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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
夏休み編

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32/46

第32話 137円か⋯⋯

「結局カフェデート⋯⋯じゃなくて、まあどうする?」


 栞凛が聞いてきた。

 僕のせいでカフェは行かないことになった。


「あ! あそこのゲーセンでも行く? それともカラオケとか」

「あ、まあ、別にいいけど」


 僕はその店に目を向けたあと、栞凛の方を見た。

 なにやらカバンをごそごそして、何かを探している。


「うわ〜、学生証持ってくるの忘れた〜。せっかく学割使えたのに〜」


 学割、ね。確かにそんな制度があったなあと思う。

 あれはもらって以来一度も筆箱から出てきたことはない。


「今日に限って、忘れるなんて、私のバカぁ! せっかく2人で遊べたのに⋯⋯」


 いや、あの、別にあれがないからって、遊べなくなることはない。


「別に、なくてもいいんじゃ⋯⋯?」

「だめだよ! 私今金欠なんだから!」


 間髪入れずに回答が返ってきた。

 僕はじーっとこいつの手にあるカップを見つめた。


「あ、えへへ〜」


 僕の視線に気づいたのか、その中身の入ったカップを僕から隠した。


「ご褒美買って、金欠て」

「いいの! 私のエネルギー源なんだから!」


 人の懐事情になにか口出しするわけではないが、計画的に使わないからそうなる。


「で、どうするの? なにもしないなら僕は帰る」

「え〜! ちょっと待ってよ〜!」


 栞凛が引き止めてくるなら仕方ない。()()()()待ってやるか。


「じゃあわかった! 私のかすかなお年玉を使おう!」


 ついにこいつ、お年玉に手を出してしまうか。僕なんてお小遣いがあまり過ぎて最近貯金箱が3箱目に突入しそうだ。


「ちなみにだけど、今いくら持ってる?」

「え〜、それ聞いちゃうか〜」


 なんだこいつ。別に少し助け舟を出してやろうと思ったが、言わないなら別にいい。何もしないだけだ。


「ちょっと待って。数えるから」


 栞凛は財布を取り出した。レシートだらけの分厚い財布だった。


「うわ、1円玉ばっかあるんだけど。なにこれ〜!」


 僕が横から中を覗くと、それはもう悲惨なものだった。

 もう、全体が1円玉と言っても過言ではないぐらいには。


「待って、1円玉42枚あるんだけど! やばすぎて草」

 

 なにが草だ。それどころではないだろ。


「5円玉が1枚でしょ。あと10円玉4枚と、50円が1枚。100円と500円玉は0枚だ」

「合計で137円といったところか」

「え、計算速くない!? 歩く電卓すぎるんだけどww」


 よくあるたとえだ。こいつの頭にはそれしかないのか。


「あ、じゃあ行けない⋯⋯。さっきのラテがなかったら足りたのになあ」


 がっくりと肩を落とし、落胆する栞凛がいる。

 そこまで落ち込む必要はあるのか。


「え〜、どうしようかな〜」


 さすがに中3からお金の貸し借りってのはできない。もちろん奢りもだ。


「じゃあ、自販機のアイスでも買って⋯⋯って、137円で買えるアイスなんてないかー」

「さすがに、137円じゃなにもできないし、帰っていい?」


 もう帰りたい。太陽はまだまだ元気に照らしているが、もう5時になりかけている。


「わたった! じゃあまた明日カラオケ行こ! お小遣いの前借り媚びまくってくるから!」

「あ、あ、うん」


 僕は単純に引いた。このときから前借りとか、やばすぎたりしない?


「じゃ、今日は帰るかー! 仕方ない」


 と、栞凛の声が響いた。


「はあ、せっかくのデートなのに、ごめんね」

「え、デート?」


 僕と栞凛の間を、冷たい空気が通り過ぎた。

 栞凛の顔が赤面していた。耳まで赤かったのではないか。

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