第39話 圧、強すぎるって
「ねえ、私どこで寝よう?」
「好きにどうぞ」
僕は別にどこでもいい。ただ、こいつから離れられれば。
「大輝くんはどこがいい?」
一応、考えてるフリはしておこう。
「うーん、どうしよ」
本当にどこでもいい。あの、寝ようと思えば寝られるんですよ。
「僕いつでも寝られるから、決めちゃっていいよ」
「えー、じゃあ⋯⋯」
といっても、めっちゃ悩んでる。まさか、どこでもいいのか?
「どこでもいいなら、僕は自分の布団で寝るけど?」
「じゃあ私も!」
あ、被った。ならやめるか。
「じゃあ寝室にする」
「じゃあ私も!」
たまたま、だよな? うーん、いいか。
「じゃあここのソファ」
僕はソファの背もたれに体重をかけながら言った。
「じゃあ私も」
なんか、すごく不吉な予感がするんだけど。
「やっぱ自分の布団」
「じゃあ私も」
こいつ、やっぱわざとだよな?
「なんで僕と同じにするの?」
「じゃあ私も」
⋯⋯え? ⋯⋯は? 今こいつ、ん? 気のせい⋯⋯か?
2人の間には、静寂が流れた。
「あ! なんでもない! やっぱなんでもない!」
今さら感半端ないのは⋯⋯気のせいにしておくか。
「で、なんで? 僕と同じにする必要ないじゃん?」
「別にいいじゃーんだ!」
栞凛はプーッと顔を膨らませ、プイッとそっぽを向いた。
「理由がないし。僕と一緒に寝るメリットもないし」
「あるの! 私にとってはメリットだもん!」
間髪入れずに割り込んできた。
正直ビビった。
「メリットだとしてもその理由がないし」
「理由なんて、いらないもーんだ!」
いやいや、何事にも根拠がなきゃ。そうだそうだ。
「とにかく、一緒なの! はい決まり! この話おしまい!」
「いやいや、まだだよ?」
「ん? なにがまだなの?」
あの、無理やり押し切らんといてもろて。
当の栞凛はなぜか嬉しそうにニコニコしている。
「え、どこで寝るかって」
「その話は、もう終わった、よね?」
すごい圧で語りかけてくる。
ちょっと、圧強すぎますって。それやめてくれません?
「だよね?」
完全なる不敵な笑みだった。
その顔でこちらを見つめないでよ。マジで怖い。
「⋯⋯はい」
数秒の沈黙ののち、僕は、渋々了承してしまった。というより、せざるを得なかった。
「じゃあさ、はい、行くよ!」
「いや、え? 行くって、どこへ?」
だから、わかるでしょ? みたいな表情やめてや。普通にうざい。
僕は腕を掴まれて、もう逃げられなかった。
「そんなの、お風呂だけど?」
「いやいや、一応異性だよ?」
僕がそういと、栞凛は当たり前のように頷いてみせた。
こいつ、ちゃんと理解してる? 絶対、してない。うん。
「え? そうだよ? それがなにか?」
「いや、え? 一緒、とは言わないよね? 場所案内しろ、ってことだよね?」
その返答に、僕はビビり散らかした。
「それも、そうだね」
その『も』を強調したの、なんで? 『も』って、なんか他にあんの?
「早く、行かないの?」
「風呂は行くよ? 行きたいから、早く行って来てって」
僕がそう言うと、栞凛はきょとんとしながら首をかしげた。
「え? 一緒に、行くんでしょ?」
なわけあるか。なんで僕が1人でゆったりできる時間を奪おとうする?
「嫌だ。早く行ってきて」
「えー、だって、どうせ、ねえ?」
その言葉にはなにが含まれてる? まさか⋯⋯ううん。絶対ない⋯⋯と信じたい。




