第37話 持ち物検査
「ねー、まだ勉強してるの? 私暇なんだけど?」
勝手に僕の家に乗り込んでいきといて、生意気過ぎねえか?
「なに持ってきたの?」
僕が聞くと、栞凛はなぜかニヤニヤした。
「そんなに女の子の持ち物見たいんだあ?」
栞凛は煽るように言う。
こいつ、普通にうざい。正直どうでもいいが。
「ま、そんなに見たいってんなら、見せてあげるよ?」
ニヤニヤニヤニヤと、どんだけ僕を煽りたいってんだ。そんな煽るなら、こっちも乗ってやる。
「え、見てあげるよ?」
無駄すぎる。こんなん絶対役にたたんやろ。
そう思いながら結局会話を続けていた。
「もういいから。見せて。持ち物検査」
「えー、刃物なんて持ってきてないから! 大丈夫〜!」
そんなゆる〜く言う、逆に怪しい。ま、問答無用で検査するけど。
「じゃあいい。僕が確認するから」
「あー! いい、いい! 私がやるから!」
最初からそうしてくれ。面倒だなこいつ。
「えっと、まずは洋服でしょ。あと、歯ブラシとか⋯⋯」
「ちょ、こっちにものを投げないで」
栞凛は持ち物のチェックをしながら、中身を放り投げていた。
あの、ここ人の家よ? 汚さないでよ。
「うん! こんぐらい!」
栞凛はやりきったーという表情で床に寝転んだ。
だから、ここ人の家よ?
「え? これで全部?」
結構重要なもの、こいつ忘れてる気がする。
「うん。全部だけど?」
「いや、本当に、これで全部かな、って」
栞凛は上を向いてリズムよく床を叩き始めた。
「あ、勉強道具? ないよ?」
こいつ、やばい。勉強道具を一切持ってきてねえ!
「私まだ夏休みの宿題手つけてないし。めんどくさいからね!」
なぜそんな平然とできる。もうそんなに長くないぞ学校まで。
「いや、せめて課題は終わらせない?」
「ん? だって終わらせたら、夏休みが終わっちゃうじゃん?」
終わらせなくても終わるよ? 夏休みは。
「え、大輝くんはもう終わったの?」
僕は、静かに頷いた。
「え〜、はっや! こういうのは最後まで溜め込んでやらないんだよ〜!」
「え、やらない?」
最後に駆け込みでやるとかならわかる。え、やらない?
「うん! 先生に忘れたって言わなかったら、先生なにも言わなかったから、いっか! って」
すぅー、理解ができない。
「え、確か『夏休みの宿題やってないやつは終わるまで居残りな〜』って言ってたと思うんだけど?」
僕がそういうと、栞凛の顔は段々青ざめていった。この世の終わりのような顔をしている。
「え、冗談、だよね?」
栞凛がブルブルと震えながら聞いてきた。
どれほど嫌なんだろうか。
「うーん、わかんない。確か言ってた気がするけど」
「え〜、ひどい! どうして言ってくれなかったの!?」
言わなくてもわかるやろ。ちゃんと話聞いてれば。
「じゃあ、今からとってくるから! 絶対逃げないでよ!」
「はいはい」
適当に返事をしておく。
と、言っても逃げる場所などないのだが。
「あー、もうすぐ夜ご飯か。何食べよ」
僕は冷蔵庫の扉を開いた。冷気が中から出てきた。
「なんだこれ、なんにもねえ」
使えそうな食材が一切入ってねえ。適当に作って食べてって言われてるけど、なんも作れねえ。
「しゃーねえ。買いに行くか」
僕はマイバックとスマホを持って、家を出ようとした。そこで、あることを思い出す。
「あいつは⋯⋯まあいいか」
そのまま家を出て、ガチャリと鍵を閉めた。
「スーパーってどこだっけな。こっちだったかな」
僕はスマホで近くのスーパーを検索しながら歩き出した。
このあと、恐怖が訪れるとは、知る由もなかった。




