↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』  作者: 雨宮ぐみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/30

第29話 「大丈夫だよね?」――戦場の大和、祈るひまり

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――まえがき――


もし、あなたが古い写真の中にいる青年に――


一目惚れしてしまったら、どうしますか?


しかも、その青年が生きていたのは、今から80年も前。


名前しか知らない。


どんな声なのかも、どんな性格なのかも分からない。


もう二度と会うことなんてできない。


……普通なら、そう思いますよね。


16歳の女子高生、五十嵐ひまりも、最初はそう思っていました。


夏休み。


母親の実家で偶然見つけた、古いアルバム。


そこに写っていたのは、昭和十九年の海軍兵学校の学生たち。


その中にいた、一人の青年――如月健一、18歳。


ひまりは、写真を見た瞬間に恋をしてしまいます。


「……かっこいい」


「どんな人だったんだろう」


「どんな声で話すのかな」


「笑ったら、どんな顔をするんだろう」


写真の中の彼を眺めながら、どんどん想像を膨らませていくひまり。


そして、叶うはずのない願いを口にします。


「夢でもいいから……会ってみたい」


ところが、その夜。


写真が不思議な光を放ち――。


気を失ったひまりが目を覚ますと、そこは昭和十九年。


そして目の前には――。


「大丈夫か?」


写真の中の青年、如月健一が立っていました。


「…………え?」


「どうした?」


「……健一さん?」


「なぜ、俺の名前を知っている?」


こうして始まった、80年の時を越えた二人の恋。


現代の女子高生と、戦時中を生きる海軍兵学校の青年。


スマートフォンも、コンビニも、SNSも知らない健一。


そして、昭和の生活や戦時下の常識をまったく知らないひまり。


二人が一緒にいるだけで、毎日が大騒ぎ。


笑ったり、喧嘩したり、嫉妬したり。


時には胸が締めつけられるほど切ない時間を過ごしながら、二人は少しずつ本当の恋を知っていきます。


しかし――。


二人の間には、決して越えることのできない「時代」という壁がありました。


そして健一は、戦艦大和へ。


「必ず帰ってくる」


「待ってる。絶対に待ってるから」


二人は未来を約束します。


けれど――。


戦争という大きな運命が、二人を引き離してしまいます。


それでも、ひまりの恋は終わりません。


80年の時を越えて、もう一度――。


大好きな人に会うために。


これは、写真から始まった恋が、時代を越えて奇跡を起こす物語。


笑えて、キュンとして、時々泣ける。


そして最後には、きっと笑顔になれる。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


どうぞ、ひまりと健一の80年越しの恋を――最後まで見届けてください。

第29話 「大丈夫だよね?」――戦場の大和、祈るひまり


「……如月健一氏について――」


ひまりは、何度もその言葉を見つめていた。


手元には、海軍から届いた葉書。


けれど、その先に書かれている内容が怖くて――。


続きを読むことができない。


「……嫌」


ひまりは葉書を裏返した。


「読みたくない……」


でも。


知らないままなのも怖い。


「健一くん……」


胸元のボタンを握りしめる。


「今、どこにいるの?」



---


その日の夜。


ひまりは眠れなかった。


布団の中で何度も寝返りを打つ。


「……大丈夫」


自分に言い聞かせる。


「健一くんは約束した」


俺は帰ってくる。


「だから、大丈夫」


目を閉じる。


しかし――。


すぐに、あの光景が浮かんだ。


暗い海。


巨大な戦艦。


炎。


そして――。


健一。


「……!」


ひまりは飛び起きた。


「また……」


息が苦しい。


「何で、こんな夢ばっかり……」


そのとき。


枕元の写真が、淡く光った。


「……え?」


ひまりは写真を手に取る。


軍服姿の健一。


いつもの写真。


けれど今夜は――。


写真の中の健一の姿が、ほんの少し揺らいで見えた。


「健一くん……?」


すると。


写真の向こうから――。


「……ひまり」


「……!」


確かに聞こえた。


健一の声。


「健一くん!?」


ひまりは写真を両手で握る。


「健一くん!」


返事はない。


「どこにいるの?」


静寂。


「健一くん!」


もう一度叫ぶ。


すると――。


ほんの一瞬。


写真の表面に、海のような青い光が広がった。


そして――。


『ひまり……』


「……!」


今度は、はっきり聞こえた。


「健一くん!」


『俺は……』


声が途切れる。


「健一くん、何!?」


『……帰る』


「……!」


「本当に?」


『約束……しただろう』


「うん!」


ひまりは涙を流しながら笑った。


「待ってる!」


『……ひまり』


「何?」


『……大好きだ』


「……!」


そこで光が消えた。


「健一くん?」


返事はない。


ひまりは写真を胸に抱きしめた。


「……聞こえた」


夢じゃない。


「健一くん、ちゃんと生きてる……」



---


その頃。


戦艦大和。


激しい緊張が艦内を包んでいた。


健一は持ち場についていた。


周囲では仲間たちが慌ただしく動いている。


「如月!」


「はい!」


「準備しろ!」


「了解!」


健一は走る。


心臓が激しく鳴る。


しかし――。


恐怖よりも強いものがあった。


ひまりの顔。


笑顔。


そして、あの日の約束。


『絶対、帰ってきてください』


「……ああ」


健一は小さく呟いた。


「帰る」



---


しばらくして。


艦内に大きな衝撃が走った。


「うわっ!」


健一が壁に手をつく。


「何だ!?」


「攻撃だ!」


周囲が一気に騒がしくなる。


健一は持ち場へ急ぐ。


外では――。


海と空が激しく揺れていた。


「……」


健一は一瞬だけ目を閉じた。


「ひまり……」


そして胸元に手を当てる。


そこには、ひまりからもらった小さな手紙。


「俺は帰る」



---


一方。


令和――。


ではない。


ひまりはまだ昭和の家にいる。


縁側に座り、夜空を見上げていた。


「……健一くん」


同じ空の下。


健一も空を見ているだろうか。


「お願いだから……」


ひまりは手を合わせる。


「帰ってきて」


その瞬間――。


風が吹いた。


庭の木々が揺れる。


そして。


机の上に置いていた健一の写真が――。


また淡く光った。


「……!」


ひまりは写真を見る。


写真の中の健一。


その表情が――。


ほんの少しだけ笑っているように見えた。


「……健一くん」


ひまりは泣きながら笑った。


「絶対、待ってるから」



---


しかし。


戦艦大和では、戦闘が激しさを増していた。


爆発音。


揺れる艦体。


叫び声。


健一は必死に持ち場を守る。


「まだだ!」


「如月!」


「大丈夫です!」


だが――。


艦は次第に大きく傾き始めていた。


「……!」


健一は手すりにつかまる。


「大和……」


巨大な艦体が、海の中へ沈み始める。


その瞬間。


健一の脳裏に――。


ひまりの笑顔が浮かんだ。


初めて出会った日のこと。


写真のこと。


じゃんけんをしたこと。


海を見たこと。


二人だけの文化祭。


卒業の日。


そして――。


「また海を見よう」


「……そうだったな」


健一は笑った。


「ひまり」



---


その頃。


ひまりの部屋。


「……!」


突然。


胸元のボタンが熱くなった。


「熱い……!」


ひまりは慌てて握る。


そして――。


部屋中が、あの不思議な光に包まれ始めた。


「……また、この光?」


写真が強く輝く。


「待って!」


ひまりは写真を掴んだ。


「健一くん!」


光がどんどん強くなる。


「嫌!」


「まだ帰りたくない!」


「健一くんに会いたい!」


そして――。


ひまりの目の前に、健一の姿が現れた。


「……ひまり」


「健一くん!」


二人は手を伸ばす。


しかし――。


指先が触れる直前。


光が二人を包み込んだ。


「健一くん!」


「ひまり!」


「嫌ぁぁぁ!」


そして――。


世界が真っ白になった。



---


次に目を開けたとき。


ひまりがいた場所は――。


昭和の家ではなかった。


「……え?」


見慣れた天井。


見慣れた部屋。


机。


スマートフォン。


制服。


「……ここ……」


ひまりはゆっくり起き上がる。


そして――。


壁に掛かっているカレンダーを見る。


令和――。


「……戻ってきた?」


ひまりは震える手でスマートフォンを掴んだ。


画面には――。


現在の日付。


「……嘘」


涙が溢れる。


「帰ってきちゃった……」


ひまりは胸元を探す。


健一のボタン。


ちゃんとある。


そして――。


手の中には、一枚の古い紙。


健一からもらった手紙。


「……健一くん」


ひまりは泣き崩れた。


「約束したじゃん……」


「帰ってくるって……」


その瞬間。


スマートフォンに、知らない番号から電話がかかってきた。


「……誰?」


ひまりは震える手で画面を見る。


そして――。


その番号を見た瞬間。


心臓が止まりそうになった。


「……」


なぜか。


初めて見る番号なのに――。


懐かしい。


「……まさか」


ひまりは震える指で、通話ボタンを押した。


「……もしもし?」


すると。


電話の向こうから――。


聞き覚えのある声がした。


「……もしもし」


「……!」


ひまりの目が大きく開く。


その声は――。


80年前に恋をした、あの青年と同じ声だった。


「……ひまり?」


「……健一……くん?」


――第29話・終――

『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


――あとがき――


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』はいかがでしたでしょうか?


この物語は、令和を生きる16歳の女子高生・五十嵐ひまりが、古いアルバムの中に写っていた青年・如月健一に一目惚れするところから始まりました。


「写真の中の人に恋をする」


普通なら、絶対に叶わない恋です。


けれど、ひまりの「会いたい」という強い想いが時を越え、二人は昭和十九年で出会います。


最初は、現代っ子のひまりと、真面目で少し不器用な健一。


時代も違えば、生活も価値観も違う二人でした。


それでも、一緒に過ごす時間が増えるにつれて、少しずつ惹かれ合い、恋人になっていきました。


二人の恋を描くうえで大切にしたかったのは、戦争そのものではなく、その時代の中でも誰かを好きになり、笑い、未来を夢見た若者たちの気持ちです。


健一にも、ひまりと一緒に過ごしたい未来がありました。


ひまりにも、健一と一緒に見たい未来がありました。


「また海を見よう」


「必ず帰る」


そんな普通の約束が、戦争によってどれほど大切なものだったのか。


だからこそ、二人が離ればなれになる場面は、物語の中でも特に大切にしました。


そして最後は――。


80年前には叶わなかった二人の約束を、令和の時代でもう一度。


健一の生まれ変わりとひまりが再会することで、二人の恋にもう一度、未来を与えました。


80年前にできなかったこと。


一緒に映画を見ること。


令和の街を歩くこと。


スマートフォンを見ること。


そして、何より――。


誰にも引き裂かれることなく、好きな人の隣にいること。


今度こそ、二人にはそんな普通の幸せを手にしてほしい。


そんな願いを込めています。


もし、物語を読み終えたあとに、


「ひまりと健一、この先どうなるんだろう?」


「令和で二人はどんな恋愛をするんだろう?」


そんなふうに想像していただけたなら、とても嬉しいです。


写真の中の一人の青年に一目惚れした少女。


そして、80年という長い時間を越えて、もう一度巡り合った二人。


恋は、時代が変わっても消えない。


そんな奇跡を、二人から感じてもらえたら嬉しいです。


最後まで、ひまりと健一の恋に付き合ってくださり、本当にありがとうございました。


またどこかで、二人に会える日が来るかもしれません。


そのときはきっと――。


「健一くん、令和へようこそ!」


「……ひまり。まずはスマートフォンの使い方を教えてくれ」


「そこから!?」


そんな二人の声が聞こえてきそうです。


それでは――。


『私の彼は、80年前の軍服男子でした‼』


これにて、二人の最初の物語は幕を閉じます。


最後まで読んでくださったあなたへ。


本当に、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。