第27話 正直、行きたい
「徳村、ちょっといいか?」
終業式が終わった直後、僕は先生に呼ばれた。
「なんですか?」
廊下に呼ばれ、先生と話を始めた。
「徳村、補習、来てくれないか?」
「補習、ですか?」
さすがに悪い意味の補習ではないだろう。
「一部の人から聞いてな。徳村の説明がわかりやすい、って」
「僕の、説明ですか?」
別に、僕はそう感じたことがない。
自分で自分のことをわかりやすいなんて、思わない。
「もちろん、徳村も自分の勉強してくれててもいいし、来なくてもいい」
正直、行きたかった。家には勉強を邪魔する存在がたくさんあるからだ。
「誰かに聞かれたとき、答えてほしいだけだ」
「え、ちなみに、補習って何やるんですか?」
僕は、人生で一度も補習を受けたことがない。それが通常だと思っていたが。
「大体は自習だ。自信がついたところで、テストをする」
自習でいいのか。なら、全然いいが。
「どうだ? 来てくれるか?」
「わかりました。行きます」
別に、行かない理由もない。なんなら、僕の利益になることしかない。
「(確か、あいつも補習だっけな)」
******
「え!? 大輝くんも補習受けるの!?」
下校中、このことを栞凛に話すと、これはまあ驚かれた。
「大丈夫? どうかしちゃった!?」
「なんもないよ。ただ、先生に『来てくれ』、って頼まれた」
栞凛が心配する理由もわかる。まあ僕の学力で補習など、通常はおかしい。
「なーんだ! じゃあ私も補習受ける!」
こいつ、もともと受ける気なかったのか。
「だって、大輝くんもいるんでしょ? なら行かない理由がないじゃん!」
そもそもその理論に達するのが謎すぎる。最初から行かない気だったのか、こいつは。
「で、補習っていつから?」
「⋯⋯え?」
なぜ知らない。こいつが知らないのはさすがにおかしすぎる。
「え、知らないの?」
僕がそう聞くと、首を思いっきり縦に振った。めちゃくちゃ肯定している。
「土日と祝日以外、毎日だって。さすがに学校が閉まってるときはないけどね」
「えー、多くない?」
別に、そんなことはない。なんなら、勉強ができる空間を整備してもらえてるんだぞ。
「え、つまりさ、明日からあるの?」
「うん」
僕がそう言うと、栞凛は絶望的な表情を浮かべた。
なぜそんなに嫌なのだろう。
「せっ、かく、休めると思ったのに⋯⋯」
「夏祭りまでに終わらせないといけないね?」
僕は栞凛を煽ってやった。案の定、それに過剰反応している。
「あ! そうじゃん! せっかく勝ち取った権利を使わなきゃ!」
それ、なんの権利だよ、と心で突っ込んだ。
「確か、テストがあって、合格すれば、いいらしいけど⋯⋯」
「よし、絶対頑張る!」
栞凛はとても意気込んでいた。
普段からその意気で勉強をしてくれればいいものだ。
「明日から頑張る! 今日は休憩!」
⋯⋯期待した僕がバカだった。
「明日から、って、絶対やらないやつのセリフじゃん」
「いーや! 絶対明日から始めないといけないからね!」
補習が、あるから、だな。
「じゃあさ! 今日私暇なの! 遊ばない?」
「いい。時間が無駄になる」
遊んでる暇なんか、僕にはない。一応全単元を復習しておくことにする。
「じゃあ、今日は帰る」
「また明日! 迎えに行くからね!」
頼むから、来ないでくれ。どうか、お願い。
「(ま、祈っても、無駄だろうけど)」




