第58話 学校での彼女
後日、僕は3人で図書館に向かった。いや、――向かわされた。
「大輝くんっ!」
栞凛はなぜか、僕の左腕に抱きついてくる。
「だーくんっ!」
栞凛に対抗するように、宮下さんまで抱きついてくる。
「離して。暑苦しい」
「えーっ! しょうがないなぁ!」
「だーくんったら、恥ずかしがり屋さんっ!」
難しいやつらだな⋯⋯。
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図書館にて。勉強をしようとしてくれない2人。
「ねぇ〜大輝くんっ!」
「だーくんっ」
僕に近づいてこようとしてくる。
僕はわかりやすいようにため息をついた。
「⋯⋯図書館だから。静かに」
図書館だということを知らないのか、ただ常識がないだけか、とにかく僕に構ってくるのが、うるさい。
「ちぇっ」
「ぷーっ」
2人とも、わかりやすくふてくされている。頬を膨らませ、少し睨みつけられるような視線を送られる。
「⋯⋯はぁ」
そんな2人に僕は、ため息で対抗した。⋯⋯まぁ、無駄なのだが。
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ついに勉強会を終え、ようやく帰宅した。家までついてこようとする2人を、なんとか追い払いっての、帰宅だった。すごく、長い戦いだった。
僕はそんな疲れを誤魔化すようにベッドにダイブし、枕に顔を埋めた。
「⋯⋯なんか、いつもより、疲れた、な」
今日はいつもの比にならないぐらいに疲れていた。すごく疲れていた。なのに――。
「でも⋯⋯」
思わず、僕の口からは笑みがこぼれた。
「なんか⋯⋯よかった、かも」
すごい疲れた。疲れさせられた。なのに、不思議と苛立ちはない。
「なんで、なんだろ」
僕は、それが不思議でならなかった。
栞凛がずっと『教えて』とうるさく求めてきたり、宮下さんが僕をなぜか引き留めようとしたり。2人が、なぜあんなに僕に構ってくれるのか、2人の利益はなんなのか。僕にはわからない。ただ、2人といると、なぜか楽しいと感じてしまう僕がいた。
「ごはんよー!」
下から、母親の声が聞こえる。
「⋯⋯はーい」
僕は枕に顔を埋めながら返事をした。
翌日。
僕は1人で、学校に向かった。
「珍しいな⋯⋯あいつがこないなんて」
今日は、珍しくいつもと違った。いつも来ているあいつ⋯⋯栞凛が、ここにいないのだ。
「⋯⋯どうせ寝坊か」
僕は仕方なく、置いていくことにした。
「⋯⋯はぁ」
思わずため息が漏れてしまっていた。完全に、無意識のうちのものだった。
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「あっ⋯⋯席替えしたのか」
この間、2度目の席替えをしたばかり。栞凛とは、離された。代わりに、僕の隣には、宮下さんになっていた。
「だーくん! 改めて、よろしくねっ!」
渾身の笑顔であろう表情で、宮下さんが話してくる。周りを見渡すと、やっぱり栞凛の姿は遠い。
栞凛は、机に突っ伏していた。わかりやすく、落ち込んでいるように見える。
「何してんだ、あいつ」
宮下さんは、そんな僕の視線を覆い隠すように、僕の前に立ちふさがってきた。
「だーくんっ、いっぱい、お話しようね?」
可愛らしく小首をかしげながら、宮下さんはそう言った。
「⋯⋯う、うん」
宮下さんは、そんな僕の返事に、わざとらしく微笑む。何か、違和感が、あるような⋯⋯。
「やった♪ 楽しみだね?」
もう、まるで、強制されているような、そんな表情だった。
「ちょ、ちょっと、トイレ」
僕は、そういう名目で、席を立った。




