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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 宮茉紀 古治
2学期開始編

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第54話 教室の、3つの影

「さっきから、ずっと聞いてないじゃん。もう帰ろうかな」

「だめ! ぜっっっったい、だめ!」


 なんでや。僕の話を聞いてないくせに。


「さあ、早く、教えなさいっ!」

「なんでそんな上から目線なのよ」

「⋯⋯っ、いいのっ!」


 僕の話を無理やり遮るように、首を振っている。


(はあ、もういいや。適当で)



 ******



「自覚あるだろー。まだ終わってないやつは居残りなー」


 やる気のなさそうな、どこか残念そうな口調で先生が言う。

 隣には、開いた口が塞がらなくなっている栞凛がいる。


(結局あのあと、こいつは居眠りして、僕は呆れて帰ったんだ。そうなるに決まってる)


「さようならー!」


 全員が挨拶を済ませ、教室を出ていく。

 僕もそれについていきたかった。それができなかった。


「大輝くんは、だめだよ? 居眠り、ね?」


 腰に手を回され、逃げられなかった。


「えぇ⋯⋯」


 僕は周りを見渡し、助けを求めようとした。

 どうせ――誰もいない教室に。


 誰もいない――はずだった。こいつは除いて。


(珍しいな、真面目そうな子なのに。えっと、名前なんだっけか⋯⋯)


「よろしくお願いします」

「あ、あ、ど、どうも」


 軽い会釈だけして、僕はすぐに目をそらした。

 なんか、獲物を見るような目で見られてたような気がするんだけど⋯⋯、気のせい?


「えぇっ! 小春(こはる)ちゃんもいるの!?」


(あ、思い出した。宮下小春(みやしたこはる)だっけな)

 

「うん⋯⋯」

「珍しいね、真面目な小春ちゃんが、宿題やってないなんて」


 栞凛が興味津々で宮下さんに近づいていく。こいつは何がしたいのだろうか。


「え、どうしたの? なんかあったの?」

「ううん。何も。お父さんが1ヶ月ぐらい海外出張が決まっちゃって。で、夏休みだから家族みんなで行くことになったの」

 

 宮下さんは、淡々に話を進めている。


「だけど、宿題を家に忘れちゃって。一昨日帰ってきたばっかなの」


 偉いよ。あなた。この、ただサボってただけのやつに比べたら、全然マシ。


「じゃあ、今日は3人で居残りだねっ!?」

「なんで僕まで巻き込むのさ⋯⋯」


 仲良さそうな2人が一緒なのだ、僕ぐらい帰っても変わらないでしょ?


「いや、2人いるなら、いいかなって」

「だめでしょ!」

「だめ、です!」


 え、今、なんて⋯⋯。


「だめ、です!」


 大事なことだから2回言わないと、って、え?


「えっと、宮下、さん?」


 僕が恐る恐るたずねてみる。

 だが、本人は何も違和感はないようだった。


「どうかしましたか?」


 にこやかな笑顔で話しかけてくる。


「ストーップ! 今すぐ始めないと、間に合わないよ!」


 こいつはもう完全アウトやろ。あと300ページぐらいあるなんて、終わるわけない。

 栞凛は僕らの会話を遮るように間に入り込んできた。


「そう、ですね⋯⋯」


 宮下さんは、少し肩を落とした。⋯⋯ん? なんでだ?


「じゃあ、ここ教えて!」


 ワークをまだ開いてもないのに、栞凛が言った。せめて問題を見てからにせいや。


「あれー? ワークどこ置いたっけなあ?」


 栞凛がカバンをガサガサと漁っている。


「あ、あの、私にも、教えてくれませんか?」


 宮下さんが、僕にしゃべりかけてきた。

 

「あ、あぁ、うん。いいけど⋯⋯」

「ありがとうございます!」


 と、素直に頭を下げる宮下さん。偉い。

 流れで了承してしまった。まあ、栞凛に教えるよりは、断然価値は高いだろう。


「あーっ! 私が先に予約したのにーっ!」


 栞凛が宮下さんを睨みつけている。

 宮下さんはそれに対し、恐れることを知らなかった。なんなら、勝ち誇ったかのような顔を見せていた。

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