第50話 大量の宿題
「久しぶりっ!」
夏休みが明け、2学期が始まった。
「昨日も会ったじゃん」
「いいのっ! 学校で会うのは、久しぶり、ってこと!」
と言っても、ここは僕の家の玄関前なんですがね。
めんどくさいし、触れないことにしよう。
「で、宿題は? やったの?」
「⋯⋯ひゅ〜」
聞きたくもない口笛がやってきた。
こいつ、マジで口笛下手すぎる⋯⋯!
「やってないんだ」
栞凛はそれに反論してきた。
「やろうとはしたもんっ!」
「でもやってないじゃん」
栞凛は一切反論できずに、俯いた。
マジでやってないのか、こいつは⋯⋯。
「だってえ、大輝くんが、私を呼んだから、でしょお?」
いや、逆ですよね? 僕行きたくない側の人間なんすけど?
栞凛はダサすぎる言い訳を重ねる。
「それにさ、私には予定がパンッパンにあったから! 仕方ない! そうだよ、うん!」
「⋯⋯はぁ」
深い深いため息が漏れてしまった。
もういいや。無理だよ、こいつ。諦めよう。
******
「宿題回収するぞー!」
僕はいたずらっぽく隣を見てみる。
「⋯⋯」
めちゃくちゃ姿勢よく、もう座るときの理想形のような座り方だった。
「⋯⋯ぷっ」
思わず笑ってしまった。
いやだって、こいつ、シュールすぎるんだもん。
「⋯⋯もうっ! 笑わないでよね!」
栞凛は一瞬、こっちに顔を向け、小声でそう言ってきた。その後、プイッと僕から視線をそらした。
「これも成績に含むからなー。忘れた人は明日までに持ってこいよー」
おそらく栞凛だけに言っている。先生は、完全に栞凛の方向を向いていた。
「⋯⋯」
口を半開きにしたまま、白目を向いていた。
もう、キャパオーバーかよ、こいつ。
「はぁ⋯⋯」
わかりやすいため息をつく。やれやれと思うばかりだった。
******
「お願いします! 写させてください!」
栞凛が珍しく頭を下げてまで僕にせがんでくる。
「勉強は自分でやるもの。まあ、教えるぐらいなら、いいけど⋯⋯」
「ほんとにっ!? じゃあ、さっそく行こ!」
現在時刻は12時前。これ、間に合うのか⋯⋯?
僕の心配をよそに、なぜか元気な栞凛だった。
「はい、ついた!」
意外とすぐに栞凛の家についてしまった。
「さっそく⋯⋯、レッツゴー!」
栞凛は意気揚々と扉を開き、勢いよく中へ入っていった。
「はぁ⋯⋯」
そのため息に、どれだけの思いが詰め込まれているのか、僕にもわからない。
ただ、とにかくめんどくさかった。
「早くっ!」
「はいはい」
雑に返事を返し、僕は重たい足取りで家の中に入った。
「ねえ見て! めちゃくちゃきれいになったでしょ!?」
栞凛の部屋の扉を開け、僕に見せびらかしてきた。
「あぁ、まぁ、前よりは」
確かに、きれいになっていた。クローゼットは閉まってるし、床は光沢を出している。
いやまあ、これが当たり前なのだが。
「なにそれ!? 素直に褒めてくれればいいじゃん!」
褒められるわけがない。こんな今にも破裂しそうなクローゼットを見せつけられれば。
「だって、どうせここ開けたら――」
「あー! そこはだめー!」
「開けないよ。開けたくもないし」
ここを開けたとき、どんな悲劇が起きるのかは⋯⋯想像しないでおこうか。
そこで思考を放棄した。
あとは、この下とか。
「あーっ! そこもだめえ!」
ベッドの下。なんか、色々はみ出ている気がするけど、気のせいにしておきたい。
「見たくない」
「まあ、大輝くんが、どうしても、って言うなら、見せてもいいけど?」
こいつ、話聞いてねえぞ。こちとら見たくない言うたねん。
「さて、写させてもらうぞーっ!」
「教えるだけね?」




