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『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』  作者: 雨宮ぐみ


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第7話 健一さんの意外な一面!?

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――まえがき――


もし、あなたが古い写真の中にいる青年に――


一目惚れしてしまったら、どうしますか?


しかも、その青年が生きていたのは、今から80年も前。


名前しか知らない。


どんな声なのかも、どんな性格なのかも分からない。


もう二度と会うことなんてできない。


……普通なら、そう思いますよね。


16歳の女子高生、五十嵐ひまりも、最初はそう思っていました。


夏休み。


母親の実家で偶然見つけた、古いアルバム。


そこに写っていたのは、昭和十九年の海軍兵学校の学生たち。


その中にいた、一人の青年――如月健一、18歳。


ひまりは、写真を見た瞬間に恋をしてしまいます。


「……かっこいい」


「どんな人だったんだろう」


「どんな声で話すのかな」


「笑ったら、どんな顔をするんだろう」


写真の中の彼を眺めながら、どんどん想像を膨らませていくひまり。


そして、叶うはずのない願いを口にします。


「夢でもいいから……会ってみたい」


ところが、その夜。


写真が不思議な光を放ち――。


気を失ったひまりが目を覚ますと、そこは昭和十九年。


そして目の前には――。


「大丈夫か?」


写真の中の青年、如月健一が立っていました。


「…………え?」


「どうした?」


「……健一さん?」


「なぜ、俺の名前を知っている?」


こうして始まった、80年の時を越えた二人の恋。


現代の女子高生と、戦時中を生きる海軍兵学校の青年。


スマートフォンも、コンビニも、SNSも知らない健一。


そして、昭和の生活や戦時下の常識をまったく知らないひまり。


二人が一緒にいるだけで、毎日が大騒ぎ。


笑ったり、喧嘩したり、嫉妬したり。


時には胸が締めつけられるほど切ない時間を過ごしながら、二人は少しずつ本当の恋を知っていきます。


しかし――。


二人の間には、決して越えることのできない「時代」という壁がありました。


そして健一は、戦艦大和へ。


「必ず帰ってくる」


「待ってる。絶対に待ってるから」


二人は未来を約束します。


けれど――。


戦争という大きな運命が、二人を引き離してしまいます。


それでも、ひまりの恋は終わりません。


80年の時を越えて、もう一度――。


大好きな人に会うために。


これは、写真から始まった恋が、時代を越えて奇跡を起こす物語。


笑えて、キュンとして、時々泣ける。


そして最後には、きっと笑顔になれる。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


どうぞ、ひまりと健一の80年越しの恋を――最後まで見届けてください。

第7話 健一さんの意外な一面!?


「ひまりさん、今日は何をする?」


朝食を終えたひまりに、健一が尋ねた。


「何をするって言われても……」


ひまりは考え込む。


令和なら、友達にメッセージを送ったり、動画を見たり、ショッピングに行ったり。


でも、ここにはスマートフォンもない。


「……暇です」


「そうか」


健一は少し考えた。


「なら、学校の勉強でもするか?」


「えっ」


ひまりの顔が引きつる。


「勉強……?」


「ああ」


「夏休みなのに?」


「君の時代でも学生は勉強するだろう」


「しますけど……」


ひまりはため息をついた。


「今は夏休みですよ?」


「俺たちも学んでいる」


「……真面目だ」


「何がだ?」


「健一さんって、休みの日も勉強するんですね」


「当然だ」


ひまりはしばらく健一を見つめた。


「……」


「何だ?」


「やっぱり、真面目なんだ」


「だから何だ?」


「写真の印象、そのまま」


「写真?」


「あ……」


ひまりは慌てて口を閉じた。


「また写真の話か」


「だって……」


「俺の写真をそんなに見ていたのか?」


「……はい」


「何度くらい?」


「……数え切れないくらい」


健一が黙った。


「……」


ひまりも黙る。


「……そんなにか」


「はい」


「……」


健一の耳が赤くなる。


ひまりはそれを見逃さなかった。


「健一さん、照れてます?」


「照れていない」


「耳、赤いですよ」


「暑いだけだ」


「昨日もそれ言ってましたよね」


「……」


ひまりは笑った。


---


「それじゃあ、勉強はやめましょう!」


「なぜそうなる」


「せっかく昭和に来たんだから、昭和らしいことをしたいです!」


「昭和らしいこと?」


「はい!」


ひまりは腕を組んで考える。


「……遊びたい!」


「遊ぶ?」


「そう!」


「何をして?」


「えっと……」


ひまりは周囲を見渡した。


令和ならゲームセンター、カラオケ、ショッピングモール。


ここにはそんなものはない。


「……分からない」


「君が言い出したんだろう」


「そうなんですけど!」


健一が笑う。


「君は本当に面白いな」


「笑いましたね?」


「何が?」


「今、笑いました!」


「……そうか?」


「はい!」


ひまりは嬉しそうに笑った。


---


その後、二人は校内を歩いていた。


「健一さんって、普段は何してるんですか?」


「勉強と訓練だ」


「毎日?」


「ああ」


「大変じゃない?」


「大変だ」


「じゃあ、休みたいって思うことは?」


「もちろんある」


「えっ、あるんだ!」


「俺だって人間だからな」


「なんか安心した」


「どうして?」


「健一さん、真面目すぎてロボットみたいだったから」


「▪▪▪ロボット?」


「ですよね」


ひまりは笑う。


「じゃあ、健一さんの好きなものって何?」


「好きなもの?」


「はい」


健一は少し考えた。


「……海だな」


「海?」


「ああ」


「海が好きなんですか?」


「子どもの頃から好きだった」


健一の表情が柔らかくなる。


「海を見ると、なぜか落ち着く」


「へぇ……」


ひまりは健一を見る。


「なんか、健一さんらしい」


「そうか?」


「はい」


「君は海が好きなのか?」


「もちろん!」


ひまりは笑った。


「令和の海も、すごく綺麗ですよ」


「見てみたいな」


「じゃあ――」


ひまりは言いかけて止まった。


「……いつか、一緒に見ましょう」


「……ああ」


健一は笑った。


その「いつか」という言葉が、二人の胸に残った。


---


午後。


ひまりは縁側で昼寝をしていた。


「……すぅ……」


そこへ健一がやってくる。


「……寝ているのか」


ひまりは完全に熟睡している。


「……」


健一は起こそうとしたが――。


「……ん……」


ひまりが寝返りを打った。


その拍子に、頭が畳へ落ちそうになる。


健一は慌てて手を伸ばした。


「危ない」


ひまりの頭を支える。


「……」


ひまりは目を覚まさない。


健一はそのまましばらく見つめていた。


「……よく眠れるな」


ひまりの寝顔は、起きているときよりずっと幼く見える。


健一は小さく笑った。


「……未来の女の子、か」


すると――。


「……健一さん……」


「!」


ひまりが寝言を言った。


「……好き……」


健一が固まる。


「…………」


「……かっこいい……」


「…………」


健一の顔が一気に赤くなる。


「……寝言か」


ひまりはまだ眠っている。


「……健一さん……」


健一は慌てて立ち上がった。


「……起きているときに言われるより困るな」


そのまま、そっとその場を離れた。


---


しばらくして。


「……ん?」


ひまりが目を覚ました。


「……あれ?」


辺りを見回す。


「私、寝ちゃった?」


そして――。


「……健一さん?」


姿がない。


「どこ行ったんだろう?」


ひまりは立ち上がった。


その頃。


少し離れた場所で、健一は一人で顔を赤くしていた。


「……何なんだ、あの子は」


胸が妙に騒がしい。


「好き……って」


思い出しただけで、心臓が跳ねる。


健一は自分の胸に手を当てた。


「……俺は、どうしてこんなに気になるんだ」


今までこんな感情を抱いたことはなかった。


未来から突然現れた、不思議な少女。


なのに――。


一緒にいると楽しい。


笑っていると、もっと笑わせたくなる。


困っていると、助けてやりたくなる。


そして――。


「……もっと、そばにいてほしい」


健一は小さく呟いた。


自分でその言葉に驚く。


「……」


まだ、この気持ちが何なのか分からない。


けれど。


少なくとも――。


ひまりが特別な存在になり始めていることだけは、健一自身にも分かっていた。


---


夕方。


「健一さん!」


ひまりが走ってくる。


「どこにいたんですか?」


「少し用事があった」


「そうなんですか」


ひまりは健一の顔を覗き込む。


「……なんか顔赤くない?」


「赤くない」


「本当に?」


「ああ」


「ふーん……」


ひまりは首を傾げる。


そして――。


「じゃあ、帰りましょう!」


「……そうだな」


二人は並んで歩き出した。


ひまりは何も知らない。


自分が寝言で何を言ったのかも。


そして健一は――。


その言葉を、いつまでも忘れられそうになかった。


――第7話・終――

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――あとがき――


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』はいかがでしたでしょうか?


この物語は、令和を生きる16歳の女子高生・五十嵐ひまりが、古いアルバムの中に写っていた青年・如月健一に一目惚れするところから始まりました。


「写真の中の人に恋をする」


普通なら、絶対に叶わない恋です。


けれど、ひまりの「会いたい」という強い想いが時を越え、二人は昭和十九年で出会います。


最初は、現代っ子のひまりと、真面目で少し不器用な健一。


時代も違えば、生活も価値観も違う二人でした。


それでも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ惹かれ合い、恋人になっていきました。


二人の恋を描くうえで大切にしたかったのは、戦争そのものではなく、その時代の中でも誰かを好きになり、笑い、未来を夢見た若者たちの気持ちです。


健一にも、ひまりと一緒に過ごしたい未来がありました。


ひまりにも、健一と一緒に見たい未来がありました。


「また海を見よう」


「必ず帰る」


そんな普通の約束が、戦争によってどれほど大切なものだったのか。


だからこそ、二人が離ればなれになる場面は、物語の中でも特に大切にしました。


そして最後は――。


80年前には叶わなかった二人の約束を、令和の時代でもう一度。


健一の生まれ変わりとひまりが再会することで、二人の恋にもう一度、未来を与えました。


80年前にできなかったこと。


一緒に映画を見ること。


令和の街を歩くこと。


スマートフォンを見ること。


そして、何より――。


誰にも引き裂かれることなく、好きな人の隣にいること。


今度こそ、二人にはそんな普通の幸せを手にしてほしい。


そんな願いを込めています。


もし、物語を読み終えたあとに、


「ひまりと健一、この先どうなるんだろう?」


「令和で二人はどんな恋愛をするんだろう?」


そんなふうに想像していただけたなら、とても嬉しいです。


写真の中の一人の青年に一目惚れした少女。


そして、80年という長い時間を越えて、もう一度巡り合った二人。


恋は、時代が変わっても消えない。


そんな奇跡を、二人から感じてもらえたら嬉しいです。


最後まで、ひまりと健一の恋に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。


またどこかで、二人に会える日が来るかもしれません。


そのときはきっと――。


「健一くん、令和へようこそ!」


「……ひまり。まずはスマートフォンの使い方を教えてくれ」


「そこから!?」


そんな二人の声が聞こえてきそうです。


それでは――。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


これにて、二人の最初の物語は幕を閉じます。


最後まで読んでくださったあなたへ。


本当に、ありがとうございました。

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