第40話 指の動き方?
「大輝くんのケチー!」
風呂上がり、タオルを肩にかけながらブーブー文句を言ってくる。
いやいや、別に普通だろ。中学生がしていいことにも限度ってのがあるんだよ。
「そう言われても⋯⋯」
僕にはどうしようもできないし。
と、自分の中で言い訳を完成させる。
「もう、言うこと聞いてくれないなら、お仕置き、してあげるよ〜?」
「お仕置き?」
どうせこいつの言うことだから、まあ、その、あれだろ。
言語化はできない。ただ、嫌な予感はしまくる。
「そ、れ、は、お楽しみ、ね?」
聞きたくない。絶対に聞きたくない。お楽しみにもならんわ。
「とりあえず僕は風呂に行ってくる」
「は〜い」
栞凛はそう答えながらも、ニヤリと笑った、ような気がする。
******
「おかえり〜!」
何がおかえりだ。こいつわかんなすぎる。
「大輝くんのスマホさあ、なんか全然つまんないんだけどお?」
僕は頭が真っ白になった。
いや、それって、勝手に見たってことだよね?
まったく、言葉が出てこなかった。
「⋯⋯」
「だってさあ、連絡アプリさあ、なんにもいないんだもん」
こいつ、やばい。人のトーク履歴を覗こうとしてきやがった。
「⋯⋯」
「しかもさあ、ゲームもなんにも入ってないし、背景も初期状態だしい?」
それはそう。別にやりたいゲームもないし。
「だから、私の顔を、背景に変えておいてあげたんだよ?」
もう、そこには怒りすらも湧いてこなかった。呆れる、そんなレベルではない。自分でもわけわからない感情だった。
「そもそも、なんで僕のパスワード知ってんの?」
僕がこいつにスマホを見せたのはせいぜい数回程度だ。パスワードを覗き見された記憶なんてない。
「え? だって簡単だもん」
「簡単って、一応8桁だぞ?」
当たり前のように頷いてくる。
いつ僕のパスワードを知ったんだよこいつ。
「指の動き方が、わかりやすかったから」
「指の動き方?」
いや、どういう原理だよ。なんでそんなんでわかるんだよ。
「ほら? 数字の並びって、決まってるじゃん?」
「まあ、な」
「それでさ、わかるよ?」
まあ、なんとなく理解した。要するに、まあそういうことだ。
「これで、ずっと一緒だね?」
もう、怖い。怖すぎるよ、こいつ。
「返せ。パスワード変える」
僕はそう言いながらスマホを取り上げた。
「ふふ、意味がある、といいね?」
なにそれ。なんだこいつ、変な発言すぎる。
僕は栞凛に隠しながらパスワードを変えた。
「よし、もういいだろ。あ、背景⋯⋯ま、いいか」
「え!? 変えないの!?」
なんでこいつが驚いてんだ? どうせスマホ見ないし、変えるのめんどくさいだけだ。
「ありがとっ!」
「え? まあ、どう、いたしまして?」
なんでこいつが礼を言ったのかは知らない。一応返事はしておく。
「一緒に寝よっ!」
「ええ⋯⋯」
僕は顔を引きつらせた。1人で静かに過ごしたい、ただそれだけなのに。
「そういう約束、でしょ?」
いやまあ、そうだけども。あわよくば断れないかね?
こう思ったのを後悔している。さすがに安直すぎた。
「どこがいい? 寝室ね! わかった!」
あの、勝手に決めないでもらえる? 怖いから。
「あの、えっと、1人で⋯⋯」
「ん? なに? なにか言った?」
絶対聞こえてるだろこれ。さっきまで通用してたんだから。
そう思いつつも、もう一度言ってみる。
「えっと、1人で⋯⋯」
「なにか言った|?」
「⋯⋯すみません。 なんでもないです」
また、押し切られた。嫌だよ。僕は嫌だよ。こんなやつと、一緒のベッドで寝るなんて。




