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陰キャの僕にも拒否権を与えてもらえませんか? 〜陽キャ女子の距離感がバグってて、逃げ場を封じられたのだが?〜  作者: 古治
体育祭編

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第20話 地獄の始まり

 あれからしばらくが経ち、地獄の日が来てしまった。


「弁当作った? ごめんね、母さんこんなときに体調崩しちゃって」

「全然。安静にしてて。来なくていいから」


 むしろ、来ないでほしい。

 体育祭なんて僕からしたら運動音痴の公開処刑にしかならない。


「じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 扉を開けると、もう日常になりうるような光景があった。


「さ、今日は体育祭だよ! 頑張ろうね!」


 僕は一瞬、黙った。

 

「⋯⋯できるだけ」


 本当は僕が体調不良になりたかった。こんな地獄、絶対に出席したくない。


「じゃあ、競争しよ!」

「お好きにどうぞ」

「冷たいなあ」


 そんな会話をしながら、地獄が行われる会場へ向かうことにした。


 ******


「ついに、ついてしまった」

「教室行こ! 弁当だけ置きにいったらテント集合だったよね」

「確か」


 僕は行きたくない。あの会場についてしまったら、もう公開処刑の始まりだ。


「速く行くよ! 遅れちゃう!」


 僕は栞凛(しおり)に手首を掴まれた。無理やり引っ張られている。


「ほら、階段だよ。上って!」

「行きたくない」

「速く行くよ!」


 仕方ない、行くか。僕は決心して、行くことにした。本当は、冷房の効いた教室で勉強でもしてたいわけだが。


 ******


「楽しみ〜! 見て! いっぱい人がいるよ!」

「うん。それで?」

「え、別に、それだけだけど」


 太陽の光が差し込んでくる。雲1つない快晴で、すごく蒸し暑い。


「あ、そろそろ開会式始まっちゃう!」

「うん。動きたくない」


 ずっと日陰のテントの中で、みんなが動いてる様を見ている、それだけでもお腹いっぱいだ。


「はい、行くよ!」

「えー」


 無理やり立たされた。

 手を握られ、逃げたくても逃げられない。


「(あー、めんどくさい。体育祭なんて、消えてしまえばいい。こんなの地獄でしかない)」


 そんなことを考えていると、栞凛に話しかけられた。

 

「それにしても暑いね。今日最高気温何度か知ってる?」

「36℃だったと思う。昼間の最低気温は28℃だったかな」

「暑っ! そりゃ暑いね」


 ******


 しばらくが経ち、開会式が始まった。


「ただいまより、開会式を始めます」


 この開会式が、1番平和だ。つまり、嵐の前の静けさってことだ。

 このあとは、地獄しか待っていないのだ。


「開会式さあ、1番いらないよね。消していいよ」


 栞凛が小声で言ってきた。


「(ここが1番平和な時間だ。この時間を奪わないでくれ)」

「体操だけでいいよね本当に」


 体操はしなくていい。体操をしたら、このあと運動しますよーって言ってるようなものだ。

 今日はあいにくの快晴。降水確率は0%だった。

 どこのサイトを見ても、どこのチャンネルを見ても、降水確率は0%ばかり。


「少しぐらい夢を見させてくれたって」


 ほとんどの人は発狂するレベルで嫌なことだろうが、僕には関係ない。なんならそれで幸せになる1人だ。



「これで開会式を終わります」


 どうたらこうたら考えているうちに、気づいたときにはもう開会式は終わっていた。

 ここからは、地獄がが始まってしまう。もう、嫌だ。


「最初、頑張ろう! 私ちゃんと合わせるから! 置いていかないようにするね!」

「むしろ、置いてって。僕いないほうがスムーズに進むし」


 一瞬、間が流れる。

 

「⋯⋯だめだよ! ()()()走ってこそ意味があるから!」


 栞凛にしては珍しく、いいことを言うなあと思った。

 ただ、なぜ僕と一緒がいいのかはわからない。

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