第36話 ハイテンション?
『ピンポーン』
家に、インターホンの音が響いた。
僕はインターホン越しに栞凛の様子を見た。
「なに?」
このインターホン、通話付きで、便利なものだ。
『いや、来たよって! 鍵開けて!』
「えー、めんどくさい」
正直、開けたくない。僕のパーソナルスペースにズカズカと入り込まないでくれ。
『大輝く〜ん! 開けて〜!』
「あとさ、言いにくいんだけど、開いてるよ?」
一瞬、間があった。
「⋯⋯え?」
『ガチャリ』
扉が開いた。
「あ、ほんとだ」
「閉めといて」
「え、うん」
栞凛は素直に扉の鍵を閉めた。
「うわあ〜、ここが大輝くんの家だ〜」
いや、はじめましてみたいな顔してるけど、こいつ1回不法侵入したからね?
「このソファ、うちのよりフッカフカかも〜!」
と言いながら、ソファでくつろいでいる。
こいつ、一応僕の家なのに、僕よりくつろぎ慣れてやがる。
「好きにしてていいよ。勉強してくる」
僕が自分の部屋に向かおうと、階段を上った。背後から、なぜか足音が聞こえる。
「ねえ、くつろいでていいよって」
「うん! 今からくつろぎに行くんだよ!」
くつろぎに行く⋯⋯それってつまりさ、僕の部屋に入ってくるで合ってる?
「え、集中できなくなるから」
「いいじゃん! 静かにしてるからさ!」
どーも信用がならん。これって信用していいやつ?
「ほら、早く前進んで!」
栞凛はどうにか僕を前に進ませようとしてくる。
僕は、こいつを信用していい根拠がほしいだけなのに。
「はあ。まあいいや」
この頑ななこいつを処理するのは面倒で、無駄だとされた。
「え!? やったー!」
なぜこんな素直に喜べるのか。僕も、素直になれたりするのかな⋯⋯。
「ふんふーん♪ 大輝くんの部屋だあ!」
別に、そんじょそこらの部屋とほぼ変わらないだろ。
「じゃ、おっさきー!」
栞凛はウキウキした様子で部屋に入った。
本当に、普通なのに、ここまでウキウキするのか⋯⋯。
「うっわ〜! 大輝くんの匂いだ!」
そう言いながら、部屋を駆け巡っている。
「じゃあね。ここにいたいなら、いていいよ」
僕は勉強道具一式を持って、部屋から出ようとした。
「えー! 私は大輝くんと一緒がいいのー!」
なんだかさらっと重たい発言が聞こえるが、いいや、聞こえない。そうしよう。
「はいはい。もう好きにすれば」
僕は諦めて自分の部屋で勉強することにした。
「うん! じゃあ好きにするね!」
「常識の範囲内で、ね?」
「さすがに私そんな常識ないわけないじゃーん!」
あの、来てそうそう部屋で駆け回ってたやつが何を言うとるんですがな。
栞凛は地べたに寝っ転がった。
「ねー、この部屋さあ、ベッドないの?」
あるわけない。そんな高級家具がここにあったらおかしな話だ。
「布団ならある。別に出してもいいけど」
「いいの!? どこどこ!?」
「そこの棚」
棚というか、クローゼットなんですけどね。
僕は指をさしながら言った。
「ここね! わかった!」
いつもそうだが、いつもに増してハイテンションな気がする。
僕の部屋に来るなんて、テンションだだ下がり一択なのだが、不思議なやつだ。
『ドスン』
という重たい音とともに、そこには布団が敷かれた。
「じゃあ、ここ私の場所ね!」
「あ、うん。別にいいけど」
布団取られた。まあいいか。どうせ親もいないし、親のベッドでも使おうかな。
そんなことを考えながら、勉強を始めた。




