第5話 あと5分な
「あ、あった〜! 160cmだって!」
「160cmか。わかった」
僕は栞凛が服のサイズを探すまでの間、近くの服をサイズ別にわけていた。
「大輝くんさぁ、私が目の前で脱いでるってのに、本当に興味ないんだね」
「話してるだけで時間の無駄だ。手を動かせ」
僕は栞凛の話には一切答えなかった。興味がないのは事実だが。
「とりあえず、140cm以下のやつはゴミだ」
僕は問答無用で段ボールに突っ込んでいく。
「あ! それ好きだったやつ!」
僕が睨むと、すぐに引き下がる。
「お別れしないと、ねえ」
意外と扱いやすい性格だと思った。
「まずはサイズ別にわける。で140cm以下は全てこの中」
僕は丁寧に栞凛に説明した。これすらも時間の無駄だと思ったが、これをしない方が時間の無駄になると判断した。
「で、サイズってどこに書いてあるの?」
「大抵は首元だ。見えなかったら自分の体で試せばいい」
僕は説明しながら作業も進めている。口と手は完全に切り離されているようだった。
「あと5分が限界だ」
ようやく床の一部分が見えてきたところで、僕はそう言った。
最低でも5分前には塾につきたい。カバンを家に置いてそこから塾へ向かうと考えると、これぐらいが妥当だろう。
「えー、まだ30分以上あるのに?」
栞凛は文句を言うが、僕はそんなこと気にしない。
「30分しかねぇんだよ。まずカバンを家に置き行くところからだからな」
さすがの僕でもそろそろ栞凛と話すのに慣れてきた。
「カバンだけなら、置いてっても、いいよ?」
僕はそれを一瞬で否定する。
「無理。こんな汚部屋にカバンを2時間以上放置したら、腐るどころじゃ済まないだろ」
「私の部屋って、汚部屋なの?」
僕はその返答に驚きが隠せなかった。
「これを汚部屋と言わずしてなんと言う?」
「え? 潔癖症?」
これを潔癖症が見たら発狂で済めばいい方だろう。僕は反応しないことにした。
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「あ、5分経った。もう行く」
あっという間に過ぎた時間に少々驚いている栞凛がいる。
僕は問答無用で扉を開き、栞凛の家を出た。
「あ、私も行く!」
僕はその言葉には何も返さず、少し早歩きで家に向かった。もう少し早く出ればよかったと思う。
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「ふぅ、これなら間に合うか?」
そう言いながら僕は家の扉を開いた。
自分の部屋へ駆け足で上がり、スマホと塾の宿題等を持ってまた家を出る。
そこまでの時間は2分もかかっていないだろう。
「ここから分速100mで歩けば8分前にはつく計算になるな」
「あ! 出てきた!」
僕の前を横切ったのは正真正銘、栞凛だった。
「ついてきたのか? 僕はもう行く」
そっけなく言って僕は歩き始めた。
「ねえ、スマホ持ってきた?」
「一応持ってる」
僕はそこで止まった。信号につかまったのだ。
「今チャンスじゃない? ほら、連絡先⋯⋯」
栞凛がしゃべっている間に、もう信号は変わっていた。
「あ! ちょっと! あと歩くのめっちゃ早くない?」
文句を垂らしながらも僕についてくる栞凛がいる。僕はそんな栞凛などガン無視して歩き続けた。
後ろも一切振り返らずに、僕のペースで歩く。
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そして、塾へついた。僕が入ろうとすると、栞凛は僕の腕を掴んできた。
「じゃあ、約束だけ、して! 塾終わったら、連絡先交換、ね!」
かなり息切れしてるのか、言葉がとぎれとぎれだった。
「はいはい」
ただ僕は腕についた手を振り払うのに必死で、内容はほとんど頭に残っていない。
ただそこには、喜んでいる栞凛がいた。
「ふふん! 連絡先〜!」
なぜこんなに喜んでいるのか、僕にはわからない。
「じゃあここで待ってるね!」
栞凛がそう言ったとき、思わずこんな言葉が喉を通った。
「は?」




