第6話 記憶にないが?
僕は栞凛と話してる暇なんかなく、塾の中へ急いだ。
ふと後ろを振り返ると、笑顔で手を振っている栞凛がいる。
僕はそんな栞凛を無視し、前を向いた。
「はぁ。わけわかんねぇ」
僕はため息を吐いた。
自分の席につくも、つい窓の外を見てしまう。
「(あいつ、さすがに冗談だよな?)」
冗談だと思う。そう思いたい。うん、そう思っておこう。
僕は気にしないことが正解だと考えを改めた。そのおかげか、僕は授業に集中できた。
「(ふぅ。終わった)」
僕は道具をカバンにしまう。机の上にある消しカスを集め、ゴミ箱へ捨てた。
僕はスリッパを棚に戻し、自分の靴を手にとった。
「あ、ありがとうございました」
誰にも聞こえない、空気の混じったような声で言った。
「お腹空いたなぁ。ご飯なんだろう?」
僕は独り言をつぶやきながら歩き始めた。その真後ろをついてくる足音が聞こえる。
「やっと出てきた! 私ちゃんと待ってたでしょ?」
確かにそんなことを言っていたなあと思う。栞凛のことは完全に頭から抜けていた。
僕はそんな栞凛を半分開いてない目で見た。
「なんでそんな顔するの!? 私、待ってたでしょ?」
「非効率、すぎる。なぜこの2時間で、掃除を進めておこうと、思わないのか、僕にはわからない」
僕は歩く速度をあげた。こんなやつと一緒に歩くなんて論外だと思ったからだ。
「ねえ、連絡先。さっき約束したもんね!」
僕は塾の前のことを思い出す。そんなこと、言っただろうか。
まったく覚えていない。いつ言ったのか、今作った嘘なのか、まったくわからない。
「覚えてない」
僕は正直に小さくつぶやくと、小走りをする。
「あ、待ってよ!」
チカチカの信号機は赤になるのをやめなかった。
僕だけを通し、栞凛を止めた。ファインプレーだと思う。
「ふぅ。1人になれた」
僕は小走りをやめなかった。おそらく行きよりも速いだろう。
******
「やっと、逃げ切った」
僕は栞凛から逃げてきた。追いつかれるだろうと思っていたが、意外とそうでもなかった。
そう思いながら、僕は玄関の扉を開いた。
「ただいまー!」
「おかえり。遅かったね。ご飯は机の上にあるから、勝手に食べて」
お母さんだ。お母さんはそう言うと、ソファに横たわり、テレビを見始める。
「いただきまーす」
「あんた、どこで遊んできたの? 今日帰り遅かったじゃない」
僕はお母さんのその言葉に、少しドキッとした。
「え、別に、なにも」
あからさまな嘘をつくが、あまり追い返してこない。
「あらそう? 何もないなら別にいいんだけど」
お母さんはそう言うと、またテレビに集中した。どれだけ面白いのか、僕にはわからない。
僕はご飯を急ぎ足でかけこんだ。
急いで茶碗を流しに入れる。ついでに、自分の茶碗を洗う。
うちのルールは、使った皿は本人が片付けるっていうルールだからだ。
僕は、急いで2階に上がった。
「宿題やらんと。明日怒られる」
僕は、そうつぶやくが、少し止まる。
「(宿題ってワーク、だったよな? もう全部終わってるな)」
ワークはもう完全に制覇している。なんなら3周目だ。しっかりとノートにすべて終わらせている。
「今日ぐらい、いいか」
僕はそうつぶやくと、布団を敷いた。
「(寝て、脳に整理してもらわないとな)」
僕は布団に潜り込み、目を瞑った。
******
気付いたときには朝が来ていた。
「よし、行くか」
僕はすべての支度を終わらせて、靴を履いた。
「行ってきます」
普通の声で言う。今回は聞こえただろうが、返答はなかった。
「あ! やっと出てきた!」
栞凛はスマホをしまい、こちらに向かってくる。なぜスマホを持っているのだろうか。




