第12話 鳴るわけない
「まだあいつはいないな。よし」
今日はいつもより早い時間に家を出た。
あの栞凛から逃げるためだ。
「ルートも変えるか」
いつものルートから変更して、学校へ向かうことにする。
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僕はクラスで最初に教室へ入った。
いつもは5番目ぐらいだが、珍しい。
「ギリギリセーフ!」
そして1番遅くに入ってきたのが栞凛だ。
遅刻寸前で教室に入ってきた。
開口1番、こんなことを言われた。
「なんでスマホ見てくれないの?」
「え?」
普通じゃないのか?
僕にとっては当たり前すぎることだ。朝、スマホを見ている暇なんてない。
「ちゃんと連絡したじゃん!」
まずい、こいつの声がでかすぎる。
席の周りは明らかに引かれている。席を離れる人もいたぐらいだ。
「ねえ、なんで?」
ここで僕がとった作戦、それは、当事者でないアピールだ。
そもそも僕に言ってない可能性がある。その可能性を信じて、僕はそういうアピールをした。
「聞いてる? 大輝〜!」
今、僕の名前を言った? いや、聞かなかったことにする。
僕は栞凛を無視し続ける。こういうところで無駄に我慢強い僕だった。
「あれ? 生きてる? おーい!」
周りからは、完全に冷ややかな目で見られていること間違いないだろう。
そのとき、救世主が現れた。
「そこ、うるさいぞー」
先生だ。
「はやくカバン片付けてこい。そしたら朝のホームルーム始めるからなー。みんな席付けー」
先生がそういうと、席を置いて離れていった周りの人も一斉に帰ってきた。
内心助かったと思う僕であった。
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朝のホームルームが終わった。
僕はその瞬間、隣の恐怖から逃れるために。すぐに席を立って廊下に向かった。
「大輝〜! どこ行くの〜?」
悪魔の声が聞こえる。教室を地獄の空気にした悪魔の声だ。
「でさ、朝スマホ見た?」
「見てない」
「え、見ないの?」
「見ないよ」
僕がそう言うと、栞凛は驚きを隠せなくなっていた。
「スマホ鳴ったよね?」
栞凛が僕に確認するように聞いてくる。
「鳴ってないよ」
「え、通知切ってる?」
「うん。そうだけど」
なぜここで栞凛が悲しむのかわからない。どうせ無駄なことしか送ってこないだろうと思っての行動だ。
「え、なんで?」
「別に、大した連絡ないだろうと」
正直に答える。ここで嘘をつくのもなんか癪だ。
「あ、もうすぐ授業始まる」
時間というものは待ってくれない。止まってくれない。
まあ当たり前のことなのだが。
「あ、待ってよ!」
僕は急いで教室へ向かった。
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「今日は、体育祭のことやるぞー」
体育祭、僕にとっては地獄のイベントだ。こういうのはどうせ陽キャがわちゃわちゃして終わるだけだ。
「競技が、大玉転がし、借り人リレーとリレーだな」
どれも走るものばかりだ。絶対にやりたくない。ただこういうのは強制参加が1つはあるんだよな。
「大玉が全員参加で、2人1組だ。ペアは後で決めるから考えておけー」
大玉転がしか。あのでかい大玉を転がすだけの競技、おもしろいのかはわからない。
「借り人リレーは、立候補者がやるやつだ。これも後で決めるからなー」
借り人リレーか。頼むから誰も僕を選ばないでくれよ。選ばれたら一緒に走らないといけないじゃないか。
「リレーは、クラスの足が速い代表者にお願いするからなー」
危ない。これは僕に絶対該当しないやつだとその場で確信した。
「じゃあまず、ペア決めてくぞ。2人1組組んでいいぞー」
先生がそう言ったとき、僕は隣からの視線に耐えるのが大変だった。
なぜだろうか、誰かに狙われてる気がしてならない。




