第75話 喉乾いた
「ねぇ大輝くん。シェイク、飲んでいいよ」
「う、うん」
満面の笑みで栞凛は、ずっと僕を見つめてくる。
「飲まないの?」
「飲むよ」
僕はそれだけ言って、さっき自分で頼んだ商品を口に運んだ。
「いつ飲むの?」
「いつでもいいじゃん」
さっきから、栞凛がうるさい。
「まだ飲まないの?」
「そうだよ」
しばらくして、また同じことを聞いてくる。
「早く飲もうよ」
「⋯⋯飲みたいの?」
僕がそう聞くと、栞凛はビクッと肩を震わせた。
「飲みたいなら、飲めば?」
「⋯⋯ううん。今、じゃない」
「じゃあいつ?」
「いいじゃん。別に」
栞凛、強がって飲まないのか? 別に、全部飲んでくれてもいいのに。
「飲まないなら、僕が飲むね」
と、僕がシェイクを飲もうと、ストローに口をつけたそのときだった。栞凛が狙っていたのは。
「あ、やっぱちょうだい? 喉乾いた」
僕は口に含んだシェイクをゴクッと飲み干した。
「今?」
「うん、今」
栞凛は、さも当たり前かのようにうなずいた。
「なんで?」
「そんなの、大輝くんと、間接キ⋯⋯じゃなくて、喉が乾いたからだよ?」
わかんねぇやつだなぁ。
僕はとりあえず栞凛にコップごと渡した。
「う〜ん! 美味しい!」
栞凛はまだ飲んでもないだろうに、何が美味しいんだ?
「はいっ! ありがとっ!」
満足したような顔で、僕にシェイクを渡してくる。
「ん。ども」
僕はそれを片手で受け取って、またストローに口をつけた。
「⋯⋯あ、ちょ、ちょっと、準備が⋯⋯!」
栞凛は急に顔を赤く染めながら言った。
――準備? ⋯⋯何を?
「ん?」
僕はストローを口に加えたまま、栞凛に目をやった。
「⋯⋯あっ、いや、なんでも、ない」
栞凛は、赤くなった顔を隠すように、手で顔を覆った。
「私のが、大輝くんに⋯⋯」
栞凛は、ボソボソと空気の混じったような声で言った。――何か伝えたいんなら、はっきり言ってもらわんと。
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「ごっちそうさっまでしたっ!」
栞凛はニコニコ満足したような顔で、両手を合わせながら言った。
「満足そうで、何より」
「うんっ!」
と言っても、僕が連れてきたわけじゃないけど。まぁ、細かいことは、いいや。こいつはなぜか満足したみたいだし。
「なんか、大輝くんと食べると、いつもより美味しかったな〜!」
⋯⋯? 味は、変わらないのでは?
「まぁ、みんなで食べるとおいしいって言うから――」
「それほど大輝くんが特別ってことだねっ!」
⋯⋯はいはい。
僕はなぜか熱くなった顔を誤魔化すように、うつむいた。なんでこいつの言葉はこんなにも、響くんだろ。それが不思議でならなかった。
カフェを出て、そこら辺をぶらぶらさまよいながら歩いていた。
「ねぇ、次どこ行こう?」
栞凛が眩しい笑顔で僕に聞いてくる。
「⋯⋯好きに、して」
⋯⋯どこでも、行くし。2人なら。
ふと、そう思ってしまった。僕の思考は、なぜか侵略されている――誰かに。
「じゃあ、明日、いい? 水族館!」
「まぁ。いいよ。暇、だし」
行く。行きたい。水族館、そんなに行かないから――という、名目で。
「じゃあ、あとは大輝くんの家で。⋯⋯あっ! 私の家でもいいんだよ?」
「どっちでも――」
「じゃあ私の家ねっ!」
半ば強制的に決まった次のスポット。⋯⋯まぁ、いいけど。
「えっと、お泊りだから、色々準備してきてね!」
⋯⋯? お泊り⋯⋯?




