私がそうやって呼びかけたら、大輝くんがこっちに振り向いてくれた。
大輝くんがこっちを見たとき、私の胸を強く打たれた。
大輝くんが、前髪、上げてる⋯⋯っ!?
自然と、顔の温度が高くなっているように感じる。こんなつもりじゃ、なかったのに。
大輝くんが、いつもより、もっとかっこいい。
大輝くん——ほしい。
「大輝くん、かっこいいねっ!」
大輝くんが前髪を上げたら、かっこいいのが他の人にもバレちゃう。でも、自慢したい⋯⋯! 私の彼氏だー! って。
「そんなわけ、ない」
大輝くんは、やっぱり自分を下げる。まぁ、大輝くんらしいっちゃ、らしいけどっ。
「どうして前髪上げてるの?」
私は、何気ないつもりで言った。でも、大輝くんは戸惑っちゃった。
「え? えっと⋯⋯」
「あ、ごめん! やっぱなんでもない!」
こんな特別な日に、大輝くんが困ってる姿なんて、見たくないよ!
「前、喜んでくれた、から」
大輝くんが、すっごくボソボソ言っている。でも、ちゃんと聞こえた。ううん、やっぱ、もう1回聞きたい!
「えっ?」
「⋯⋯なんでもないっ」
大輝くんは顔を赤くして、そっぽを向いちゃった。
「私のために? ありがとっ! 大輝くん、だーいすきっ!」
私はすぐそうやって言った。大輝くん、なんか強がって平静を装って見えるのは、気のせいかなっ? うん、そうだよねっ!




