第42話 朝ごはん
「じゃあいいよ! 私が作ったやつ、食べてよ!」
僕は栞凛に連れられ、リビングへ来た。
机の上には、ご飯と味噌汁、魚が添えられていた。
「ごめんね。やっぱりサバは高かったから、アユで我慢して?」
僕がそんなサバを懇願した、みたいに言うの、やめてくれんか?
そう思いながらも、結局ご飯に手をつけてみる。
「⋯⋯いただきます」
両手を合わせ、挨拶をする。
茶碗の前に置かれている箸を手に取り、構える。
「まずは、ご飯」
さっきから、めちゃめちゃ視線が痛い。
そんなに見ないでもらえる? ちょっと食べにくいねん。
「食べないの?」
「⋯⋯食べる」
めちゃめちゃ急かされるんだが。まあいいか。
僕は箸に乗っかったご飯を、口に含んだ。
「う、う、うん」
水入れすぎだなこれ。かなりベチャベチャだった。
「ど、う? おい、しい?」
ここはお世辞でも美味しいというべきか、本音を伝えるべきか。
「ベチャベチャ。水多いんじゃない?」
本音を伝えてみる。
「やっぱ、そうかー。私も食べてて思ったんだよね」
「あ、そう」
なんか、思ってたんとちゃう。ま、気にすることではない。
そう言い聞かせながら、おわんを手に取った。
「あったかい⋯⋯いや、熱いし、暑い」
こんな真夏にあったかいもんなんて食うもんじゃねえ。
「たべ、ないの?」
「食べるよ」
一応味噌汁をすすってみる。ほんのり、温かい。
「ど、う?」
「次、具材」
まだ汁を飲んだだけ、そんだけでわかるわけがねえ。
「ん? なんだこれ」
具材を食べようと、汁の中に箸を突っ込んだ。
その中に、やけに硬いにんじんが入っていたのだ。
「ちょっと、さすがにでかいよこれじゃ。もう少し小さくしないと」
さすがにでかい。あんま見ねえぞ、こんなでけえの。
「じゃあ、最後。アユ」
「それはグリルで焼いたよ。うちグリルないんだよねー」
だからなんだよさっきから。無駄話はいらない。
「ふーん」
雑な返事をし、僕はアユに向かった。
魚を掴んだ。それを、ご飯が入る茶碗へと入れる。
「魚って、ご飯と合うよね」
栞凛が僕の食べている様子を見ながら羨ましそうにこちらを見てくる。
どんだけ願っても僕のだから。
「よし、食べるか」
そう言いながら、アユを切り、口に運ぶ。
「おお、普通にうまい」
「ちゃんと焼いたから骨も食べられると思うよ。⋯⋯多分」
最後の『多分』ってなに? それだけで怖くなるのよこっちは。
「やばい、ご飯がなくなる」
本当に速い。ただ、おかわりはする気ない。ただただ面倒ってだけだが。
「まずいよ。アユがうまい。けどベチャベチャご飯なんだよなー」
ベチャベチャのご飯でアユを食べるか、普通にアユだけで食べるか。実に悩ましい。
「味噌汁もあるんでしょ?」
「⋯⋯あ、そういえば」
僕はアユとご飯を食べるのに必死ですっかり味噌汁を忘れていた。
「えー!? ま、いいけど!」
「いいんかい」
思わずツッコミが出てしまった。
「でさ、いつのまに買ってきたの?」
「え? 大輝くん今日起きるの遅かったから、あさいちでスーパー行ってさ」
あさいちのスーパーね。行ったことないや。
「それでいいのを見つけてきた。アユね」
まあそれ以外は普通にうちにあるから。⋯⋯って、なんでうちの食材の場所知ってんだ?
「あ、そう」
「でさ、このあと、デート、しよっ!?」
⋯⋯急すぎるでしょ。その話題転換は。
「えー⋯⋯」
デートじゃなくて、お出かけだもんね。




