第30話 カラフルな、花火
「大輝くん、はさ、私のこと、どう思ってる?」
「え、どう思ってるって、別に⋯⋯」
知り合いでは? と言いかけた。
多分こいつが求めている回答ではないだろう。
知り合い、と言いたい。知り合いではないなら、なんだ?
「本当に、正直に、さ。答えてくれて、いいから」
まず、2人で祭りに来てる時点で、もう知り合いではないのかもしれない。
「と、友達⋯⋯?」
僕にはそれ以上の考えは浮かばなかった。
「最初、本当にそう思った? 違うよね?」
変なところで勘が鋭くなるのはやめてもらいたい。違うのは事実ではある。
「まあ、知り合い、かな」
「まあ、そうだよね。そう、だよね」
なんか、落胆したような、当たり前のような、わけのわからない反応だ。だからそういうのはやめてもらいたい。
「じゃあ、さ、今日、楽しかった?」
楽しかった、と言われると、微妙なところである。楽しかったのもあれば、そうでないところもある。
「ごめん、言い方変えるね」
僕が困っていたからか、ちょっと訂正してくれるらしい。
「私といて、楽しい?」
「(いや、完全に地獄。そもそも人と関わることが地獄だ)」
ただ、なぜだろう、こいつと話すときだけ、なぜかそう感じない。僕の体が、こいつに適応してきている、そんな気がした。
「まあ、楽しくはないけど、別に、苦とは感じない」
「⋯⋯ま、そうだよね。恋愛、嫌いだもんね」
その言葉、どういう意味だ? なぜそこで恋愛という言葉を組み込んだ?
「最後の質問、ね」
「うん」
僕は身構えた。どんな難題が僕に襲いかかってくるのだろうと。
「最近の、私と大輝くんの噂、いいと思う?」
「(無理無理無理無理無理。絶対無理。頑固拒否)」
最近の噂というのは、どうせ付き合ってるってことだろう。逆にそれ以外なにがあるのやら。
絶対に誰かとそういう関係にはなりたくない。たとえそれが誰であっても、絶対に嫌だ。
「やっぱ、無理だよね」
察してしまったらしい。僕が顔を引きつらせ、首を振っていたらまあそんな反応になるだろう。
「いつになったら、向き合ってもらえるかな」
「向き合うって、別に今向き合っているのでは?」
完全に目が合っている。これで、向き合っていないというのかね。
「やっぱ、大輝くん、こういうの疎いよ。そこからかな」
さっきからこいつがよくわからない言語で話す。やめてもらいたい。
「やっぱり、いいよ。なんでもない。それが、大輝くん、だもん」
栞凛は一瞬目を伏せ、誤魔化すようにニコッと笑った。
本当に意味不明だ。マジで何語かもわからない。僕が関わらない世界に無理やり引き釣りこもうとするのはやめてもらいたい。
「やっぱり、もう1つ、聞くね」
栞凛の顔は花火の色でカラフルに染まっていた。
僕は静かに頷いた。
「ねえ、どうしてなの? なんでさ、恋愛が、嫌いなの?」
僕は腕組みをして考えた。
「(恋愛は⋯⋯嫌いなのか? 人と関わるのと恋愛って等しい関係にあるか?)」
人は嫌いだ。関わりたくない。恋愛は、そもそも恋愛とはなんだ?
「どう、かな? 答え、出る?」
「(恋愛が嫌いなわけじゃない。人と関わるのが嫌いなだけで)」
どうなのか。僕は恋愛が嫌いなのだろうか。自分の心にも問うてみたい。
「ごめん。わかんない」
絞り出した結果、わからないという答えがまとまった。これが1番しっくり来る。
恋愛が嫌いなのか、人と関わるのが嫌いなのか、僕にも区別がつかない。
「嫌い、ではないの?」
嫌い、なのかもしれない。でも、その理屈はまったくわからない。




