第48話 僕の駄作
「やっぱいいね!」
「あ、あ、うん」
主語がないよ。そのさ、僕じゃなかったらこれ勘違いしてんのよ。自分に言われてる!? ってなっちゃうから。
「あ、もうみっしつ⋯⋯じゃなくて、観覧車終わっちゃったね」
栞凛は少ししょんぼりとし、肩を落とした。
「もう帰る?」
僕は帰りたい。今すぐ帰りたいよ。
僕がそう聞くと、さっきのしょんぼりはどこへいったのか、背筋を伸ばした。
「大輝くんは? 帰りたい?」
「帰りたい」
僕は即答していた。なんか、勝手に口が喋った。
「じゃあ、帰る? もうすることもないしさ!」
「帰る」
そのとき、あたりには少し恥ずかしい音が響いた。
『ぐ〜』
腹だ。僕もそろそろお腹が空いたなとは思っていた。
「ああああああああああ!? ちょっとおおおおおおお!? うるさいいいいいいいい!」
その声が1番うるさいと思うんだけど、違う?
栞凛はお腹を抑えてしゃがみ込んだ。
「僕さ、そろそろお腹空いたんだよね。ご飯でも食べる?」
と、一応気を使って、僕がお腹空いてることにして、昼食の提案をした。
「え⋯⋯。う、うん」
少し赤面した顔で、静かに頷いた。
「何がいい?」
「え、えっと、うーんと、じゃあ、逆に何がいいの?」
何がいいと言われましてもよ。別に食べたいものがないから聞いてるのよ、こちらは。
「別になんでもいいよ。ラーメンとかそういうのでも」
本当になんでもいい。僕自身別に好き嫌いがあるわけじゃないしさ。
「えー、じゃあ、大輝くんの手料理が食べたいな!」
僕の手料理? そんなんでいいの?
僕は驚き、顔を少々引きつらせた。
「え、だめかな?」
「あ、別にいいよ。けど、本当にそんなんでいいのかなって」
「いいに決まってるじゃん!」
あんな駄作、誰が食べたいものか。僕には理解不能だった。
「まあ、それでいいなら、いいけど⋯⋯」
「けど?」
いいんだよ。いいんだけど、なんか、なあ。
「いや、別に」
「じゃあ決定ね!」
「あ、まあ、うん」
僕は別にいいんだけど、こいつ、本当にいいと思ってんのか?
「どうしたの? 早く帰ろうよ!」
僕の腕を掴んで引っ張ってくる。
「あ、違う違う。こうだった」
「ん? 何が?」
僕は栞凛に手を奪われた。
指と指の隙間に指が入り、絡まっていった。
「こうね! さ、行こっか!」
栞凛はるんるんで、跳ねるように歩き出した。
「あ、うん」
僕は返事だけして、栞凛に引っ張られながら歩いた。
******
「あ、そうだ。僕は何を作ればいい?」
帰りの車の中で、僕は栞凛に聞いた。
「うーんと、どうしよっかな」
栞凛はグミをつまみながら上を向いて考え出した。
「何なら作れるの?」
何ならって、材料とレシピさえあれば、作れるんじゃね?
「基本的なのは、まあ」
別に、高価なものとか、不可能なものとか以外なら行けるでしょ。
「じゃあ、肉じゃがとかどう!? あ、あと、えっと、チャーハンとかさ!」
「それだけでいい?」
「え、えっと⋯⋯」
その後、栞凛の怒涛のラッシュに、少し驚いた。
「⋯⋯ぐらいかな!」
「食べ切れるなら、いいんだけど、え?」
いくらなんでも多すぎる。さすがに限度ってものがあるでしょ、こういうの。
「いいじゃない。別に」
突然、運転席から母親が口を出してきた。
「毎日、ちょっとずつ、食べていけばいいわよ」
「あ、確かに!」
栞凛が、すんごい笑顔で賛同していたのだが。
⋯⋯いや確かにて、何言っとるんだか。




