第61話 出し物決め
「今日は文化祭の出し物決めるぞー」
先生が、椅子に座りながら言う。
「なんかやりたいのあるやつ、黒板に書いてけー。15分時間とる」
ピッと、先生はタイマーをスタートした。
「メイド喫茶やらね?」
「うわ、めっちゃいいやん!」
「かわいいやつにメイド服着せればめっちゃいいんじゃね!?」
どこかの男子たちが、すご〜く、楽しそうにお話している。
その中で、なぜか僕は、男子の視線を感じた。
「栞凛さんとか、めっちゃ似合うと思うんだ!」
どっかの男子が、僕の方を見て言った。⋯⋯えっと、何が言いたい?
「私は⋯⋯大輝くんが喜ぶなら、全然着る、けど⋯⋯?」
僕が1人で勝手に悩んでいたら、隣から声がした。
宮下さんは、ちょっとあざとい風に言う。
「あ、いい忘れてたが、自由に席立って話しかけ行っていいぞー」
僕が席を立つと、それに合わせて宮下さんも立つ。僕が座ると、宮下さんも座る。
「ついてくる気?」
「うん」
即、返事が返ってきた。
「どうせ、あの子のところに、行くんでしょ?」
⋯⋯まあ、そうだけれども。
どうやら、僕の考えは見透かされていたらしい。
「ふふっ、わかりやすいんだから」
宮下さんは、口元を手で覆いながら、すごくわざとらしく笑った。
「⋯⋯」
僕は何も答えず、机で突っ伏しているあいつのもとへ向かった。
「なぁ、おい⋯⋯」
机に伏せていた栞凛は、僕が話しかけようとすると、立ち上がってどっかへ行ってしまった。
「どこ行くんだ、あいつ⋯⋯」
僕は席に戻ろうと、後ろを向いた。そこには、なぜか勝ち誇ったような顔をした宮下さんがいた。
「ふふん! だーくんは私にふさわしいのねっ!」
******
『ピピピピッピピピピッ』
タイマーの音が、教室に響き渡る。その音と同時に、みんなは一斉に席へ座った。
「何か、案あるやつー、手あげろー」
先生はすごく棒読みで、チョークを持った。
「はいはいはい!」
すごくうるさく、手を上げているやつがいる。
「いいよ、勝手に言ってけば」
「メイド喫茶!」
「ん、メイド喫茶なー」
そう言うと、一瞬で教室に上がっていた手は下ろされた。
「なんだ、メイド喫茶しかないのかよ」
先生は少しさびしそうに言った。
「ま、なんも意見でないから、メイド喫茶で決定なー」
先生がそう言い終わると、教室に奇声が響く。
「おおおおおお!」
「よっしゃああああ! 可愛い子に着せるぞおおお!」
「静かにー。他のクラスまだやってるからなー」
メイド喫茶か⋯⋯。喫茶店って、どんな感じなのかな。行ったことないし、わかんねぇや。
******
その日の放課後、早速準備が始まった。
僕は、終始何をしていいのかわからず、ただみんなを眺めていた。
「これで、とりあえずいいかな。必要なものは、集まったから⋯⋯」
すげぇ、クラスの陽キャ男子たち、めちゃくちゃ引っ張ってくれる。楽だ。
「あ、買い出し行って来い、そこの暇そうなやつ。彼女さんと一緒に、な?」
彼女⋯⋯? 僕には一切関わることのない人種だ。
僕がポカンとしていると、男子軍はさらに声を上げる。
「恥ずかしがってんじゃねぇよ? もう隠しても無駄なんだよ」
僕はされるがまま、廊下に出た。廊下には、栞凛も突っ立っていた。
僕が栞凛へ視線を送っても、そっぽを向かれてしまう。
「⋯⋯行きたくないなら、いいよ。1人で行くから」
僕は、そのまま早足で歩いた。後ろからついてくる、小さな足音をも無視して。




