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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
文化祭編

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第74話 仕方なく

「大輝く〜ん!」


 栞凛が片手を振りながら、僕の方へ向かって走ってきた。

 そんな格好で走るなんて、転ぶかもしれないというのに。

 

「見て! この格好、どう!?」


 栞凛は僕の前に来ると、くるくる回りながら、僕に自慢してくる。


「⋯⋯いいんじゃない?」


 似合ってる、なんて言えるわけがない。言ってしまったら、どうなることやら。

 消え入りそうな声で、僕は言った。


「なんか、つまんない返事だな〜。まっ、いいけどっ!」


 栞凛は機嫌良さそうに僕へ笑顔を見せつけた。


「じゃあ、デート行こっか!」

「⋯⋯うん」


 デート、か。


「あ、その前に、ん!」


 小首を傾けながら、手を差し出す栞凛。ニコッとした表情で、僕に語りかけてきた。


「⋯⋯?」


 僕が悩んでいるのを見てか、栞凛は口を出した。


「手、つなご? ⋯⋯せっかくのデートなんだし、さ?」


 微妙に頬を赤らめながら、栞凛は言った。


「⋯⋯仕方なく、ね」


 前の僕なら、きっと怪訝な顔を浮かべていただろうに、今では受け入れてしまっている。な(・)ぜ(・)か(・)。


 

 ******



「ここっ! ここのカフェ、すっごく美味しいんだよっ!?」


 栞凛と手を繋いで、栞凛がよく通っていたというカフェにやってきていた。


「お金があったときは、よく来てたなぁ」

「⋯⋯今は無いんだ」


 僕がそう言うと、栞凛との間に沈黙が流れていた。


「⋯⋯ノーコメントで」


 栞凛は少ししょぼんとなりながら、肩を落とした。


「ううん! 今日は、たーっぷり、もらってきたんだ!」


 栞凛は機嫌を取り戻したのか、急に大声になった。


「よしっ! それじゃあ、レッツゴー!」


 栞凛は手をグーにしながら片手をあげた。



 ******



「ねぇ、大輝くんは何が食べたい?」


 栞凛はメニュー表を独占しながら僕に聞いてきた。メニュー見てないのに、わかるわけない。


「私は決まったよ。大輝くんは?」

「⋯⋯メニュー、まだ見てない」


 栞凛は一瞬、ポカンとしたような表情になったが、すぐに我に返った。


「あっ、ごめーん!」


 そういいながら栞凛は僕にメニュー表を手渡した。


「ん、ども」


 僕はメニュー表に並ぶ4桁の数字を睨みつけながら、僕の財布と相談する。

 ⋯⋯どれも、たけぇ。全部4桁以上って。

 

 僕はその数字に少し頭を悩ませていた。すると、1つだけ、僕にはすごい存在感を放っているメニューがあった。


 3桁⋯⋯だと!?


 僕の中ではちょっとしたお祭り騒ぎが起こった。


「決まった」

「わかった! あ、すみませーん!」


 栞凛はちょうど近くを通りかかった店員さんを呼び止めた。


「あ、はい! なんでしょうか?」


 メモ帳とペンを胸ポケットから取り出し、こっちに向かってくれた。


「えっと、これと、これ、お願いします!」


 全部、栞凛が言ってくれた。すごく助かる。


「以上でよろしかったでしょうか?」

「うん! ありがとうございましたーっ!」


 栞凛は店員さんにお礼をしていた。⋯⋯偉いなぁ。


 

 ******


 

「お待たせいたしました」


 丁寧な口調をしながら、僕らの目の前に頼んでいた商品を置いてくれた。


「それと、お客様。こちら、当店からのサービスです」


 そう言いながら出されたのは、懐が悲鳴をあげそうなシェイクだった。そのシェイクには、たった1本のストローしかなかった。


「当店では、カップルでお越しのお客様限定で、シェイクのサービスをしています。それでは、ごゆっくり」


 少し頭を下げると、すぐに立ち去ってしまった店員さん。

 目の前には、期待を込めたような目をしている栞凛。何を考えているのやら。


「だーいーきーくんっ!」


 ニコッと、ただ、どこか逃げられないような笑みを浮かべながら、栞凛は見つめてきた。

 

「――カップル、だってよ?」

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