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『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』  作者: 雨宮ぐみ


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第4話 令和女子高生、海軍兵学校で大ピンチ!?

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――まえがき――


もし、あなたが古い写真の中にいる青年に――


一目惚れしてしまったら、どうしますか?


しかも、その青年が生きていたのは、今から80年も前。


名前しか知らない。


どんな声なのかも、どんな性格なのかも分からない。


もう二度と会うことなんてできない。


……普通なら、そう思いますよね。


16歳の女子高生、五十嵐ひまりも、最初はそう思っていました。


夏休み。


母親の実家で偶然見つけた、古いアルバム。


そこに写っていたのは、昭和十九年の海軍兵学校の学生たち。


その中にいた、一人の青年――如月健一、18歳。


ひまりは、写真を見た瞬間に恋をしてしまいます。


「……かっこいい」


「どんな人だったんだろう」


「どんな声で話すのかな」


「笑ったら、どんな顔をするんだろう」


写真の中の彼を眺めながら、どんどん想像を膨らませていくひまり。


そして、叶うはずのない願いを口にします。


「夢でもいいから……会ってみたい」


ところが、その夜。


写真が不思議な光を放ち――。


気を失ったひまりが目を覚ますと、そこは昭和十九年。


そして目の前には――。


「大丈夫か?」


写真の中の青年、如月健一が立っていました。


「…………え?」


「どうした?」


「……健一さん?」


「なぜ、俺の名前を知っている?」


こうして始まった、80年の時を越えた二人の恋。


現代の女子高生と、戦時中を生きる海軍兵学校の青年。


スマートフォンも、コンビニも、SNSも知らない健一。


そして、昭和の生活や戦時下の常識をまったく知らないひまり。


二人が一緒にいるだけで、毎日が大騒ぎ。


笑ったり、喧嘩したり、嫉妬したり。


時には胸が締めつけられるほど切ない時間を過ごしながら、二人は少しずつ本当の恋を知っていきます。


しかし――。


二人の間には、決して越えることのできない「時代」という壁がありました。


そして健一は、戦艦大和へ。


「必ず帰ってくる」


「待ってる。絶対に待ってるから」


二人は未来を約束します。


けれど――。


戦争という大きな運命が、二人を引き離してしまいます。


それでも、ひまりの恋は終わりません。


80年の時を越えて、もう一度――。


大好きな人に会うために。


これは、写真から始まった恋が、時代を越えて奇跡を起こす物語。


笑えて、キュンとして、時々泣ける。


そして最後には、きっと笑顔になれる。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


どうぞ、ひまりと健一の80年越しの恋を――最後まで見届けてください。

第4話 令和女子高生、海軍兵学校で大ピンチ!?


「……さて」


健一は腕を組んだ。


「まず、君をどうするかだな」


「どうするって?」


ひまりは首を傾げる。


「ここは海軍兵学校だ。君が勝手に歩き回れば、当然、騒ぎになる」


「……あ」


ひまりは周囲を見渡した。


確かにそうだ。


自分以外、全員が男子。


しかも海軍兵学校の学生ばかり。


令和の女子高生が突然現れたら――。


「……めちゃくちゃ目立ちますね」


「そういうことだ」


「どうしよう」


ひまりが困っていると、先ほどの同期生が口を挟んだ。


「健一、その子を寮に連れて行くわけにはいかないぞ」


「分かっている」


「それに、教官に見つかったら大騒ぎになる」


「……そうだな」


二人が真剣に話し合っている。


ひまりはその横で、小さく手を挙げた。


「はい!」


「何だ?」


「私、女の子なんですけど」


「見れば分かる」


「ですよね」


「それがどうした?」


「……じゃあ、男子寮に入ったらまずいですよね?」


「当たり前だ!」


健一が即答した。


「ですよねぇ……」


ひまりはしょんぼりした。


---


「とりあえず、ここにいてくれ」


健一が案内したのは、兵学校内の比較的人目につきにくい場所だった。


「ここなら、しばらくは大丈夫だろう」


「ありがとうございます」


「それから――」


健一はひまりをじっと見る。


「その服装は、やはり目立つな」


「制服ですからね」


「君の時代の学生服か」


「そうです」


「……変わった形だな」


「え?」


ひまりは自分の制服を見る。


「普通ですよ?」


「そうなのか?」


「むしろ健一さんのほうがすごいです」


「俺が?」


「だって、その軍服……」


ひまりの目がキラキラする。


「めちゃくちゃ似合ってます!」


「…………」


健一が固まる。


「そうか?」


「はい!」


「軍服が?」


「健一さんが!」


「…………」


健一は目を逸らした。


「……そういうことを、簡単に言うな」


「なんで?」


「……困る」


「え?」


ひまりが聞き返す。


しかし健一は何も答えなかった。


---


そのとき。


「おい、如月!」


遠くから声がした。


健一の表情が変わる。


「……教官だ」


「えっ!?」


ひまりの顔が青ざめる。


「どうするんですか!?」


「静かに」


「はい!」


二人は慌てて物陰へ隠れた。


教官が近づいてくる。


「如月、ここで何をしている?」


「はい。少し休憩を」


「そうか。ところで――」


教官の視線が、ひまりの隠れている方向へ向く。


「今、何か音がしなかったか?」


「……!」


ひまりは口を両手で押さえた。


健一がすぐに答える。


「猫ではないでしょうか」


「猫?」


「はい」


「この辺りに猫などいたか?」


「……さあ」


教官は怪しそうな顔をした。


ひまりの心臓は、バクバク。


――お願い!


――早く行って!


すると、教官はため息をついた。


「まあいい。集合時間に遅れるなよ」


「はい!」


教官が去っていく。


足音が遠ざかる。


「……行った?」


ひまりが小声で聞く。


「ああ」


「よかったぁ……」


ひまりはその場にへたり込んだ。


「びっくりした……」


健一が笑う。


「君は本当に表情が忙しいな」


「だって!」


ひまりは健一を見る。


「見つかったらどうなるんですか?」


「それは……」


健一が少し考える。


「俺にも分からない」


「分からないの!?」


「未来から来た女の子など、聞いたことがないからな」


「そりゃそうですよ!」


二人は顔を見合わせる。


そして――。


ぷっ。


健一が吹き出した。


「……ふふ」


「え?」


ひまりが目を丸くする。


「今、笑いましたよね?」


「……笑っていない」


「また笑った!」


「君が面白いんだ」


「えー!」


ひまりは頬を膨らませる。


「健一さん、意外と意地悪!」


「そうか?」


「そうです!」


健一はまた笑った。


その笑顔を見て、ひまりの胸がまたドキンと鳴った。


――やっぱり。


――好き。


写真を見て一目惚れした。


でも、実際に話してみると、もっと好きになってしまう。


「……」


ひまりは自分の胸に手を当てた。


心臓がうるさい。


---


「ところで」


健一が尋ねる。


「君は、こちらに来る前に何をしていた?」


「え?」


「未来でだ」


「……写真を見てました」


「また写真か」


「はい」


ひまりは少し照れながら答える。


「健一さんの写真」


「なぜそんなに俺の写真を……」


「だから、一目惚れしたんですって」


「……」


健一は黙る。


「写真を見てたら、どんな人なのかなって思って」


「それで?」


「会ってみたいって思ったんです」


「……」


「そしたら、本当に会えちゃった」


ひまりは笑った。


「すごいですよね」


健一は返事をしなかった。


ただ、ひまりを見つめている。


「……健一さん?」


「いや」


健一は視線を逸らした。


「君は、不思議なことを言うなと思って」


「そうですか?」


「ああ」


そして、小さく呟いた。


「……俺なんかに会いたいと思うなんて」


「なんか、じゃないです」


ひまりが即答する。


健一が振り返る。


「健一さんは、すごく素敵な人ですよ」


「……」


「優しいし」


「……」


「かっこいいし」


「……」


「笑った顔も素敵だし」


健一の耳が赤くなる。


「……もういい」


「え?」


「それ以上言うな」


「なんで?」


「……恥ずかしい」


「!」


ひまりの顔も一気に赤くなる。


二人とも黙り込んだ。


しばらくして――。


ひまりが小さく笑う。


「……健一さんも、恥ずかしいって思うんですね」


「当たり前だ」


「なんか安心しました」


「何がだ?」


「だって、完璧な人かと思ってたから」


「俺が?」


「写真ではそう見えました」


健一は苦笑した。


「実際は違うぞ」


「ううん」


ひまりは首を振る。


「実際のほうが好きです」


「…………」


健一は完全に言葉を失った。


ひまり自身も、自分が何を言ったのか理解した瞬間――。


「……あ」


顔が真っ赤になる。


「い、今のは……」


「……」


「その……」


「……」


「忘れてください!」


ひまりが慌てて顔を背ける。


健一も顔を赤くしたまま、空を見上げた。


「……無理だ」


「え?」


「忘れられそうにない」


「……っ!」


ひまりの心臓が、大きく跳ねた。


まだ二人は恋人ではない。


まだ、お互いの気持ちもはっきりとは分からない。


けれど――。


二人の距離は、昨日より確実に近くなっていた。


そして、この日から。


健一は時々、ひまりの姿を目で追うようになった。


ひまりもまた、健一の笑顔を見るたびに胸が高鳴るようになっていった。


80年前の世界で始まった、二人の恋。


その最初の一歩は――。


まだ誰にも気づかれないほど、小さなものだった。


――第4話・終――

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――あとがき――


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』はいかがでしたでしょうか?


この物語は、令和を生きる16歳の女子高生・五十嵐ひまりが、古いアルバムの中に写っていた青年・如月健一に一目惚れするところから始まりました。


「写真の中の人に恋をする」


普通なら、絶対に叶わない恋です。


けれど、ひまりの「会いたい」という強い想いが時を越え、二人は昭和十九年で出会います。


最初は、現代っ子のひまりと、真面目で少し不器用な健一。


時代も違えば、生活も価値観も違う二人でした。


それでも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ惹かれ合い、恋人になっていきました。


二人の恋を描くうえで大切にしたかったのは、戦争そのものではなく、その時代の中でも誰かを好きになり、笑い、未来を夢見た若者たちの気持ちです。


健一にも、ひまりと一緒に過ごしたい未来がありました。


ひまりにも、健一と一緒に見たい未来がありました。


「また海を見よう」


「必ず帰る」


そんな普通の約束が、戦争によってどれほど大切なものだったのか。


だからこそ、二人が離ればなれになる場面は、物語の中でも特に大切にしました。


そして最後は――。


80年前には叶わなかった二人の約束を、令和の時代でもう一度。


健一の生まれ変わりとひまりが再会することで、二人の恋にもう一度、未来を与えました。


80年前にできなかったこと。


一緒に映画を見ること。


令和の街を歩くこと。


スマートフォンを見ること。


そして、何より――。


誰にも引き裂かれることなく、好きな人の隣にいること。


今度こそ、二人にはそんな普通の幸せを手にしてほしい。


そんな願いを込めています。


もし、物語を読み終えたあとに、


「ひまりと健一、この先どうなるんだろう?」


「令和で二人はどんな恋愛をするんだろう?」


そんなふうに想像していただけたなら、とても嬉しいです。


写真の中の一人の青年に一目惚れした少女。


そして、80年という長い時間を越えて、もう一度巡り合った二人。


恋は、時代が変わっても消えない。


そんな奇跡を、二人から感じてもらえたら嬉しいです。


最後まで、ひまりと健一の恋に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。


またどこかで、二人に会える日が来るかもしれません。


そのときはきっと――。


「健一くん、令和へようこそ!」


「……ひまり。まずはスマートフォンの使い方を教えてくれ」


「そこから!?」


そんな二人の声が聞こえてきそうです。


それでは――。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


これにて、二人の最初の物語は幕を閉じます。


最後まで読んでくださったあなたへ。


本当に、ありがとうございました。

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