第77話 お魚さんたち
「はぁ、はぁ、逃げ切ったぁ⋯⋯」
「大輝くん、ひどいっ! 乙女の気持ちを考えないなんて!」
栞凛は顔を前に突き出して、思いっきり頬を膨らませならが、文句を言ってきた。
乙女――かは知らないけど、考えたと思うよ?
「未成年の異性がうまれたままの姿を見せ合うなんか、ありえない」
僕は少し言葉を選んでそう伝えた。
「じゃあ、今日は絶対、一緒に寝てもらうからっ!」
栞凛は僕の手を無理やり引っ張って、ベッドの上に連れられた。
「大輝くん、ほら、こっちおいで?」
と、栞凛は僕を誘惑するような顔で誘い込んでくる。両手を広げて。
――見なかったことにしよう。僕は反対を向いて、壁と向き合った。
「ちょっと!? なんで無視するの!?」
僕はそのまま栞凛を無視して、狸寝入りを始めた。
「もう、照れ屋さんっ!」
栞凛はそう言うと、僕に腕を回してきた。そして、耳元でこうささやく。
「ふふっ――明日、覚悟してね?」
その言葉が耳に入ったそのとき、僕の背筋が完全に凍った。もう、ヒヤッとしたよ。
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「だーいーきーくんっ! 朝だよーっ!」
朝の眩しい日差しが、カーテンの隙間から差し込んできた。栞凛の眩しい笑顔も、僕のまぶたの隙間から入り込んでくる。
「う〜ん」
「おはよっ! さ、早く!」
栞凛はどこか楽しげな雰囲気だった。
「ほら! 今日は水族館でしょ! 行こうよ!」
「⋯⋯うん」
仕方ない。ついていくかぁ。
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「2枚、お願いしますっ!」
水族館のチケット売り場に行くと、栞凛が即注文をした。
「失礼ですが、2人の関係は?」
「友達――」
「カップルですっ! 今日はデートで来ましたっ!」
栞凛が僕の言葉に割り込んで来た。何をそんなに。
栞凛は僕の手を握る力を強めていた。
「それでは、割引をさせていただきますね」
ピピピッと、慣れた手つきでレジを打ち込んでいく。
「それでは、お楽しみくださいませ」
料金を払うと、イルカの絵が描かれたチケットを2枚、手渡された。
「ありがとうございますっ!」
栞凛は輝かしいほどの笑顔でチケット2枚、受け取った。
「さっ! 行こっか!」
栞凛は僕の手を引いて水族館内に入った。
「⋯⋯うん」
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「見て! おっきなお魚さんがいるよ!」
「⋯⋯ジンベイザメだね」
「あ、あっち! たっくさん集まってるよ!」
「⋯⋯あれはイワシ、かな」
すごく無邪気に大きな水槽を眺めている。その姿が、なぜか懐かしい。
「うわっ! なんかニョキって生えてきた!?」
今度は小さめの水槽がたくさん並んでいるところに来た。
「チンアナゴかな。僕は好きだよ」
「え!? じゃあ私も好きー! チンアナゴ、可愛いよねー!」
栞凛と一緒に魚を眺めていると、遠くからこんな声が聞こえてきた。
「イルカショーで〜す! 今からイルカたちがあなたに素晴らしいものを見せてくれますよー! 見ていきませんかー!」
スタッフらしき人が、ちょっと奥の方で頑張って声を張り上げているように見えた。
「大輝くん、行こ?」
「うん。わかった」
僕と栞凛は、手を繋いで、イルカショーを見ることにした。
「水がかかるかもしれないので、カッパもいかがですかー? 1つ100円でーす!」
「2つ、お願いします」
僕は仕方なく200円を取り出して、スタッフに手渡した。
「お買い上げ、ありがとうございます!」
僕は少し頭を下げて、イルカショーの会場へ向かった。




