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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
夏休み編

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第33話 お・出・か・け・

「あ、あ、ああああああああああああああ!」


 栞凛の悲痛な叫び声が、耳に流れてきた。

 言ってしまった、という顔だ。

 その場にしゃがみこみ、顔を膝のところに埋め込んでいる。


「ねえ、今の聞かなかったことに⋯⋯」


 今の、とは『デート』のことだろう。聞きたくもなかった。


「え、うん。聞きたくないよそんな単語」

「え!? 聞きたくないって、どういうこと!?」


 聞いていてほしいのか、聞かないでほしいのか、マジでわからない。どっちもなんて、さすがに無理よ?


「え、僕は一生その単語と向き合いたくないし、向き合わないだろうから」


 僕は笑顔で返した。下手くそな作り笑顔だが勘弁してくれ。


「じゃあ、その、ね? 私が⋯⋯」


 と、栞凛が言いかけたとき、ちょうど5時のチャイムがなった。


「じゃあ、今日は帰ろうかな」

「えーっ! じゃあ、その、明日、デート、しよ?」

「ん? 2人でカラオケでしょ? いいよ」


 決してこれはデートではない。そうでなければはならない。


「えぇ、で、デート、だよ」


 栞凛がボソボソと呟いた。

 僕は聞こえないふりをして帰ることにした。


「僕なんか陰キャが、あんなにかわいいって言われてる子と、デートなんて絶対だめでしょ」


 自分にそう言い聞かせて、デートではないこととした。


「でも、なんか、違う⋯⋯」


 それは、()()()()()()違和感があった。



 ******



「やっほー! 今丁度ピンポンしようと思ってたとこ!」


 僕が玄関の扉を開けると、庭先には栞凛がいた。

 栞凛は無邪気に手を振っている。


「ふんふーん! じゃあ、()()()、楽しもうね!」

()()()()、ね」


 それでないと、いけないのだ。




「ふぅ〜、ちゃんとお小遣い前借りできたから!」

「どうやって?」


 なんだか、絶対頼み込んだだけじゃないような気がした。なので聞いてみた。


「え、別に、料理作って、洗濯物畳んだり、お風呂とトイレを掃除したり、しただけだけど?」


 しただけで済ます内容ではなかったような気もするが、まあいいか。


「だって、大輝くんと、()()()、のためって考えたら、なんでも余裕に感じられたんだ!」

()()()()、ね?」


 間髪入れずにツッコミを入れる。

 またこの無駄な会話が広がってしまう。やめよう。

 

「じゃあ、今日はカラオケね!」

「うん。僕、歌えないけど」

「大丈夫! 私、絶対音感だから!」


 なんのフォローにもなってない。ただ、嘘なのは確かだ。

 一応何も言わずにいてあげることにする。


「よし! 行こっか!」


 栞凛は、意気揚々と店へ入った。


「じゃーん! 今日はちゃんと学生証持ってきたんだ!」

「あ、ふーん⋯⋯」


 やばい、完全に頭になかった。なくても足りるけど、なんか損した気分になるなあ。


「お願いしまーす!」


 そう言いながら受付のお兄さんに話しかけた。


「何名様のご利用ですか?」

「2人です!」

「おふたりですね。学生証などはお持ちでしょうか?」

「あ、あるよ! 大輝くんは?」


 突然会話が僕に回ってきた。少し慌てて反応する。


「あ、ないです」

「承知しました。ではお1人様のみ学割でのご案内になります」


 そう言いながら、僕にも笑顔で対応してくれた。

 なんて律儀なんだ。偉すぎる。褒め称えてあげたい。


「2名様で、何時間のご利用となりますか?」

「えーっと、何時間がいい?」


 だから僕に聞かれましても。僕じゃ絶対頼りにならないから、頼らんといて。


「うーん⋯⋯、フリータイムで!」

「フリータイムですね。わかりました」

「ドリンクバーは、どうされますか?」

「あ、2つお願いします!」

「2つですね」

 

「17号室になります。料金は後払いとなりますのでごゆっくりどうぞ」

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