表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
夏休み編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/45

第44話 軽々しい嘘

「じゃあ〜、ちょっと手伝ってくる〜!」

「⋯⋯」


 僕は、何も答えなかった。止めもしなかった。


「⋯⋯?」


 栞凛は、こっちを振り返りながらリビングを出ていこうとしている。


「いいの? 止めないの?」

「⋯⋯」


 僕の口が、開くことを許さなかった。許せなかった。


「行っちゃうからね?」

「⋯⋯」


 言葉が、出ない。喉を、通ろうとしない。


「沈黙⋯⋯じゃあ、いいってことだね!」

 

 栞凛はそう言いながら、僕に確認をするようにリビングを出ていった。


「なんで、なんだろ」


 なぜか、拒否しきれない。なんか、脳に止められている、そんな気がする。

 僕はその場に立ちすくんだ。


「大輝! これ、冷蔵庫入れてちょうだい!」


 玄関の扉を開けた音とともに、母親がそう言っていた。

 

「は〜い!」


 それに、栞凛が返事をした。僕は何もしてないからね?


「ちょっと大輝! 来なさい!」


 栞凛がそこにいるじゃないすか。そいつじゃだめ?


「え? うん」


 僕は急いで手を流し、泡をとった。

 その後、駆け足で玄関に向かった。



「大輝、彼女さんに手伝わせるんじゃないよ」


 思考が停止した。

 ん? 彼女? 彼女なんて、まだいないけど?


「⋯⋯あ、あー⋯⋯」


 腫れてるような赤い顔と目が合った。


()()じょ()()()、だってよ?」


 完全に勝った気でいるだろこいつ。さすがに勘違いが過ぎている。

 栞凛と僕の間には、少し、時間に空白が訪れた。


「⋯⋯」

「⋯⋯」


 しばらくの沈黙の後、僕が口を開いた。


「あっそ」


 そっけない返事だった。ただ、これ以外に、返す言葉が見当たらなかった。


「なにその返事。つまんな〜」

「ふーん」


 だからなんや。別に返事に面白みなんていらんやろ。芸能人じゃあるまいし。

 こいつの思考、本当に理解できない。僕とは違う世界線で生きているだろ、もう。


「せっかくの夏休みなんだから、遊びにでも行ってきたら?」

「いいねー! 行こ〜!」


 僕の母親の提案に、すぐに便乗しやがるぞ、こいつ。

 

「大輝、彼女さんのお母さんにはもう話したの?」

「はな、してはないんじゃ⋯⋯」


 話しては、ない。向こうが勝手に勘違いしただけで、僕はなにも言ってない。

 僕の空気のような声の直後、鼓膜を震わせるような声が聞こえた。


「大丈夫! もう話したから!」

「あらそう? ならいいけど」


 こいつ、嘘つきすぎるよ、マジで。⋯⋯嘘ではないのか?


「遊園地でも行ってくればいいんじゃなあい?」


 母親は天女のような笑みで、栞凛に提案している。その笑顔は、僕には悪魔のような笑顔にしか見えないが。


「じゃあ、連れて行ってあげるわよ」

「いやいや、いいから! はい、どっか行って!」


 僕は母親を無理やり家の中に押し込もうとした。


「ちゃんと運動してる?」


 母親は、心配そうな顔をしてこっちを見てくる。

 いやしてないけどね?


「してないよ?」

「運動しなさいよ。あんた非力すぎるわよ」


 それはね、すごく自覚ある。なんか、握力ダメダメだった気がするもん。


「ねえ、私さ、お小遣いさ、大輝くんのために使っちゃって〜」


 ⋯⋯? ⋯⋯!? いやいや、どういうことやねん。僕、一切使われた記憶ないんだけど!?


「あらそうなの? じゃあ、おばさんがお小遣いあげるわよ」

「やった〜! ありがとう〜!」


 マジで軽々嘘つくなこいつ。ヤバすぎだよ。


「さ、乗って乗って」


 僕は車の後部座席に押し込められた。その後に栞凛が優雅に乗り込んできた。まるで、僕の逃げ道を封鎖するように。


「行くわよ!」


 そう言いながら、母親は車のエンジンをつけた。古臭いような音があたりに響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ