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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 宮茉紀 古治
2学期開始編

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第53話 300ページ。うん。

「で、どうやって取り出すの?」


 栞凛いわく、いつ爆発しても文句を言えないクローゼットに入っているかもしれない、だそうだ。


「それを、天才大輝くんが考えてくれるんだよ!」

「天才はそもそもこんな詰め込まないよ」

「いるかもしれないでしょっ!」


 いたとしても、どうせごくわずかだろう。少なくとも、少数派ではあると思う。


「それはいいとして、考えてよっ!」

「自分で考えるものでは?」


 僕に任せたら、このパンッパンに膨れ上がったこのクローゼットを開けるしかできない。


「もーっ! 後悔しても知らないよ?」


 と、栞凛は半分開きかけているクローゼットの取っ手に手をかけた。


「ちょっと待って。離れておくから」

「離れるなんて、絶対許さないもんねー!」


 部屋から逃走しようとする僕を、栞凛は止めた。


「もう、知らないからっ! えいっ!」


 扉が開くのを今か今かと待ち望んでいたのが、雪崩になって降ってきた。


「うわわわわっ!? なんか倒れてきたああああ!?」

「ほら、いわんこっちゃない。こんなのわかりきってたじゃんか」


 栞凛は当然の報復を受けてもなお、元気でいた。


「じゃあ、お宝探しね。ワーク、探して」

「え!? お宝探し!?」


 中々にチョロいな、こいつ。



 ******



「あったーっ! 私の勝ちっ!」

「ヘーヨカッタネー」

「なにそれ!? 棒読みじゃん!」


 なんや、別にいいやろ。

 何もかもを面白おかしいように処理すんのか、こいつ。


「ちょっとワーク貸して」

「解いてくれるの!? もちろん!」

「なわけねえだろ」


 栞凛からワークを受け取ると、全教科答えを抜き取った。


「あーっ! 窃盗! 泥棒だーっ!」


 そうか、そうか。そういうんだな、こいつは。


「じゃあね。泥棒は大人しく帰りますよ」

「だめーっ! 泥棒じゃないでしょ!」


 さっきと矛盾しとるよ。もう、言ってることですらもう右往左往してるやんけ。


「ま、それはいいとして。本当に白紙じゃん」


 僕は栞凛のワークをパラパラとめくりながら言った。


「名前すら書いてないし」

「だってどうせやらないかなーって!」


 栞凛は自信満々で答えた。

 せめて危機感持とうよ。少しでもいいからさ。


「えっと、確か、今日まででどの教科も60ページぐらいまでは進んでるはずなんだけどなあ」


 僕の記憶が確かなら、大体そのくらいだ。


「えっと、じゃあ、60×5で、300ページもあるのーっ!?」

「今までやってきてないからだろ」


 冷静に突っ込んだ。


「ねえ、ワークが見つかったのはいいんだけど⋯⋯」


 僕は外部からの刺激で破裂したクローゼットを見る。

 中身が散乱していて、何年も放置されているようだった。


「ん? 片付けてくれるんでしょ?」

「えー⋯⋯」


 僕は断ろうとしたが、一瞬止まった。


(これ、片付けてればこいつに教えなくて済むのか⋯⋯?)


「いや、うーん、教えなくてもいいなら、いいけど」

「えーっ! じゃあいい!」

「⋯⋯うん」


 僕はその散乱した洋服たちを踏んづけて、栞凛の元へ向かった。


「じゃあ、まずここ! 数学からっ!」

「はいはい」


 僕は白紙のワークに解説を始めた。

 栞凛はその僕の説明を⋯⋯、聞いているのか?


「え、聞いてる?」

「⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯え?」


 僕が確認のため、栞凛の方を見ると、目が合った。


「え? 聞いてるよね?」

「あ、え、あ? も、も、もちろん、だよ!」


 僕は、目を泳がしている栞凛を、半分開いてない目で見つめた。


「⋯⋯嘘だよね?」

「⋯⋯」

「⋯⋯どっち?」

「⋯⋯聞いてるよ? でもさ、大輝くんの顔がかっこよすぎるのも悪いと思うよ?」


 見苦しい。実に見苦しい。


「僕をかっこいいなんて、見る目ない」

「ううん!」

「そんなこといいから。続きやるよ」


 これがどれたけ続くのか⋯⋯僕は、知るよしもなかった。

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